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「技術的進歩への向き合い方」というテーマを描き出した「ジュラシック・パーク」の脚本のテクニックを解説したムービー


恐竜を現代によみがえらせたテーマパークでのスペクタクルを描く「ジュラシック・パーク」は、そのエキサイティングなアクションと大迫力の映像で高い人気を得ていますが、その中では重要なテーマを際立たせるための脚本のテクニックが駆使されています。そんな「ジュラシック・パーク」の脚本の妙について、映画における脚本の技法を分析するYouTubeチャンネル「Lessons from the Screenplay(LFTS)」が解説しています。

Jurassic Park — Using Theme to Craft Character


ジュラシック・パークはそのテーマを表現するために、2人の対照的なキャラクターを描いているとLFTSは指摘しています。


ムービーでは、物語のテーマがどのようにメインキャラクターの造形に影響を与えたのか、物語の構成やサブキャラクターがメインキャラクターたちの信念にどのように作用したか、そして、ひとつひとつの選択肢がいかにしてテーマを肥大させ、制御不能な怪物にまで成長させたかを分析しています。


原作者のマイケル・クライトンは「恐竜を再現する技術」という脚本に取り組んでいたとき、「この種の研究はとてつもなく高価」という問題に直面しました。この問題のブレイクスルーとして、「エンターテイメントへの切望を糧にすれば、誰が研究の資金を払うのかという問題が解決する」と考えたとのことです。こうして「恐竜のテーマパーク」というアイデアが基礎となりました。


ジュラシック・パークのテーマとなる命題は、「恐ろしい絶滅動物をよみがえらせることは本当によいアイデアなのか?」という点です。それはつまり、「何かをなせる技術を持っているからといって、それはその技術を行使するべきだということを意味するか?」ということ。ムービーではより広義に、「我々が『進歩』と呼ぶものはすべて実際に進歩しているだろうか?」ともう一度言い換えています。


この命題について、クライトンは簡単に回答できるとは考えていませんでした。そこで、クライトンと脚本のデヴィッド・コープは、このテーマを設計図として用い、反対の視点を持つ2人のキャラクターを生みました。


1人目は「進歩」に対し後ろ向きな視点を持つアラン・グラント博士。劇中でも「コンピュータが嫌い」と発言しています。


グラントが技術を全くもって信じていないことは、作中で繰り返し描かれています。また、彼は「未来」を象徴するものに対して不和を見せることがあり、グラントが子ども嫌いであるという点にもそれが表れています。


グラントは進歩への後ろ向きな態度という側面を明確に表しています。一方で、パーク建設の第一人者のジョン・ハモンドは、技術的進歩に対し前向きで、遺伝子工学で恐竜を復活させる危険性については考えていませんでした。


労働者のひとりがヴェロキラプトルに襲われ命を落とした時でさえ、ハモンドの唯一の関心事は、その事件がパークの開放を遅らせるかもしれないということでした。


ハモンドの性質は彼が好むキャッチフレーズ「spared no expense(出費を惜しまない)」に表れており、目的のためにはあらゆるコストを費やすことをいとわない意志を示しています。ジュラシック・パーク建設の第1段階は、グラントとハモンドの「進歩」に対する考え方を確立するところにありました。


しかし、キャラクターが異なる視点をもつというだけでは不十分です。テーマの探求のためには、キャラクターの信念を確かめる方法を見つけなければなりません。


第2幕では、グラントとハモンドを1万ボルトの電流が流れるフェンスで分断しました。これにより、それぞれが自分の信念を攻撃する独自の状況に遭遇することができます。


島の至る所に脅威が現れると、グラントはどんな技術の助けもなくやっていくことを強いられました。同時に、ハモンドの孫たちの生命をその身に背負うこととなりました。


物語を通して、グラントは自分が人生において「進歩」というものに抵抗していることを認め、変わっていこうとしているのがわかります。


その間、ハモンドは自らがよみがえらせた恐竜が自らの作り上げたパークをめちゃめちゃにし、そして最愛の孫も脅かしているという事実に直面します。ハモンドは、あらゆるコストを費やした進歩を、自身が支配できているという感覚を愛していただけだと気づかされました。


ほかにも、グラントとハモンドの信念を刺激するために、サブキャラクターを巧みに配置しています。グラントの研究助手であるエリー・サトラー博士とカオス理論を専門とする数学者イアン・マルコム博士を同行させ、グラントの性格をテストしています。


グラントとマルコムのやりとりを通して、サントラー博士が求め、マルコムが有していて、グラントに欠けているいくつかの性質に気づくことができます。これは、グラントが進化する方法を見つけ出さなければ、サトラー博士を失う可能性があることを示唆しています。


また、マルコムはハモンドの性質をテストする役割も担います。進歩に前向きなハモンドは「できるならばするべきだ」という強迫観念を持っていますが、マルコムはそれに対し「すべきかどうか考えること」の重要性を説きます。


マルコムがケガを負った時、今度はサトラー博士がハモンドの信念のウィークポイントを指摘します。依然として「もう一度制御できれば」と意欲をみせるハモンドに対し、サトラー博士は「制御できたなど幻想だ、あなたはそもそもコントロールなんてできていない」と語調を荒らげます。「いま重要なのは、私たちが愛する人たちだけだ」と、サトラー博士はハモンドを諭します。


このやり取りの最後に、ハモンドのキャッチフレーズを想起させます。ハモンドの「全てを費やした進歩」という見通しは災害に際して失敗に終わりました。


重要なのは、グラントとハモンドの信念を刺激しテーマに焦点を当てるために、サブキャラクターたちが存在するということです。物語を通して刺激され続け、彼らは進化することを学びました。映画のクライマックスですべてのキャラクターが救助されたのがコンピューター・テクノロジーのおかげであることを、グラントは無視できません。


またハモンドは、 進歩のコストは時に高すぎるものとなることを認識しています。彼らが2人とも信念を変えたということは、テーマの中核となる命題への回答は簡潔なものだと推測されます。


クライトンは以下のように述べています。「我々は、技術の発展をとにかく素晴らしいものとして受け取る社会に住んでいるように感じます。私たち全員がコンピュータを持っていることは、素晴らしいことではないのでしょうか? 私の回答は『イエスであり、ノーでもある』です」


LFTSは、ジュラシックパークがテーマに準じて脚本をデザインする方法の素晴らしい例だと高く評価しています。物語を通して、無責任な進歩の危険性を警告しながら、技術が提供できる驚異を称賛しているのです。

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in 動画,   映画, Posted by log1e_dh

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