今年こそAmazonプライムやめます

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  • author satomi
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今年こそAmazonプライムやめます
Image: Gettyimages

今年もきました、Amazonプライムデー。

セールの意味じゃないですよ。会員更新日。今年は年会費120ドルで、また20ドル値上がりしました。40ドル安かった5年前に無料お試しで入ってズルズル解約し忘れてるんですが、今度こそ本当に更新やめようかと思ってます

年会費が不満というわけではないですけどね。まあ、年会費が上がるたびにみんな「プライムにそれだけの価値あるの?」って記事書きますし、自分も何年か前に書いてますけど。あのときは「送料無料」と「Amazonオリジナル映画&TV」 に目がくらんで、今思えばロクでもない記事書いてました。Amazonプライム・リワードのVISAカードまで取り寄せて、還元率5%のキャッシュバック稼ぎでせっせと買い漁っていました…。

会費の元をとろうとして買い物が61倍に

あれから5年。今はカードの支払いに追われてキャッシュバックどころじゃなく利息たまってます。全部自分の責任です。つい買っちゃうんですよ、会費の元とらなきゃって思って。PrimeパントリーBOXも送料無料最低額までまとめ買いしちゃうし、ビデオもPrimeでレンタルしちゃうし(無料でいい映画がないとアプリからいとも簡単にポチってしまえるから)、暇になるとアプリ開いて「なんか買うものないかなー」って見てしまうし。金払ってこんなディストピア買ってるのかって思うと我ながら呆然としますわ…。

プライム加入前と加入後では、お金の使い方が歴然と違うんですねここで注文履歴をダウンロードしてみたら(みんなもどうぞ。驚きますよ…)、2008年に買ったのは映画と心理学の本2冊だけで、2012年もAmazon注文は年間2個だったのに、翌年プライムに入った途端10個になって、10個ともプライム入会後の注文。その後は、なし崩し的に増えて2017年は計112個。全部プライム対象商品ですよ? 対象品が増えてるっていうのはあるにしても年2個から112個というのは想像を絶する変化です。恐るべし、有料会員制。

Prime会費が値上がりするほどAmazonで買いたくなる

もちろん、給料を全部Amazonに注ぎ込んでるほどではなくて、たいていは50ドル前後で、近所の店で買おうと思えば買って持ち帰れる細かいものばかりです。唯一の例外はTVで、これは「25ドル以上は全品送料無料」という通常割引で購入しました。ほかは全部プライム一色な日々です。でもプライムで得することって何なのかなって改めて考えてみたら本当になんにもなくて、この日本の輸入物の高級爪切りぐらいしか思い浮かばない…。年間100ドル以上も払って要らないものばかり買いに走らされてるって悟ったら、なんだか急にバカバカしく思えてしまいました。

何が一番バカみたいって、ガジェットはAmazonプライムが一番得だって何度も何度も自分に言い聞かせていることです。昔、Gizmodoがまとめ書いたときにはそういう結論だったので、ここ10年ぐらいは編集部もそういうスタンスですし、プライムは実際、特典が増えてもいます。今週も全米の高級スーパー「ホールフーズ」でプライム会員限定割引がまもなく適用開始と発表されましたよね。一部の州では2時間以内の無料配送サービスも込みだそうですよ? 割高スーパーで割引で買える方が、良心価格のスーパーで通常料金で買うより、お得かなって思ってしまうこの摩訶不思議な人間心理。いつも高過ぎて寄ることもないホールフーズですが、黄色のラベルとかプライムの水色のロゴを心の拠り所にカートをカタカタカタ~っと押してしまいそうです…。

プライムは得というより、巧妙なトリックといった方がいいかもしれないです。この5年の消費行動を振り返ってみたら、まさにプライム会員を絵に描いたような人間で、笑うしかないです。消費者情報研究所(CIRP: Consumer Intelligence Research Partners)によれば、プライム会員がAmazonで散財する金額は非会員の2倍以上で、しかもAmazonが年会費を値上げするともっと買うんだそうですよ? どうなっちゃってるんでしょうね。

プライムは2日無料配達サービスなどの特典にコストがかかるので、プログラム単体では赤字です。ただなにしろプライム会員は買う量が半端ない。それで十分採算が合うんです。最近は利ざやの大きいAmazonブランドの製品も検索上位に表示される頻度も増加傾向なので、それでさらに旨みが増してます。まあ、これについては独占禁止法的に問題だっていう声もあって、そうかなって思うけど。

オンライン本屋だと思っていたらあれよあれよと悪のメガコーポに成長

辞めたいもうひとつの理由は、学生時代に絶対買わないって思ってた悪の帝国アメリカのグローバル企業そのものだからです。Amazonは次のWalmartであり、次のViacomであり、次のVisaであり、次のGoogleであり、次のNikeでもあり、それらが全部盛りの多国籍企業。大学の寮でアメリカ経済帝国主義反対運動の旗を壁に飾ってたんですけど、これ全部、その旗にロゴが載ってた会社の名前です。

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コーポレート・アメリカの国旗
Image: Adbusters

これらの業界にもAmazonは触手を伸ばそうとしています。銀行業もやれば、製薬もやる気満々で、警察にリアルタイムの顔認証技術も売り込んでることが最近わかりました。この拡大路線を支えるのは尋常じゃない労働条件で働く倉庫作業員、もっと過酷な条件で働く配達作業員です。Echoもプライバシーの悪夢だし、なんだか最近はどこを見回してもジェフ・ベゾスの販売マシンフル稼働で、オセロの隅を取られてしまったような気さえします。

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Image: Gettyimages

こんなこと書くと「またいつものアレがはじまった」と思れるのはわかってます。何か月か前にもSeamlessやめると騒いだばかりだし、去年はNetflixやめると騒いでやめました。1回飲み切りコーヒーもやめると騒いで買うのやめました。勝手に飛びついて、怒って、勝手に不買運動やるクレーマーっぽいところがあるのは自覚しています。

ただ今回のAmazonはちょっとこれまでとは違います。Amazonは言うなれば15年以上も昔に、将来こんな化け物になるとも知らずに家に招いてしまった客人です。大学の教科書をオンラインで買ったのが最初で、ずっと地下にこもって、僕が小銭を落とすとそれを惜しむように食べて増殖していました。やがてプライムが天に昇って光が降り注ぐと、化け物は小銭だけでは飽き足らなくなり、その目がつぶれるような光に紛れて僕の銀行口座にタッチ。こうなればあとはミルクシェイクの横からコロッサスにぶっといストローを突き刺されたも同然です。預金は恐ろしい勢いで吸い上げられはじめました。

こんな化け物ではありますが、根っから悪い奴というわけではなく、時にはかわいいところも見せてくれます。捨てようと思うと芸をやって喜ばせてくれるのでやめるにもやめられません。腐れ縁とわかっているのに断ち切れない。なぜか? ほかに代わるものがないからです

気に入ったものだけにお金を使いたい

でもやめたらどうなるかと思って、使うのやめてみたら、結構快適なんですよね。近所の雑貨屋で石けん買うと、Amazonより50セント高いけど、Amazonパントリー無料配達の最低金額である40ドルまで買わなきゃ、って焦らなくていいので気が楽です。無料配達で得体のしれないドッグフード買わなくても、品ぞろえのいいペットショップのサイトで送料数ドル払えばもっといいのが買えますし、ジーンズもセレクトショップのサイトで買ったらAmazonと値段は同じで試着もできました。体にぴったりです。

僕ひとりAmazonやめたぐらいで世界が変わるわけではないけれど、買い物のお金は減りました。本当に気に入ったものだけ買えるので、単に安いから買うという消費行動に慣れた身には、かなり新鮮ですよ。ビルのロビーには相変わらず山のようにAmazonの段ボールが積み上がっていて、毎日がクリスマスです。そこに自分の箱が含まれていないんだなって思っても別になんの感慨も湧きません。ロゴも何もない配達トラックから夜遅くAmazon小包を運んでいるかわいそうな人を見ると、クリスマス気分なんか吹っ飛びますよ。ああ、今日も残業なんだなあ、福利厚生もないんだろうなあ、郵便配達の人だって健康保険ぐらい出るのに…って。

Amazonプライム更新するかどうかはまだ決めてません。でも、やめる理由の方が今は重いです。Amazonで物を買うなと言っているわけでもありません。やっぱり便利だし! ただちょっとプライムはうまい話過ぎるんですよね…。うまい話には裏があるというし、もはや裏でもなく表面化している問題もあります。要らないものをどれだけ買わされているのか数値化するのは難しそうですけど、ひとつ確かに言えるのは、Amazonはプロだということ。その進化のスピードには恐怖さえ覚えます。



Image: Gettyimages, Adbusters

Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文
(satomi)