NHKの『大河ドラマ』を始め、歴史をテーマにしたドラマというものは今も昔も人気があるものです。そのような歴史ドラマの裏方として欠かせない仕事が「時代考証」です。

IBMが運営するWebメディアMugendai(無限大)では、『大河ドラマ』の時代考証を約20年にわたって支え続ける、小和田哲男静岡大学名誉教授へのインタビューを掲載しています。

そのインタビューでは、「時代考証」という仕事についてはもちろん、現代にも通じる歴史上の人物のビジネススキルや歴史を学ぶ意味などについて語られています。

「時代考証」とはどんな仕事なのか

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Image: Mugendai(無限大)

『大河ドラマ』の「時代考証」という仕事は、ドラマの脚本をチェックし、その時代の事実と合っているのか調べるのが主な仕事。台詞だけではなく、ト書き(俳優の動き・出入り、照明・音楽などを指示した、台詞以外の文章のこと)もチェックします。さらに、衣装や所作の風俗的側面にも気を配るそうです。

ときには、史実よりも演出が優先されてしまうこともあるようですが、そのせめぎ合いも時代考証者としての醍醐味だと、小和田氏は語ります。

現代にも通じる戦国武将のビジネスセンスについて

現在小和田氏は、戦国史を専門としていますが、もともと城に興味を持っており、高校生の頃から城郭などの調査事業を行う日本城郭協会に参加。静岡出身のため、駿府城から入り、静岡から東京に居を移してからは江戸城趾に惹かれ、そこから戦国時代に関心を持つようになったそうです。

そこで、注目したのは合戦の戦法ではなく、一国一国の独自の統治法経営手腕の面白さ。これは、現代にも通じる部分が多いようです。

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たとえば、戦国武将として名前がよく挙がる織田信長豊臣秀吉徳川家康は、小和田氏も「戦国時代に学ぶ経営手腕」というテーマの講演で取り上げることがあるそうです。

信長は、能力重視の人事を行い、情報を大事にするタイプ。秀吉は優秀なナンバー2、いわゆる「右腕」なる存在が必要不可欠なタイプ。そして家康は、勝利した相手の武将を取り込んで勢力を拡大することから、M&Aコングロマリット方式の経営に長けていたタイプということ。

小和田氏は、もとは秀吉派だったとのことですが、現在は家康びいきになっているそうです。

失敗は人間を大きく成長させる

それに、戦国武将の残した言葉の中には、現代人の成功の秘訣になるものもあります。小和田氏が挙げているのが、朝倉宗滴(あさくらそうてき)の言葉です。

「名将とはいちど大敗北を喫した者をいう」

朝倉宗滴は一度も戦に負けなかった武将ですが、この言葉は「自分は負けたことがなかったから、名将にはなれなかった」という意味。

ここで私が申し上げたいのは、失敗の経験がむしろ人間を一回りもふた回りも大きく成長させる、ということです。家康は、三方ヶ原の戦いで武田信玄に手痛い負け方をしています。(中略)多くの負け戦を経験した家康は、家臣の犠牲により生き残ったという思いを強く持つようにもなり、「家臣こそわが宝」という言葉も残しています。いずれも、いまを生きる経営者やリーダーの心にひびく教訓ではないでしょうか。

挫折を味わった人しか本当の成功をつかめない。これは戦国時代だけではなく、現代に生きる我々にも通じる教訓ではないでしょうか。

歴史を自分のこととして考える

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インタビューの最後に、小和田氏は「歴史から学ぶべきこと」について語っています。

歴史という一枚の鏡を通して、過去、現在、未来はつながっています。だからこそ、歴史的事件の年号や概要のみをただ記憶に留めるのではなく、「いまを生きる自分」にその出来事を引き寄せ、ぜひ自分ごととして思考してほしい。歴史を学ぶ意味はそこにあると、お伝えしたいですね。

今、我々が生きている時間というのは、過去から綿々とつながってきたものです。過去の人たちが生きてきた時間、行ってきたことは、すべて今の自分につながっているとも言えます。それを理解するためにも、歴史は学ぶべきものだと言えます。

小和田氏のインタビューでは、『大河ドラマ』の興味深い裏側についてや、時代考証者としてドラマに携わる意義など、興味深い話を読むことができます。ぜひ、Mugendai(無限大)でお楽しみください。


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