かなり劇的なビフォーアフターです。
庭に面した日本家屋の縁側って風情があってイイですよね。日向ぼっこしながら読書や居眠り、おやつを食べたり至福のひとときを過ごすことができます。
なら、普段日が当たらない部屋も縁側になってしまったらどうでしょう? 縁側が居間の中へと大回転し、代わりに畳の居間が縁側になってしまうような家なんてどうでしょうか? カラクリ仕掛けの忍者屋敷で楽しそうです。
もともとは祖父母の自宅。直径5mの回転仕掛け
これはバウハウス大学大学院に在学中の芸術家、持田敦子さんによる作品『T家の転回』。このお宅は茨城県水戸市にあり、もとは作者の祖父母が新婚時から暮らし、母が生まれた家なのだとか。これは10年以上放置されていた木造家屋を使用した大掛かりな“作品”なのです。
間取り図は以下のようになっています。L字型の家の内側を直径5mマルっとくり抜いて、グルっと回転するようになっているのです。
持田さんはこのプロジェクトのため、1年以上に渡る祖母との共同生活を通して家の歴史をリサーチ。「祖母の出産にあわせて増築を繰り返したこの家は、生命体として成長してくような有機的プロセスを持っており、現在は老いて崩れかかっている」。そんな観点から、家をひとつの肉体として捉えることにしたのです。
「縁を切る」という建築用語に由来
また家というのは居住空間だけではなく、自分というプライベートを、公共の場所というパブリックから隔離する機能も持つと捉えた持田さん。
面白いのは、建築用語で木造建築物の部材と部材を切り離すことを、「縁を切る」というのだそうです。自宅と縁を切り、本来ならプライベートな空間に、家族以外の人間(パブリック)が入り込む。そして他人の手で家を回転させる構図が生まれ、この家に新たな機能と空間を作り出すのです。
この作品には他者=パブリックが重要ってことで、『T家の転回』は期間限定で公開されています。現在、直近での予定はありませんが、随時Facebookの公式ページでチェックしてみてください。
パっと見は、斬新な建築デザインのコンセプトなのかと思いきや? 実はとある一家の歴史を、何も知らない赤の他人に委ねてしまう、奥深い作品だったんですね。
Atsuko Mochida, THE REVOLVING HOUSE OF T. (2017)
Construction: Builder Inc.
Video: Kousuke Shige (ogopogo film)
Photo: Ryuichi Taniura
Source: Mochida Atsuko 持田敦子 via designboom magazine
(岡本玄介)