サイエンス

なぜ子どもは「うそ」をつくのか?

by Elvin

子どもの成長は親にとって嬉しいものである一方、成長するにつれて親や周囲の人々に対して「うそ」をつくようになります。一般的に2歳~4歳のころから子どもはうそをつき始めるため、親の中には「こんなに小さいときからうそをついて、将来どうなってしまうのか」と不安になる人もいます。そんな多くの親にとって気になる「なぜ子どもはうそをつくのか?」という疑問について、ニュースサイトのThe Conversationが解説しています。

Why do kids lie, and is it normal?
https://theconversation.com/why-do-kids-lie-and-is-it-normal-98948

子どもがうそをついたことで不安になる親も少なくありませんが、発達学的な観点から見れば、幼い子どもがうそをつくことは全く問題ではないとのこと。うそをつくことは、「他の人は自分と違う考えや欲望を持っているのかもしれない」という心の理論に子どもが気づいた最初のサインです。

「パパは私に『アイスクリームを食べていいよ』って言った!」と子どもがうそをつくのは、他の人の心を使用して、間違った認識を与えようとする行動です。社会的に見ればうそをつくことは望ましくないかもしれませんが、他人がどのように考え、行動し、感じているのかを知るのは非常に重要な社会的スキルです。他の人が苦しんでいるのを見て同情したり、助けたりするのはこの社会的スキルと関連しています。

by Greg Walters

また、子どもがつくうその内容は年齢によって違いがあることも知られています。最初にうそをつき始める子どもは、多くが実質的な効果をもたらすうそではなく、ユーモアにあふれたうそをつくとのこと。たとえば、まだ口の中にケーキがあるのに「まだケーキを食べてない!」と言ってみたり、「犬が壁に落書きした!」と文句を言ったりするのです。子どもたちは本当のことではないうそをつくことはできるものの、実際に他の人を欺くほどの技術は持っていません。

8歳まではうそをついても、うまく隠し通すことができない場合が多いそうです。3歳~7歳を対象にした実験では、「後ろにあるおもちゃを見ないでね」と子どもに言い聞かせておいても、ほぼ全ての子どもがこっそりと後ろにあるバーニーのおもちゃをのぞき見し、後で「おもちゃなんか見てないよ」とうそをつきました。ところが、3歳~5歳の子どもはうそなどついていないような顔をするのが非常に上手だったものの、話の中でうっかり「バーニー」という名前を出してしまったとのこと。一方、6歳と7歳の子どもについては、半分ほどがバーニーの名前を出さずに知らない振りをし続けることができました。


年齢が上がるにつれて、子どもたちは次第にうそをつき通すのがうまくなり、さまざまなパターンのうそをつけるようになっていきます。しかし、幼い子どもは自分の利益になるうそを次々につくものの、年を重ねるに従ってうそをつくことに対して罪悪感を覚える度合いも増えていくとのこと。

10代になると、相手を傷つけない他愛のないうそと他者を傷つけるようなうそに区別を付けるようになり、他愛のないうそに対してはそれほど罪悪感を覚えません。また、子どもたち同士でうそをつくというよりも、親や教師といった相手に対して、自分のことについてうそを交えて話すようになります。2004年に高校生や大学生の若者を対象にして行われた調査では、実に82%の若者が過去1年間にお金・アルコール・薬物・友人・パーティー・セックスといった事柄についてうそをついたと報告されています。友人関係については67%、アルコールや薬物の使用については65%、そしてセックスについては32%がうそをついたことがあると述べました。

by Lluís Torrent Bescós

世間で考えられているよりも、子どものうそはそれほど大きな問題ではありません。一方で、大人も日常生活でうそをついているという事実は見過ごされがち。2009年に行われた研究(PDF)では、アメリカ人の40%が人を守るためのうそも含めて「24時間以内にうそをついた」と報告されています。

うそが問題になるのは他の適応障害などと関連している場合で、たとえば反抗挑戦性障害(ODD)の子どもは慢性的にうそをついて人を欺く傾向にあることがわかっています。もちろん、全てのうそがODDのような適応障害と関連しているというわけではなく、ODDの場合も「ルールを守ったり暴力を我慢したりすることができない」「自分の行動に責任を負わない」などの症状をもとに、医師の診断が下されて初めてうそと適応障害の関連が証明されます。

また、子どもが恥や恐怖といった感情から、精神的または健康的な問題を隠すためにうそをつくというケースもあります。重度の不安を抱えている子どもは、学校やパーティーといったつらい環境から逃げるため、慢性的にうそをつくことがあるとのこと。こういった子どもたちは「精神病」という診断を下されること自体を恐れている場合もあるそうです。

by Alexandra Vishleva

子どもがうそをつくこと自体にそれほど問題はありませんが、親や教師が子どもがあまりうそをつかないように努力できることがあります。まず1つ目が、「過度な罰を子どもに与えない」ということ。西アフリカで行われた研究では、生徒への罰として体罰を行う学校と体罰を行わない学校を比較し、体罰を行う学校の生徒はうそをつきやすい傾向が見られました。また、ルールを押しつけがちな親のもとでは、子どもがうそをつきやすくなるとも報告されています

2つ目に、「子どもに対してうそをつかれた人がどう感じるのか、倫理的にどう問題があるのか」といった指導を行うこと。うそをつかれた人がどんな風に傷つき、うそがどのように他人に対して悪影響を与え、自分自身がうそをつかれたらどう感じるのかといった事柄を考えさせることで、子どもはうそが悪いことだと認識し、うそをつきにくくなります。同時に、子どもが本当のことを言ったらほめてあげることも大切です。

3つ目が、「それはうそだよね」としっかり指摘すること。子どものうちは空想と現実の区別が曖昧であり、子ども自身がうそを本当のことだと信じ込んでいるパターンもあります。子どもに人をだまそうという悪意があるかないかに関わらず、子どもがうそをついてしまうケースは存在するため、真偽をしっかりと検証した上で子どもに指摘してあげることが重要になるとのこと。

by Carsten ten Brink

子どもがうそをつくのは発達上問題がある行動ではなく、むしろ正常に自分や他人に対する認識を深めているサインであり、うそは社会的なスキルをみがく一つの方法にすぎません。慢性的にうそをつき続けることにより、日常生活に支障が来されるようであれば医師に相談することも検討するべきですが、そうでない場合は優しく見守ってあげることが大切であるとThe Conversationは記しています。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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