日本に子ども向けご長寿番組があるように、アメリカにも『Mister Rogers’ Neighborhood』という有名番組がありました。

今年で、放送50周年になるそうで、ドキュメンタリー映画『Won’t You Be My Neighbor?』が公開されたのですが、子どもに正しく伝える方法はとても参考になります。

子どもに正しく物事を伝える方法を熟知していた

それ見ると、子どもたちのアイドルだったフレッド・ロジャース(Fred Rogers)氏が、この番組の細部にどれほど気を配っていたかがわかります。

たとえば、ロジャース氏は手紙を送ってくれたファンの全員に心をこめた返事を書いていました(毎日50〜100通の手紙を受け取っていた)。

当然ながらロジャース氏は、子どもたちにかける言葉にも特別な注意を払っていました。『The Good Neighbor:The Life and Work of Fred Rogers』の著者であるMaxwell King氏が、米メディア「The Atlantic」で、1977年に2人の放送作家が面白半分で作ったガイドについて書いていました。

Arthur Greenwald氏とBarry Head氏の手によるこのガイド『Let’s Talk About Freddish』は、「ロジャースが満足するように、すべての言葉を正しいものにする厳格な手順」をおもしろおかしく解説したものです。

このガイドによると、日常会話をロジャース氏が満足するものにするために、9段階の手順を経る必要があったということです。子どもに何を丁寧に伝えたいとき役に立つものなので、紹介したいと思います。

子どもに理解を促す9つのステップ

1. まず、表現したい考えを、できるだけ明確に、就学前の子どもが理解できる言葉で述べる。例:通りで遊ぶと危ないよ。

2. 肯定的な表現に言い換える。例:安全な場所で遊ぶほうがいいね。

3. 就学前の子どもはまだ微妙な違いを理解できないので、子どもが信頼している権威者につなげてあげる必要がある。例:お父さんお母さんに、どこで遊ぶのが安全か聞いてごらん。

3. 規範的、命令的、教訓的だとみなされる要素をすべて排除したフレーズに言い換える。この場合、「聞いてごらん」を排除する。するとこうなる:お父さんお母さんがどこで遊ぶのが安全か教えてくれるよ。

4. 断定的な言葉を言い換える。この場合、「くれるよ」の部分。:お父さんお母さんがどこが安全か教えてくれるかもしれないよ。

5. すべての子どもに当てはまらない要素は排除して、フレーズを言い換える。たとえば、自分の両親を知らない子どももいる。:君の大好きな大人の人が、どこで遊ぶのが安全かを教えてくれるかもしれないよ。

6. 就学前の子どもたちにとって、そのアドバイスを聞く動機づけになるような、シンプルなフレーズを付け加える。:君の大好きな大人の人が、どこで遊ぶのが安全かを教えてくれるかもしれないよ。聞いてみるのは良いことだよ。

7. 新しいフレーズを追加したら、ここまでの手順を再度適用する。「良い」は価値判断を押し付ける言葉なので言い換える:君の大好きな大人の人が、どこで遊ぶのが安全かを教えてくれるかもしれないよ。聞いてみるのは大切なことだね。

9. 最後の言い換え。就学前の子どもが理解できる言い方で、子どもの発達段階に関連づけたフレーズを付け加える。君の大好きな大人の人が、どこで遊ぶのが安全かを教えてくれるかもしれないよ。聞いてみるのは大切なことだね。聞くことは成長するために大事なことでもあるんだよ。

この手順で私がとくにいいと思うところは、子どもとは敬意を払うべき存在である、という基本的な前提に立っていることです。「すべての子どもが親を知っているわけではない」という理由で言い換えをするのは、ポリティカル・コレクトのためではありません。

単純に、1人でも多くの子どもにメッセージを届けるためです。また、良い、悪いという対立軸から離れたフレーズに言い換えることで、子どものクリティカル・シンキングのスキルを育てることができます。

また、「なぜ」そうするのかを強調することは、子どもたちのインナーボイス(内なる声)を豊かにすることにつながります。

何十年も前に、Mr.ロジャーズは正しい言葉とは何かを考え、実践していました。それを今でも聞くことができるのはうれしいことです。


Image: Billion Photos/Shutterstock.com

Source: Focus Feature, Indie Bound

Michelle Woo- Lifehacker US[原文