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ビジネスの予想では「たぶん」などのあいまいな言葉を使うべきではない


何かを予想する場合に「たぶん」「おそらく」「たいてい」「時には」など、あいまいなフレーズはとても便利ですが、用語が指し示す「可能性」については人それぞれ解釈の余地があります。「ビジネスでは解釈次第で意味が異なる用語は使うべきではない」と考えるデータアナリストが、あいまいな言葉の利用を自制することでのみ、予測の精度を高められるものだと説いています。

If You Say Something Is “Likely,” How Likely Do People Think It Is?
https://hbr.org/2018/07/if-you-say-something-is-likely-how-likely-do-people-think-it-is

1951年3月にCIAの評価部門は、ソ連によるユーゴスラビア攻撃の可能性について「serious possibility(深刻な可能性を持つ)」と評価する文書を発表しました。「serious possibility」が何を意味するのか疑問に思ったイエール大学の歴史家シャーマン・ケント博士は、評価部門のメンバーに可能性を具体的な数字で確認しました。ケント博士自身は「65%」と考えていた「serious possibility」について、なんと文書を作成した評価部門のメンバーからは「20%」から「80%」までの幅広い回答を得たそうです。世界情勢に大きな影響を与えかねない重大事が起こる可能性について、人によって解釈が大きく異なる「あいまいな言葉」で表現することは大きな問題があるとケント博士は考えました。

ケント博士が懸念を明らかにしたころから70年近く経った今でも、ビジネスや投資、政治の世界では可能性を表すのに解釈の余地を残す「あいまいな言葉」が好んで用いられています。その原因を、ペンシルバニア大学のフィル・テトロック教授は、あいまいな言葉を使うことで、予想が外れた場合に責任を回避できるからだと考えています。


しかし、コミュニケーションで齟齬が生じるのを防ぐためには、これらの「あいまいな言葉」を使うのを避けるのが望ましいものです。そこで、データサイエンティストのアンドリュー・マーブシン氏とコロンビアビジネススクールのマイケル・J・マーブシン教授が、ビジネスにおいて「あいまいな言葉」を排除することで自らの予測を磨くための3つの重要な心がけを示しています。

・1:言葉ではなく数値で表現する
マーブシン教授らは、コミュニケーションに混乱を招きかねないこの種の「あいまいな言葉」が、確率としてどの程度だと受け止められやすいのかを明らかにするために、あいまいな言葉が示すと感じる確率(数値)に関するアンケート調査を行いました。1700人の一般市民へのアンケート調査の結果から得られたのが以下のグラフ。それぞれの単語が示す確率には個人で感じ方が異なるため「幅」が見られますが、おおよその目安にはなります。


調査の結果、ほとんどの人が可能性が極めて高いと感じる「Always」や、まったく可能性がないと感じる「Never」など比較的、解釈の幅が狭い単語がある一方で、「Usually」「Likely」「Probably」「Often」などのように、人によって捉え方に大きな違いがあり得る単語があることがわかりました。

そこで、ビジネスでは人によって解釈が異なる言葉による表現をやめて、一意に定まる「数字(確率)」による表現を心がけるべきだとのこと。マーブシン教授によると、「あいまいな言葉」では男女の違いや、英語が母語かどうかの違いでも解釈の違いが現れるものだとのこと。相互理解が不可欠な重要事項では、頻度を表現するあいまいな言葉ではなく、確率と向き合うべきだそうです。

・2:主観的な確率を固定するアプローチ
ある実験では、〇か×かで答えられる50個の問題を出したところ、参加者の正解率の平均は60%だったのに対して、「正しく答えられている」と自信をもって答えられた回答率の平均は70%だったとのこと。ここから、人は自分の判断に対して自信を持ちすぎる傾向にあることがわかります。

このような特性があることを踏まえると、自分が起こり得ると考える確率を数値化することは難しいことがわかります。そこで、マーブシン教授は、確率という数値を出すときに、具体的な「賭け」をイメージして、その結果と比較することを推奨しています。


例えば、競合他社が自社の販売に影響を与える可能性のある新製品を発売する予定がある場合を考えます。ここで、ライバルの新製品が成功する可能性をはじき出すには、まずは「ライバルの製品が失敗すれば100万ドル(約1億円)のボーナスを受け取る。もしも、本当に新製品が成功すれば一銭も得られない」という状況をイメージするのだとのこと。

その上で、「25個の緑の大理石と75個の青の大理石を思い描き、目を閉じて1つ選ぶ。もしも石が緑ならば100万ドルをゲットできるが、石が青ならば何も得られない」というケースについてもイメージします。この2つの「賭け」に参加するなら、どちらを選ぶかを考えればよいとのこと。もしも大理石の賭けの方が良いと感じるならば、ライバル社が新製品を失敗させる可能性は25%未満だというわけです。


もちろん、状況に応じて大理石の色の割合を変更すればOK。何か客観的なベンチマークを用いることで、主観的な確率を見定めるのに役立つそうです。

・3:予測を改善するためのフィードバックを得る
ビジネスを含むさまざまな場面で、正確に未来を予測できることは重要です。良い予想家になることは大切で、予測の精度を高めるには訓練を積む必要があるものですが、単に数多くの予測をするだけでは足りないとのこと。予想と現実を比較し続けることで、予測精度を高めるトレーニングが必要だとマーブシン教授は考えています。

その場合でも、例えば「Facebookは長い期間にわたってソーシャルネットワークの支配的地位にとどまるだろう」というような主観的な解釈の余地を残す予想ではなく、「Facebookは今から1年後に月間ユーザーで25億人を持ち続ける確率は95%である」というような、正確に定量化できる方法で表現すべきだとのこと。また、このトレーニングを行うために「Good Judgment Open」や「Metaculus」などのオンラインサービスを利用するのが役に立つそうです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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