約400億円分の規格外マリファナは、こうして廃棄処分される

2018年1月から嗜好用の大麻(マリファナ)が合法化されたカリフォルニア州。半年の移行期間を経て、7月1日から規格外製品の販売が禁止された。試算によると、なんと400億円分に相当する数十トン規模が廃棄処分になるという。こんなに大量のマリファナを、いったいどうやって処分するのか?
約400億円分の規格外マリファナは、こうして廃棄処分される
PHOTO: RICK THOMPSON/GETTY IMAGES

これを「2018年 マリファナの黙示録」とでも呼ぼうか。今年1月1日から嗜好用の大麻(マリファナ)が合法となったカリフォルニア州では、闇取引が続いている[日本語版記事]一方で(全米を流通する大麻の75パーセントはおそらくカリフォルニア州の北部産だろう)、生産者と流通業者は合法なビジネスへと切り換えつつある。そして彼らは、同州が定める厳格な検査基準とパッケージの規格を満たそうと努めているのだ。

その結果ついに、「最後の審判」が下されるときが7月初めに訪れた。

カリフォルニア州は大麻業者が変化に対応できるように、18年の前半6カ月だけは新規格に満たない大麻製品の販売を許可していた。つまり、7月1日時点で店舗に売れ残っていた規格に合わない濃縮大麻や食用大麻、乾燥大麻は、すべて廃棄せざるを得ないのだ。

ある試算によれば、合わせて3億5,000万ドル(およそ389億円)分の大麻製品が無駄になる可能性があるという。では、州全体で重さが数万ポンド(数十トン)にもなりうる規格外の大麻を、いったいどうやって廃棄するのだろうか。

ごみ出しの日は「見もの」になる

実は大麻の処分は、剪定した庭木を処分する場合とさほど違いはない。

規格外の大麻製品を処分する責任は州ではなく、大麻販売店や薬局などの販売業者にある。州は処分するために収集車を手配しない。よってこれらの販売業者は、規格外のマリファナをただちに棚から片付けなくてはならない。

ごみ出しの日は「なかなかの見もの」になるだろう。サンフランシスコにある販売店「Apothecarium」の広報担当であるエリオット・ドブリスは、「規格外の乾燥大麻やプリロール(タバコ状に巻いたもの)は堆肥になります」と語る。

つまり「使用不可」として生ごみのなかに放り込まれるのだ。こうしたごみ箱に一般市民はアクセスできない。

ペン型電子タバコ用のオイルを廃棄する際には、もうひと手間かかる。「規格を満たさないカートリッジは、ハンマーで叩いて使用不可にしたあとで、埋め立て用のごみとして出します」とドブリスは言う。

「廃棄処理する様子はすべて、動画で撮影する必要があるのです」とドブリスは続ける。「もし疑問があれば、州は動画を確認できますから」

厄介な問題を抱えているのは販売業者だけでなく、供給業者も同じだ。合法嗜好用の大麻製品をパッケージにして流通させるサプライチェーンが、まさに生まれつつある。例えば「Flow Kana」は、カリフォルニア州北部の農家から大麻を仕入れて、新たな法律に準じて検査を実施している大麻ブランドだ。

同社のスタッフは期限が迫っているのを見据えて、可能な限りの準備をしてきた。スタッフのケイト・パワーズは「まだ加工作業が終わっていない製品がありますが、これは問題ありません」と話す。まだ加工していない大麻は、販売に至るまで厳格な安全検査を行う。

「そのため、当社の在庫の大半は問題ありません。廃棄される可能性があるのは、以前の規格の下で加工・包装されたものだけです」

数トン規模以上の大麻が廃棄処分に

カリフォルニア州全域の販売店は、今年7月1日までの数週間に慌てて大規模なセールを実施し、製品を売り尽くそうとした。とはいえ、売り尽くそうにも限界がある。

カリフォルニア州大麻産業協会(California Cannabis Industry Association)の広報担当者であるジョシュ・ドレイトンは、「サクラメント市ではおそらく最大で8,000ポンド(約3.6トン)分もの大麻を廃棄処分しなければならないでしょう」と語る。世界最大の大麻消費者の基盤を擁するロサンゼルス地域では、廃棄量は数万ポンドに達するだろう。

どれほどの量の大麻が無駄になるのか、実際のところ正確にはわからない。販売許可を取得する手続きが終わっていない販売店もある。

法の網の目をすり抜けようと考えているわけでなくても、嗜好用大麻の合法化プロセスがいまだに進行中であるため、正確な数字がつかみにくいのだ。ただし、こうした事態はサプライチェーンが発達し、生産から販売まで厳格に管理されるようになれば変わるだろう。

大麻が無駄になるのは、業界の取り組みが不十分なせいではない。ドレイトンは「(業界は)さまざまな面において、作業を同時進行せざるを得ない状況にあったのです」と語る。「大麻使用が合法化されている自治体でビジネスプランを構築するには、スタッフの採用や人件費について新たなコンプライアンスを順守するべく、学んでいく必要があったのです」

プロセスに伴う「痛み」

カリフォルニア州の住民は「大麻を合法化したい」と思い、「住民投票事項64(Proposition 64)」が住民投票で承認された。しかし、おそらく住民は大麻使用が合法化されるプロセスで今回のような問題、つまり「マリファナの黙示録」が待ち受けているのは予想していなかっただろう。

「確かに、プロセスのなかで成長痛のようなものに対処しなくてはならないことを、われわれは思い出すべきです」とドレイトンは言う。「しかし、最終的には公共の安全と健康を優先したいと、住民投票事項64が承認されたのです」

さもなければ、農薬などで汚染された違法の大麻が人間のみならず、野生生物までも脅かしてしまう[日本語版記事]のだ。

カリフォルニア州はこの問題を乗り切るだろう。規格に準じた製品が店先に並ぶまでしばらくは、販売店の在庫が減るかもしれない。しかし、業界が変化に適応するにつれ、市場は安定していくだろう。

同州では近いうちに、健康的な堆肥がさらに生成されるようになる。まさに、カリフォルニアにふさわしいことだ。


RELATED ARTICLES

TEXT BY MATT SIMON

TRANSLATION BY YASUKO ENDO/GALILEO