2012年の金環日食UST生中継時にも、Nikon 1 J1を使ったっけなあ…。
出会いがあれば別れもある。ニコンは今季、フルサイズのミラーレスを出すんじゃない?というウワサが信憑性をマシマシしている昨今ですが、1インチセンサーを使ったレンズ交換式アドバンストカメラことNikon 1シリーズ全体が旧製品入りとなってしまいました。アドバンストのはずだったのに。
Nikon 1シリーズが生まれたのは2011年9月のこと。マイクロフォーサーズ(2008年~)やソニー NEXシリーズ(2010年~)、ペンタックスQシリーズ(2011年~)に続いての発売で、キヤノンのEOS Mシリーズ(2012年~)よりは先のチャレンジでした。最初から4本の交換レンズを発売するなど、ニコンとしては次世代のレンズ交換型システムとして強い期待を抱いていたのではないでしょうか。
個人的な見解ではありますが、ニコンファンはトラディショナルであることを求める方が多いようで、発売当時は4:6くらいの賛否両論だったと記憶しています。でもいいカメラなんですよ、初号機のJ1とV1。僕はJ1を購入しましたが、デザインはシンプルにまとめつつも象が踏んでも壊れなさそうなガッチガチのアルミボディに、紛れもないニコン製品だなあと実感しましたっけ。
フランジバックの短いミラーレスゆえ、オールドレンズで遊べるところもステキ(マウントアダプターを使うと焦点距離が2.7倍になるとはいえ)。
またAF-Sレンズが使える純正マウントアダプターは高品質で、ニコンのフルサイズ・APS-C一眼レフユーザーにとっては、望遠力を高めるテレコン付きサブカメラとして認知されていきました。
しかし時代はNikon 1を求めてはいなかったのでしょう。
Nikon 1はJ1~J5、V1~V3、S1~S2、AW1と11機種も発売されましたが、残念ながらどの時代においても覇権は取れず。
一眼レフや、より大きなセンサーを持つミラーレスと直で戦えるほどの商品力はなく、同サイズの1インチセンサーを持つコンデジのソニーRX10/100シリーズ、キヤノンG3 X~G9 Xシリーズに(わずかながらでも)画質で差をつけられるという事態が起きたのです。
ISO400くらいでもわかるノイジーなセンサー&画像エンジン(J5までさほど改善はみられず)に、現れやすいパープルフリンジ。えー、もしかしてJPEG撮って出しじゃなくて、 軸上色収差を補正してのRAW現像じゃないと、ダメ?
そしてキットレンズとして付属されることが多かった専用ズームレンズは、良く言えばやや柔らかみがあってボケとのつながりが自然、悪く言えばやや甘めな描写をするものでした。しかし時代はカリカリを、先鋭的な描写を求めていたのです。
まだUIにも難がありました。最終モデルのJ5であっても、ファンクションボタンに設定できる項目が少なく、操作性を高めきれず。
Nikon 1の展開と連動するように、ニコンは業績不振を続けてきました。Nikon 1へのテコ入れが思うようにいかなかったという背景はあるでしょう。しかしニコンがミラーレスのトレンドを読みきれなかった、とも感じます。
余談ですが、Nikon 1のテコ入れをしなくなった18年3月期はデジカメ好調で営業益UPという、因果律を感じさせる事象もあるのがNikon 1ユーザーとして歯がゆいやら。
だからこそ期待したいのが、フルサイズセンサーを使うとウワサされている次なるニコンのミラーレスシリーズです。忸怩(じくじ)たる思いがあるからこそ、そしてソニーα7シリーズというライバルがいるからこそ、ユーザーファーストなモデルに仕上げてくれるのではと願いたくなります。
Nikon 1は終わります。しかし、Nikon 1は次モデルの礎となるのです。
Image: 武者良太, ニコンイメージング
Source: ニコンイメージング, BCN RETAIL
(武者良太)