Webの生みの親バーナーズ＝リーは中央集権化しているWebの現状を憂いている

現在のインターネットを形作っているWorld Wide Webを作ったのがティム・バーナーズ＝リーですが、そのバーナーズ＝リーは現在の中央集権的なWebの在り方に心配していると述べています。

“I Was Devastated”: Tim Berners-Lee, the Man Who Created the World Wide Web, Has Some Regrets | Vanity Fair
https://www.vanityfair.com/news/2018/07/the-man-who-created-the-world-wide-web-has-some-regrets

30年前、CERNの研究員だったティム・バーナーズ＝リーは科学者たちがデータを共有するのを助けるためにWebのプラットフォームを整えました。当時そのようなデータ共有のためのプラットフォームはいくつかありましたが、バーナーズ＝リーはWebのソースコードを無料でオープンにしたため、Webが爆発的に普及しました。コンピューターを持ってインターネットに接続できる人は誰でもWebにアクセスできるようになり、デベロッパーたちが次々とブラウザやブログ、電子商取引サイトなどを立ち上げていきました。Webは誰の許可も必要としない、本当にオープンで自由なものでした。

なお、インターネットがどのように発明され、どのようにWebができるに至ったのかを知るには以下の記事がおすすめです。

インターネットは誰が、何の目的で発明したのか？その答えに迫るムービー「Who Invented the Internet? And Why?」 - GIGAZINE

しかし今では、FacebookやGoogle、Amazonなどの企業が誰にいいねしたか、どんなニュースを読んだか、何を購入したかなどの情報を始め、インターネット上で起きることのほとんど全てを独占しています。バーナーズ＝リーはこのように中央集権化してしまったWebを再分散させることを計画しています。バーナーズ＝リーは以前にも、イギリスの大手紙The Guardian上で以下のような意見を表明しています。

ウェブの生みの親ティム・バーナーズ＝リーが語る「ウェブを残すために変更すべき3つのこと」 - GIGAZINE

バーナーズ＝リーが取り組んでいるSolidというプロジェクトは人々が自分の個人情報を自分で管理できるようにしようというものです。ほかにも、ドイツの若いコーダーがMastodonと呼ばれる分散バージョンのTwitterを作ったり、フランスでは分散バージョンのYouTubeとしてPeertubeが作られたりといった動きがあります。Mastodonのインスタンス同士をつなげる機能である連合のプロトコルであるActivityPubを作成したエイミー・ガイは「人々の日々の暮らしが企業のコントロール下に置かれていることに憤慨しています。不意に実現してしまっている監視社会が嫌いです」とコメントしています。

今のところ、Facebookを創業したマーク・ザッカーバーグが「ユーザーのプライバシー権を守ることに注力している」と発言したり、GoogleがGmailに新しいプライバシー関連の機能を付けたりしていますが、この傾向が続くとは限りません。企業のロビイストたちが立法に携わる人々を動かすので、個人の権利はないがしろにされてしまいます。2017年12月に通信会社のロビイストがインターネット中立性ルールをなくすように働きかけたり、2018年1月には国家安全保障局が大量のオンライン追跡プログラムを続行することを許可したりしています。

バーナーズ＝リーは「普通の人は何をすれば良いでしょうか？」という質問に対して、「プログラミングのようなスキルを持つ必要はありませんが、コントロールされるのはもううんざりだと思う心を持つ必要があります」と答えています。