自然には恐ろしい危険がたくさんありますが、おそらく中でも一番怖いのが“サイレント・キラー”とも言われる「暑さ」です。CDCによると、アメリカでは高温で亡くなる人が、ハリケーン、雷、竜巻、地震、洪水で亡くなる人を合わせた数よりも多いのです。

今回は、猛暑の屋外で1日中過ごさなければならない時の対策をお教えしましょう。

猛暑は命を奪う

猛暑の中で生き伸びる方法を学ぶには、猛暑がどのように人体に有害かを知らなければなりません。

厳しい暑さは、ゆっくりとですが確実に生命システムを停止させます。そして、その症状は、子どもや老人の場合は特に、驚くほど気づきにくいです。

太陽が強烈な日差しでゆっくりと人間を調理していくよりも酷い状況です。人体は次のように変化していきます。

<ステップ1>

高気圧の気象配置になると、上層の大気から地上に向かって空気が引き下げられ、その空気の圧縮で気温が上昇します。高気圧では、雲で覆われず、風が吹かず、すでに高温の暑さがさらに悪化します。

このような酷暑の中、屋外で過ごさなければならない場合、中核温(内臓などの環境温度に影響されない深部体温)が上昇し、体の冷却システムである汗をかきはじめます。

<ステップ2>

発汗によって(体内の)熱を発散させ、汗が肌の上で蒸発し、体が冷えます。しかし、強烈な暑さでは、汗をかきすぎて蒸発する時間がない、もしくは湿度が高すぎて水分が蒸発しにくくなります。すると、汗をかけばかくほど体が冷えるシステムが過剰運転となり、脱水症状になります。

<ステップ3>

この時点で、体は発汗によって失った水分を必死で補給しようとするので、とても喉が乾き始めます。また、電解質の値が低くなり始めると、筋けいれん、極度の体力消耗、失神のような症状が起こります。

<ステップ4>

体内の熱が発散されていない場合は、熱中症になる危険があります。熱が体を冷やす能力を完全に制圧し、まったく汗をかかなくなります。ここまでくると、熱が脳に過剰な負担をかけ、めまい、衰弱、もうろう状態、吐き気、意識不明などになります。

<ステップ5>

最終的に、血液が濃くなり(ドロドロになり)、水分不足のために酸素が少なくなり、血液を送り出し、血管をきれいにするために、心臓や腎臓にさらに負担がかかります。それに応じて、心臓はより速く血液を送り出そうとし、体温がさらに上昇します。

<ステップ6>

心臓が必死に血液を送り出そうとすると、肌が冷たくなり冷や汗をかき始めます。すると、あっという間に、脳は酸欠を処理できず、永久に停止します。

しかし、このような恐ろしいことが起こらないよう、防ぐ方法はたくさんあります。

脱水症状になって死ぬまでのプロセス

脱水症状になって死ぬまでのプロセス

1. 体を締め付けない、軽量で、明るい色の、綿素材の服を着る

猛暑の時に着る服は、快適さと安全性のどちらにとっても一番重要です。肌と洋服の間に空気が流れるだけの十分な余裕があれば、汗を蒸発させることができます。前述のように、汗が蒸発しないと体が冷やせません。

また、服は軽量のほうがいいです。軽量であれば体への負担も軽く(服が重いと動くのによりエネルギーが必要で、より熱が生成されます)、生地が薄ければ通気性もあります。

白やベージュのような明るい、薄い色の服は、太陽光を反射するので、熱も反射します。

さらに大事なのは、綿素材の服を選びましょう。綿は体の余分な水分を吸収し、汗が蒸発するのを助けるので、体を冷やすことができます。

汗をのがす特殊な素材は、気温が安定しているスポーツジムや日中の涼しい時間帯にはいいかもしれませんが、猛暑には最適ではありません。

2. 衣服、帽子、タオルを濡らす

綿は、水分を吸収し保つのにいい素材なので、衣服を濡らして、体を冷やすことができます。

シャツを脱ぎ、川の水に浸したり、ペットボトルの水を全体にかけたりしましょう。

絞って、また身につければ、すぐに体を冷やしてくれます。

帽子は服以上に役に立ちます。顔や目を太陽光から守るだけでなく、帽子を濡らして頭にかぶれば、涼しくて気持ちいいです。

自分の肌や体以外の水分を蒸発させて体を冷やせば、汗をたくさんかかずに済みます。

最後に大事なことを言い忘れていましたが、猛暑で屋外に出なければならない時は、タオルやラグを持ち歩くのもいいです。

濡らして絞って、首の周りに巻き付けましょう。綿以上に水分保持に優れ、体を長時間冷やす、特殊な素材のタオルもあります。

3. 日陰を探し、定期的にそこで休む

太陽が照りつける暑い日には、日陰がすべてです。屋外で何をしていても、とにかく日陰を探して、できるだけそこで休憩をしてください。

熱中症になっていそうな人を看護する時は、医療関係者の間では「冷やすの第一、移送はその次」と言われており、屋外で長時間過ごす時には、このルールに倣ったほうがいいでしょう。

自分の体温が上がっていると感じたら、動く前に日陰を探して涼んでください。

目的地が近づいているからと言って、猛暑の中でラストスパートをかけようとしないでください。焦らず、涼をとりましょう。

4. 無理をしすぎない

当然だと思うかもしれませんが、動けば動くほど体は熱くなり、動かなければ体は冷えます。運動をしている時に燃やしているエネルギーの約80%は熱に変換されます。

屋外ですでに灼けるような暑さの中にいるのに、それ以上体を熱くする必要はありません。日陰で休憩をして、無理をしすぎないでください。

トレーニング中のアスリートや兵士の死因のトップ3のうちの1つは、運動性の熱中症もしくは日射病です。

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5. 水を飲み、電解質を補給する

水を飲みましょう! 人体は涼しい状態を保つようかなりきちんと機能しますが、その働きをするために必要な燃料を補給しなければなりません。

つまり、飲み過ぎではないかと思うくらい大量の水を飲むべきだということです。また、できれば塩分も摂取して電解質を補いましょう。

アルコール、カフェイン、炭酸などは飲まないようにしてください。この手の水分は、保水プロセスが遅いので、脱水症状になることがあります。

長旅や水分が限られているとわかっている場合は、当然ですが水を無駄にしたくないでしょう。しかし、屋外にいる時は、必要だと思う量以上の十分な飲み水を持ち歩きましょう。

6. 小型の持ち歩き扇風機は使わない

よさそうだと思うかもしれませんが、FEMA(米連邦緊急事態管理局)は屋外で気温が35度以上の場合は、扇風機を使うのを推奨していません。

扇風機は風を送り、人体に間違った快適さを感じさせますが、実際に体温は下がらないと説明しています。

さらに、汗の蒸発が起こらないので、肌が乾燥します。この間違った快適さと体が冷えないことによって、突然日射病になることもあります。

7. ミストボトルを持ち歩く

扇風機の代わりにミストボトルを持ち歩きましょう。猛暑の中で快適になる方法としては一番のおすすめです。

ミストボトルで水を体に吹きかけると、細かい水滴がすぐに蒸発し、体を冷やしてくれます。

体温を少し下げてくれるだけでなく、気持ちよくもなります。

気をつけてほしいのは、霧吹きではなくミストボトルです。ミストボトルは、肌により均一に水分を補給することができます。

屋外の気温が32度以上の場合は、用心して、十分に準備が整っている時だけ外出してください。

気温が37度を超えたら、できるだけ外出は控えましょう。

気温が40度以上の場合は、外出しないでください。

そんな危険を冒すほどの価値はありません。

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Image: Ian D. Keating/Flickr

Source: YouTube, FEMA

Patrick Allan - Lifehacker US[原文