敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ。今回はデジタルの世界で成功をおさめるコンサルタントであると同時に「隠遁する起業家」を標榜するモラ・アーロンズ・ミリさんの仕事術です。

作家であり、自らを「隠遁(いんきょ)する起業家」と称するモラ・アーロンズ・ミリ(Morra Aarons-Mele)さんによれば、成功は外向型の人たちだけのものではありません。野心とストレスに満ちたビジネスの世界で、アーロンズ・ミリさんは自分をスタイルを犠牲にせずに成功をおさめてきました。

「なるほど!」と閃く瞬間、自宅勤務のスケジュール、年に2回作成する2つのリストについて、モラさんの話を聞いてみました。

居住地:マサチューセッツ州ボストン

現在の職業:Women OnlineThe Mission Listの創設者、『Hiding in the Bathroom: A Roadmap to Getting Out There (When You’d Rather Stay Home)』の著者、ポッドキャスト『Hiding in the Bathroom』のホスト

仕事の仕方を一言で言うと:具体的に

現在の携帯端末:iPhone 7。Bandolierのカッコいいクロスボディ・ウォーレットに入れています。

現在のPC:MacBook Pro。出張用にWebカムが使えるようにしています。自宅用のワークステーションは人間工学的に優れている大型スクリーンのMac ThunderboltとMacbook Airにしています。

── まず、略歴と現在の仕事に至るまでの経緯を教えていただけますか?

私はデジタルの政治コンサルタントで、1999年にヒラリー・クリントンがオンラインで初めてチャットをするときサポートして以来、ウィミン・オンラインの参加者を集めるマーケティングのキャンペーンをしています。

私はヨーロッパ最大のオンライン旅行サイトのマーケティングの責任者と民主党全国委員会のインターネット・マーケティング・ディレクターを務めていました。

インターネット・マーケティングと政治関連の仕事をたくさん仕事をしてきましたが、全部やめました。午前9時から夕方6時までオフィスで仕事をするスタイルも、従来のやり方でキャリアを邁進していくことも、私には向いていないからです。

蛍光灯の光にはアレルギー反応が出ますし、1日中周囲に人がいるのも大嫌いです。私は極度の不安内向型なのです。

大学院に行くためにフリーランスをはじめてみて、「なるほど!」と思う瞬間がありました。私はデジタル・マーケターの仕事が好きなんです。

朝から晩まで大きなオフィスの中に座り、社内政治に巻き込まれないようにハラハラしたり、同僚とおしゃべりしたり、とにかく常に「オン」でいるようなこれまでの仕事の仕方は嫌でした。

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そこでフリーランスを続けて、自分の仕事となるWoman Onlineを創設しました。目標は、正当な理由で女性を集めるオンラインキャンペーンを作ることにフォーカスする初のデジタル・マーケティング代理店になることでした。

私の目指すところは、女性の社会進出なので、社員には柔軟な勤務の仕方や私が設定する「手におえる範囲の作業量」を約束しています。

我が社はオフィスを持たず、私のために働いてくれる人たちは勤務時間も1日の過ごし方も各人の裁量で決められるようになっています。

小規模で収益性があり、有意義で、管理可能なやり方です。

私は隠遁する起業家です。最近10年にわたり、髪を振り乱して奔走したり自分の体を犠牲にしなくても十分なお金と社会的評価が手に入る生活を構築してきました。もちろん、それなりの犠牲を伴います。

FOMO(fear of missing out:FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを利用している人が友人や仲間の書き込みを読んでいる時に、自分だけが取り残されているという不安や焦りを感じること)を味わい、同レベルの仲間ほどは成功できず、歩みも遅くなります。

でも、それが私なりの成功の形なので、気に入っています。

──最近の1日の流れを教えてください

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Image: Lifehacker US
  • 5:45 ジュースをせがむ3歳児に起こされる
  • 6:00-7:00 テレビ番組『モーニング・ジョー』をつけて、コーヒーを作り、メールとTwitterのチェック。ブログ記事の執筆(朝一番が文章を書くのにベストです)。
  • 11:00 散歩に出かける(独りで!)
  • 12:30 食料品店に立ち寄り夕食の買い出しをする
  • 14:00 Facebookライブをホストする。顔の上半分だけ化粧してオシャレなシャツを着用
  • 14:30–15:30 クライアントと電話
  • 21:00 明朝4:45のニューヨーク行のフライトに乗るので、早めに就寝

一日中iPhoneとラップトップでメール(とTwitter)をチェックしています

── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?

Googleメールアプリの『Boomerang』です。これがあるおかげで、私自身は変な時間に仕事をしてもまともな時間のメールを送信できています。

ニュースレターには『MailChimp』、ポッドキャストの制作には『Libsyn』がなくてはならないものです。家庭と仕事のスケジュール管理にはGoogleカレンダーを共有しています(必ず私生活と仕事の予定を両方ともカレンダーに入れましょう)。

携帯電話からFacebookを削除したので、ずいぶん気持ちが落ち着きました。FOMO(fear of missing out:自分だけが取り残されているのではという不安)が本当に減りました。

私のお気に入りのガジェットは、電動のスタンドアップデスクです。これがあると、一日中姿勢を変えられます。

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Image: Lifehacker US

── 仕事場はどんな感じですか?

自宅のオフィスには、大きなモニターと足を伸ばして座れる長椅子があります。Jo Maloneのオレンジ・ブラッサムの香りのキャンドルを灯すと、それを合図に「深く集中する仕事」をはじめられるように自分を訓練しました。

メールやソーシャルメディアのサーフィンする時間から、もっと考える仕事に移る方法としてたびたび活用しています。

仕事中は、たいてい3匹いる猫のうちの2匹が私の側で居眠りをしています。

私は片頭痛持ちなので、1日に何度も仕事する場所を変えます。朝はベッドの中で仕事をするのが好きで、その後はオフィスに降りてきます。

固定電話を持っていくのは、私にとってとても重要です。携帯電話で話すのが好きではないからです。

── お気に入りの時間節約術やライフハックは何ですか?

どこにでもスニーカーを持って行きます。

独りでウォーキングしているときが、一番良い考えが浮かぶからです。あと、エクササイズの時間がなかなか取れないので、子どものアポを待っているとき、空港で足止めされているとき、初めて訪れた都市で会議から会議へと移動するときなど、いつでも歩けるときは歩くようにしています。

家で過ごす日は、1日に60分間、一切の娯楽も外界からの刺激をない状態で過ごすようにしています。考えがろ過されるように、あえて手持無沙汰になるようにしています。

いろいろなアイデアや解決策を思いつくための私なりのやり方です。

──仕事で採用しているプロセスで、興味深いもの、珍しいもの、こだわりがあるものがあれば教えてください

スケジュールは「3日働いたら2日休む」あるいはその逆になるように心がけています。

ビジネスをオーガナイズするときはじっくり考えることにしているので、ある日は文字通り1日中、国連にいてその翌日は家で子どもたちと泥んこ遊びをする、というスタイルが可能です。

私はコンサルタントであり、我が社の営業を牽引してもいるので、出張もたびたびあります。クライアントに会って、新しいビジネスを売り込んだり、事業開発をパワーアップさせるトークをしたりしています。

ただし、家を離れるのは、ボストン市内だろうが別の都市であろうが、週に2、3日に留めるようにしています。残りの時間は、自宅にいてヨガパンツをはいてベッドの中やホームオフィスから仕事をしています。

毎日必ず静かな部屋で、5分間でもいいので休憩と独りの時間を何度も取るようにしています。

今は6カ月のリセット期間中です。仕事や(子供たちと夫との)家庭生活で自分がどういう状態にあるかわかろうとしています。

どんなビジネスも、忙しいときもあれば暇なときもありますし、私の場合、サイドプロジェクトがすごく忙しくなることもあります。

ですから、はっきり表明している私の目標の1つは、できるだけ自分の時間をコントロールして子どもたちと過ごす時間をたっぷり作ることですが、いろいろとうまくいかないこともあります。

ブックツアーをした後、子どもたちが私の不在に心を痛めていたので、仕事の仕方を考え直さなければなりませんでした。

一方で、昨年の夏は、あまりにも休み過ぎてしまい、もっとビジネスをしなければ、という状態になりました。

ですから、私は「増減エクササイズ」をしているようなものです。私の友人であり同僚でもあるクリスチーヌ・コーさんは、意志の設定がとてもうまいので、彼女を見習っています。

彼女の生活の指針となるビジョンのことをクリスチーヌさんに聞いたら、このエクササイズを教えてくれました。

まず、紙を1枚用意して、縦に2分割してください。片方を「増やす」の柱にして、もっと増やしたいことを書いてください。もう片方を「減らす」の柱にして、もっと減らしたいことをリストアップします。

このリストを見れば、どの項目が強い反応を引き出しているかわかります。

一番強烈な反応を引き出す項目については、行動項目をメモしてさらに推進するか改善・解消します。半年ごとにこのリストを見直しています。

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Image: Lifehacker US

── どんな人たちからどのように仕事を助けてもらっていますか?

Woman Onlineのチームはすばらしいです。私たちはみんな大人なので喧嘩もしませんし、バーチャルで仕事をしているので、みんなで同じ軌道を進み、効率的なコミュニケーションを維持する必要があります。

1日中、お互いにテキストメッセージ、メール、電話で連絡を取り合っています。あと、私のスケジュール管理と雑用をこなしてくれる優秀なアシスタントもいます。

ナニーのジェシーは一番重要な役目をしているかもしれません。彼女は子どもたちの面倒をよく見てくれる上に、家事も手伝ってくれて、網戸の取付けまでしてくれました。

自宅で仕事をするつもりの人たちが子どもの世話を勘定にいれていないようだと、私は内心クスっと笑ってしまいます。そんなこと到底無理ですから。

精神的なサポートやアドバイスをくれる他の働くお母さんたちのコミュニティに私も入っているので、いつもサポートやアドバイスを求めて、誰かにテキストやメッセージを送っています。

夫はどちらも上手な人なので、夫にメッセージを送ることも多いです。

──ToDoはどうやってトラッキングしていますか?

毎日、朝晩ToDoを書き出すことをルーティンにしています。仕事に関することも私生活に関することも両方です。

それをGoogle Appsカレンダーに入れます。こうしたリストは、きちんと見えるようにしておきたいので、たびたび書き直します。

外出中にインスピレーションや緊急事態が発生したときは、自分にボイスメモを残すこともあります。

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Image: Lifehacker US

──どのように充電や休息をしていますか?

ウォートン校のかの伝説的なStew Friedman教授をパワーナップの途中で思い出して以来、1日に何度も休憩を取っても罪悪感を抱かないことにしました。

私は短距離走でなくマラソンをしているのですから。それで、毎日セルフケアと独りの時間を堂々ともうけることにしています。

そのほうが健康的でいられますし、たくさんの人の仕事や生活が私の肩にかかっているからです。

一方、日中どこかで30分ぐらい、草むしり、料理、洗濯など家まわりの雑用をすることで充電しています。のんびりと過ごすのが大好きなんです。

──仕事の合間に何をするのが好きですか?

ポッドキャストです。ポッドキャストは最高の媒体です。マイクを通して人々に親しい感じで質問することが大好きです。

──今、何を読んでいますか? おすすめの本はありますか?

今、『Circe』という小説を読んでいて、とてもおもしろいです。私はフィクションをたくさん読みます。ニューヨーク・タイムズを毎日読んでいます。

あと、雑誌もたくさん読んでいます。フォーチュンのBroadsheet to Politicoが発行するニュースレーターも欠かさず読みます。ノンフィクションは、Nilofer Merchantさんの新作『The Power of Onlyness』とEllen Hendriksen博士の『How to Be Yourself』を読んでいます。

──今日あなたがされたのと同じ質問をしてみたい相手はいますか?

私の夢は企業のエグゼクティブで本当に成功している人、たとえば、法律事務所のパートナーで私のような変わった働き方をしている人に会うことです。

週に1度は自宅勤務しているフォーチュン500に入っているCEOに会ってみたいです。

──これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください

セールスは問題解決と同じです。それがわかると、ネットワーキングやおしゃべりやパーソナルブランドを作ることに時間を費やす必要はなくなります。顧客が何を求めているかわかるようになりましょう。

──改善しようとしていることはありますか

Twitterをやみくもにチェックしてしまうのですが、これをしていると気が滅入るので、この癖をやめることです。

それから、頭の中でToDoリストを果てしなく右往左往することを止めることです。独りで働くことはすばらしいのですが、ときにはたくさんのことをジャグリングしている感じがします。


Image: Lifehacker US

Source: Women Online, The Mission List, Amazon(1, 2, 3, 4), Forbes, Bandolier, Boomerang, Mailchimp, Libsyn

Nick Douglas – Lifehacker US[原文