これでさよならじゃ、ないよね…? HTC U12+レビュー

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これでさよならじゃ、ないよね…? HTC U12+レビュー
Image: Sam Rutherford/Gizmodo US

握っても握っても、モーメンタムは指の間をすり抜けていく…

Googleに特許とエンジニア2,000人を11億ドルで売り、年間売上最低を記録し、先月は前年比68%売上が減り、7月には全従業員の22%にあたる1,500人のレイオフを発表したHTC。ひと頃の隆盛を思うと、信じられない思いがします。あと何が残ってるんだ…と、成り行きを茫然と見守っているのは編集部だけじゃないでしょう。

人気のVive VR事業部は分社化でキープしましたが、本家HTCに残っている主力はもはやブロックチェーン対応スマホのExodus(なんというネーミング)とU12+ぐらいです。このU12+が浮沈のカギを握るフラグシップなのだとすれば、未来は決して明るくないと言わざるを得ません。

U12+は、ギークなデザインで昨年好評を博した、握れるU11+の後継モデルです。側面の圧力センサで操作できる範囲を拡大すればきっと売れるだろうと、そう期待はしていたんですが、あんまりリリース後の評価は芳しくないようです。


HTC U12+

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Image: Sam Rutherford/Gizmodo US

これは何?:HTCの最新(最後?)スマートフォン

価格:$800 ※日本は95,000円(税別)

好きなところ:半透明な背面、最高のスピーカー、手堅いカメラ

好きじゃないところ:バッテリーの減りが早い、 タッチと握りの感度が悪い

強く握らないと反応しない

操作できる機能が拡大してよくなった面もいっぱいあります。前はGoogleアシスタントぐらいでしたが、今度は側面ダブルタップで前の画面に戻れたり、長押しならぬ長握りでアプリも起動できます。画面が勝手に暗くなったり、縦横が切り替わるのも、握りで解除できます。

アプリごとに操作も割り付けられるので、たとえばカメラアプリなら、握ってシャッター押したり、長握りでカメラを切り替えたりも可能です。握り操作の組み合わせはまさにエンドレス。握り操作なしでは生きられない人びとにとっては夢の端末です。

ただいかんせん、U12+は圧力センサの感度がちょっとね…。感度MAXにしてもなかなか反応してくれなくて、何度も握ってると手にやや傷みを感じてしまうんです。側面はメタルなので。

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ボタンに見えますが、タッチのコブです
Image: Sam Rutherford/Gizmodo US

ボタンがボタンじゃない

もっと困るのはボタンです。ロック解除とボリュームのボタンは、ボタンのように見えてボタンではなく、金属が盛り上がってるだけのコブで、中にはまたまたタッチセンサが入ってます。旧iPhoneのTouch IDとかのホームボタンだったら触った感じボタンと区別つきませんけど、HTCのボタンはブルブルッとくることはくるんですが、押したのか押してないのかよくわからない問題が…。握り操作もそうですけど、こっちも気持ち強く押さないと反応しません。

こんなに美しいデザインなのに、ボタンですらないタッチボタンをなぜ残すのか。理解に苦しみます。今はどのメーカーさんもカメラとスクリーン以外のものは極力排除する方向です。ここで完全タッチに切り替えていたら未来を先取りできたのになあ、と惜しい感じがしますよ。

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光が当たると臓部が透ける背面。惚れます
Image: Sam Rutherford/Gizmodo US

バッテリーもちは8時間1分。本年測った中で最短

ちなみに中身はQualcomm Snapdragon 845、RAM6GB、ストレージ64GB、microSD用カードスロット付き。800ドル級の装備としてはすべて合格点です。ただひとつ残念なのがバッテリーで、これは同じ6インチ2880 x 1440画面の昨年モデルU11+が大容量3,950 mAhのバッテリー搭載だったのに対し、今年なぜか3500 mAhにダウングレードしてしまいました。このせいでU12+は電池の減り具合がとても早くなっています。測ってみたら8時間1分で切れてしまい、今年米Gizmodoが計測したあらゆる携帯電話で最短記録となりました。他社のフラグシップモデルのGalaxy S9+(12:27)、Huawei P20 Pro(11:36)、OnePlus 6 (13:03)と比べても、大体3~4時間の開きがあります。

デュアルカメラをダブル搭載

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ソニーなども苦戦中のところ、HTCのカメラはGoogle、Samsungといい勝負
Image: Sam Rutherford/Gizmodo US

でも、U12+はカメラで一矢を報いました。インは8MPのデュアルカメラ、アウトは12MPと16MPのデュアルカメラなので、前後どっちで撮っても背景ボケのポートレートモードで撮れちゃうんです! 上の写真は、夕方の暗い場所で撮って比べてみたところなのですけど、ホワイトバランスもちょうどいいし、Galaxy S9+ほど彩度やシャープネスが補正され過ぎるということもありません。ちゃんとメインストリームの競合についていってるのは、すごいですね。

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クリックで拡大します
Image: Sam Rutherford/Gizmodo US

夜景で比べたところ。U12+の方が若干粗めですが、地面のタイルまで写ってて、黄が緑がかることもなく、色は全体的にクリーンです。三角屋根のところはS9+の方が細かく写ってますけどね。

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両面デュアルカメラ。いつでもポートレートモードで撮れる!
Image: Sam Rutherforrd/Gizmodo US

まとめ

評価が非常に難しいフォンです。ほぼ昨年モデルと同じ外観なのに、カメラはよくなっていて、バッテリーもちは悪くなっている…。感圧センサは操作性とカスタマイズの幅が広がりましたが、タッチと握りの技術が中途半端なせいで、めざしているものに手が届かないもどかしさが…。

そんなことよりも心配なのはHTCの財務状況です。今年に入って株価は3割近く落ちていて、フラグシップモデルはこのU12+で最後になってしまうのか…という考えさえ頭をよぎってしまいました。Android初のスマホG1(Dream)」を世に出し、伝説のHTC One M7でアーリーアダプターを熱狂させ、Androidの夢を引っ張っていたHTCの…死。考えるだけで気が滅入ります。弱点もありますけど、U12+を見て思ったのは、いいところは全部Googleに売ってしまったというわけでもなかっただなあ、ということです。まだこんなにポテンシャルは残っている。なのに風が上向いてこないまま、輝かしい業績とともにHTCは過去のものになってしまうんでしょうか。そうならないことを祈るばかりです。

180711HTC_U12_could_be_the_last_act_of_htc
Sam Rutherforrd (Gizmodo)

まとめ

・横の「ボタン」はフェイクで、押してる気がしません。

・バッテリーもちわずか8時間。本年試したスマホで最短です。

・スペックと性能は申し分なしです。一番明るくしても400ニト弱なので画面はもう少し明るくてもいいかも。

・半透明の背面は文句なしにかっこいい。

・デュアルカメラをダブル搭載。カメラは売れ筋の旗艦モデルと互角です。

・ヘッドホンジャックなし。

スペック

Android 8.0 • 6インチ 2880 x 1440 LCD画面 • Qualcomm Snapdragon 845 • 6GBのRAM • ストレージは64GBか128GB • microSDカードスロット • ステレオスピーカー • フロントは8MP+8MPのデュアルカメラ • バックは12MP+16MPのデュアルカメラ • 防水防塵IP-68規格 • USB 3.1 Type-Cポート • ヘッドホンジャックなし • 156.6mm x 73.9mm x 8.7mm • 188g



Image: Gizmodo US

Sam Rutherford - Gizmodo US[原文
(satomi)