自転車のLEDライトをフロントフォークに内蔵したら、ミニマルで美しく快適になった

サンフランシスコの自転車メーカーが、フロントフォークにLEDのストリップライトを埋め込んだモデルを発表した。普段はその存在に気づかないようなミニマルかつスタイリッシュなデザインだが、夜に点灯させると計100個のLEDが美しく光り、路面を円状に照らしながら存在感をアピールする。それでは実用性は? 『WIRED』US版によるレヴュー。
自転車のLEDライトをフロントフォークに内蔵したら、ミニマルで美しく快適になった
フロントフォークに埋め込まれた2本のLEDストリップライトが特徴的な、Mission Bicycleの新しいデザイン。夜道での視認性を高めてくれる。PHOTOGRAPH BY BETH HOLZER

日没からかなり時間がたってから、自転車のロックを外して乗ろうとしたときにライトが使えないことに気付く──。そんな経験は誰にもあるはずだ。充電するのを忘れて、バッテリーを使い切ってしまったのかもしれない。

あるいは夏で「日暮れまで長いから」と油断して、そもそも外付けのライトを持ってくるのを忘れたのかもしれない。あるいは、ライトを盗まれてしまったのかもしれない(この場合、自転車ごと盗まれなかっただけラッキーと言うべきだろう)。

サンフランシスコを拠点とするMission Bicycleは、どんな時でも持ち主を暗闇に紛れさせない新しい自転車のデザインを発表した。フレームのフォーク部分にLEDが埋め込まれ、ボタンをタップすると自転車の前部が光るようになっているのだ。

デザインに溶け込むライト

デザインはシンプルで美しい。それぞれのフォークの内側に、LEDのストリップライトが1本ずつ縦方向に埋め込まれている。1本のストリップには、50個のLEDが並んでいる。つまり合計100個のライトがあるのだ。点灯・消灯するには、ハンドルのトップキャップにあるボタンを押す。

ボタンを長押しすると光が暗くなり、バッテリーを長持ちさせることができる。シートポストにも5つの赤色LEDが埋め込まれている。すべての配線は、フレーム内を通ってヘッドパーツからその下のフォークに向かい、再び上に上がってシートポストまでつながっている。

PHOTOGRAPH BY BETH HOLZER

すべてのライトは、ヘッドパーツ内部に設置された充電式バッテリーを使用する。バッテリーを取り出すには、トップキャップを緩めて取り外す。するとバッテリーが手前に押し出されて、取り出せるようになる。充電はいつでも都合のよいときに、USBケーブルを使って行う。

自転車の世界では、内蔵ライト自体は珍しいものではない。フレームにヘッドライトが、シートポストにテールライトが組み込まれた通勤用自転車は、いくらでもある。

Mission Bicycleのデザインが優れているのは、ライトがデザインに溶け込んでいる安心感だ。路上に停められた自転車の横を通り過ぎる人は、わざわざ探さなければLEDや点灯スイッチに気付くことはないだろう。これらは完全に隠され、すっきりしたミニマルな外観になっている。

さらに重要なのは、もちろん充電を忘れなければだが「いつでもライトがある」という点だ。

PHOTOGRAPH BY BETH HOLZER

点灯させて走らせると非常に人目につく

Mission Bicycleから自転車を貸してもらい、実際に数週間乗ってみた。同社は、すべてがカスタマイズされた街乗り用自転車を販売している。価格は1,100ドル(約12万円)からだ。ドライヴトレインや各種パーツ、フレームの色など、豊富な選択肢が用意されている。すべてのモデルで、内蔵ライトはオプションとして選択できる。借りた自転車はシングルスピードで、運転しやすいシンプルなモデルだった。

LEDライトを点灯すると、前輪を中心に路面が直径4フィート(約1.2m)くらいの大きな円状に照らし出される。前向きのヘッドライトとは違うかたちで人目に付き、LEDは横からも見えるので、自転車専用レーンを走る最も目立つ存在になる。

ライトの光自体は青味がかったクールな白だ。最初に見たときはややきつい印象を受けたが、道路を照らし出す街灯のナトリウムランプの黄色い光に沿って走るときには、よく目立つはずだ。

バッテリーは、自転車を借りていた期間中は十分に持ちこたえた。毎日の通勤や通学で夜間に走る時間が1時間以内であれば、3~4週間に一度の充電で済むだろう。

バッテリーは「ポケットへ」

注意点が2つある。ひとつ目は、このライトによって自転車に乗っている人は路上にいるほかの人々からよく見えるようになるが、ライトは前方にある道路を十分に照らすことはできないのだ。

Mission Bicycleの説明によると、都市では一般に道路の照明がかなり明るい。従って安全のためには、自分の進む先を見るより人に気が付いてもらうほうが、優先度が高くなるという。確かにそうかもしれないが、道路の照明が十分ではない都市に住んでいる人は、ヘッドランプが必要だろう。

ふたつ目は、バッテリーを取り出すときに緩めるトップキャップは、十分に安全とはいえない。ゴム製の小さな点灯スイッチを見つけられるだけの知識がある泥棒なら、バッテリーやトップキャップをいとも簡単に盗めるだろう。

自転車を貸してくれたショップのスタッフは、「この問題を解決すべく取り組んでいる」ところだと話していた。当面は、バーの店先に停めて鍵をかけた自転車からバッテリーを取り出し、ポケットに入れておくほうがいいだろう。それくらい、たいしたことではない。


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TEXT BY MICHAEL CALORE

TRANSLATION BY MAYUMI HIRAI/GALILEO