ロボットは生物の多様な「能力」を身につけ、こうして進化する(動画あり)

生物の能力や進化の過程にヒントを得たロボットの開発が相次いでいる。ヘビのように巻き付きながら移動する、アリのように集団で組み立て作業を行う、まるでダチョウの脚のように二足歩行する──。さまざまな“生物型”のロボットを紹介しよう。
ロボットは生物の多様な「能力」を身につけ、こうして進化する(動画あり)
PHOTOGRAPH COURTESY OF WIRED US

「自然」がすることに理由があるとしたら、それはとても上手に隠されている。進化の過程で、シャベルのような鼻と顎をもった象の先祖(プラティベロドン)が生まれたのも不思議だし、クッキーの抜き型のような歯を持ったダルマザメや、頭部がピーナツの殻そっくりな昆虫(ユカタンビワハゴロモ)がいるのも謎だ。

しかしこうしたことにも、れっきとした理由があることがわかっている。自然淘汰という現象は驚くほど創造性に富むもので、「種」を彼らの環境に合うように形成する。これが象の鼻をシャベルのような形にすることになっても、だ。自然淘汰はさらに、歩く、這う、飛ぶなど、ヴァリエーション豊かな動物が移動する方法も生み出してきた。

自然がすることには理由があるのだ。そしてロボット研究者は、進化のアイデアを喜んで取り入れている。この結果、好奇心をそそる多くの賢いマシンが、そこら中を歩き回ったり飛び跳ねたりし始めている。

進化のアイデアを取り入れると言っても、動物の動き方を正確に再現するという話ではない。ヘビの体の骨や腱、筋肉の一つひとつを再現しようとする人がいるなら、がんばっていただきたい。研究者は自然界からインスピレーションを得るだけで、あとは想像力を働かせているのだ。

本物にはできない動きをするロボット

例えば、カーネギーメロン大学のある研究チームが開発したロボットのヘビ[日本語版記事]がそうだ。明らかに非生物学的な16のアクチュエーターでつくられているが、本物のヘビのような動きをする。

もちろん金属でできているので、肉でできた生き物のようなしなやかさはない。「しかし生物学的なヘビにはできないけれど、“このロボットにはできる”ということもあるわけです」と説明するのは、カーネギーメロン大学のロボット研究者マット・トラヴァースだ。

このロボットは、本物のヘビのように人間の脚に巻き付いて絞め付けるだけでなく、このあとでアクチュエーターを回転させるようにして、巻き付いたまま脚を上ったり下りたりもできる。これは、這って移動する通常のヘビの動きとは違うものだ。

生物を真似してつくられた金属とプラスティックのロボットは、できることが限られていると同時に、彼らだからこそできることもある。

自然界に目を向けるロボット研究者は時折、偶然ではあっても進化によって生まれたものがどんなに効率的か、証明することがある。二足歩行ロボットの「[キャシー(Cassie)](< /2017/10/15/want-a-robot-to-walk-like-you/>)[日本語版記事]」がいい例だ。

このロボットは、ダチョウの脚だけを切り離したような姿をしている。開発元のアジリティー・ロボティクスのエンジニアが、ダチョウの姿を真似してつくったからではない。できる限り効率的に動ける形を計算してたどり着いたのが、たまたま鳥のような形だったのだ。

「研究の方向が間違っていなかったと安心できる出来事です」と、アジリティー・ロボティクスのジョナサン・ハーストは言う。「おそらくわたしたちは、動物の脚がいまあるようなかたちをしている理由の一部を理解し始めているのです」

研究者は生物の生態も取り込む

ロボット研究者は自然の「形態」だけではなく、「行動」も観察している。最も壮大なのがアリの行動だ。アリは1匹でも生物学的に興味深い存在である。しかし、特にチームとして作業したときに、信じられないような大がかりな仕事をやってのける。

そこで、シリコンヴァレーに拠点を置く非営利の独立系研究機関であるSRIインターナショナルのエンジニアは、磁場上を動き回るマイクロボット(超小型ロボット)に、アリの集団行動を真似た動きをさせている。

あるロボットは接着剤をつける役割、別のロボットは棒を乗せる役割をし、見事に格子を組み立てる[日本語版記事]のだ。このほうが、3Dプリンティングでつくるより、構造的にしっかりしている。

「この方法は、3Dプリンティングと合わせて使うことができます。あるいは、3Dプリンティングに代わるものとしてもいいでしょう。使用できる素材の幅は、3Dプリンティングよりずっと広がるのですから」と、SRIインターナショナルの主幹エンジニアであるアンジョー・ウォン=フォイは語る。例えばLEDなどの部品をつかんで配置し、より複雑な構造のものも組み立てるかもしれない。

こうしたマイクロボットは、われわれの世界を侵略し始めている、生物にヒントを得た多様なロボットのひとつだ。

下の動画では、コウモリ型のロボットから学びながら環境に適合する四つ足のロボットまで、さまざまなロボットを見ることができる。噛みつきはしないのでご安心を。

VIDEO COURTESY OF WIRED US(PCでは右下の「CC」ボタンで字幕の切り替えが可能)


RELATED ARTICLES

TEXT BY MATT SIMON

TRANSLATION BY GALILEO