折り紙をヒントに作られたロボットアームは、深海魚を優しくキャッチする

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  • author Rina Fukazu
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折り紙をヒントに作られたロボットアームは、深海魚を優しくキャッチする
Image: Gizmodo US

広く深い海の世界について、わたしたちはまだそのすべてを知っているわけではありません。

特に中深海に棲むものをはじめ、まだ発見されていない海洋生物は約100万種あると推定されています。発見されていない種の多くは、ゼラチン状でぶよぶよしていることから、かなり脆く、ネットなど既存の手法では傷つけることなく捕獲することが難しいと考えられていました。そこで役に立ちそうなのが、折り紙にヒントを得たという新型ロボット「RADサンプラー」です。

深海生物はアート作品同様の気配りに値する

先日、Science Roboticsで発表されたところによると、ハーバード大学などの研究者らによって繊細な深海魚の探査に貢献するであろう回転作動十二面体ロボット・RADサンプラーが開発されました。生き物に怪我をさせない構造から、海洋生物学者たちが研究のため無侵襲な(編注:生体の恒常性を乱さないような)やり方でサンプルを得ることが可能になります。

まるでアート作品を扱うかのように、生き物たちにアプローチする」と、コメントするのは共同著者でニューヨーク市立大学の生物学者であるDavid Gruber氏。

研究のためにモナリザの作品を切り抜こうとするでしょうか? 答えは、ノー。もっとも革新的で利用可能なツールを駆使しますよね。深海魚のなかには数千年生きているものもいます。私たちがこうした生き物に接触する際、彼らはアート作品と同様の気配りに見合うと考えています。

RADサンプラーが海洋生物を包み込むのに動く花びらのような部分は、3Dプリント製。単一のモーターによって回転したり折り畳まれたりする動作が可能になっています。さまざまな構造が試された結果、十二面体がもっとも有効だと判断されたとのことです。

深海に限らず、宇宙空間でも使えるかも

性能が最初に確認されたのは、米コネチカットにあるミスティック水族館。ミズクラゲのキャッチ&リリースに成功しました。さらなる微調整後、RADサンプラーはカリフォルニア沿岸のモントレー・キャニオンから水中に入り、遠隔操作でイカ、タコ、クラゲなどのキャッチ&リリースが行なわれたとのこと。ちなみに研究者らによると、RADにもっとも関心を示したのは、タコだったそうです。

試験動作は深さ700mで行なわれましたが、RADサンプラーは水深11km地点での活躍を見込んで開発されています。筆頭著者で機械工学者のZhi Ern Teoh氏は、RADの構造について次のように述べています。

RADサンプラーは制御が非常にシンプルで、深海の厳しい環境に適しているため破損する可能性も低いです。組み立てユニット式であることから、たとえどこかが壊れても部品だけ交換してすぐに水中に戻すことが可能です。

この折りたたみ式のデザインは、深海に似て低重力で、あらゆるデバイスを操作することが難しい宇宙空間で使用するのにも適しているでしょう。

研究者らは今後、海洋地質学領域水中での建設業などRADサンプラーが深海でもっと複雑なタスクにも対応できるように、頑丈なバージョンの開発を目指しているといいます。またカメラやタッチセンサー、DNAシーケンシング技術などを組み込めば、海の生き物の捕獲にとどまらず、独自の現地調査を行なうことも可能になるでしょう。今後の活躍が楽しみですね。



Image: Gizmodo US
Source: Science RoboticsGeorge Dvorsky - Gizmodo US[原文
(Rina Fukazu)