久々に「高いけどいいや」って思えるかも。MacBook Pro 13インチ(2018)レビュー

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  • author 福田ミホ
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久々に「高いけどいいや」って思えるかも。MacBook Pro 13インチ(2018)レビュー
Image: Alex Cranz/Gizmodo US

Macのことちゃんと考えてくれてたんだねって、それがうれしい。

MacBook Proがアップデートされ、なかなか好感触です。米Gizmodoではいつも辛口なAlex Cranz記者がレビューしていますが、高い高いと言いながらも気に入ってるみたいです。どのへんがお気に入りポイントなのでしょう?


新しいMacBook Pro、良いです。バッテリー持続時間はケタ外れだし、スピードもケタ外れ、新しくなったキーボードもちゃんと使えます。そしてmacOSが外付けGPUに対応したことで、4つあるUSB-C/Thunderbolt 3ポートにもついに活躍の場ができました。このMacBook Proは、Appleが本当に久々に生み出した、ちゃんと機能するラップトップです。

だって最近のAppleは、まるでMacユーザーのことなんて忘れてしまったみたいでした。iPadとかiPhoneのファンに対しては、毎年新しい素敵なアップデートを時計じかけみたいに粛々と打ち出してましたが、半面Macユーザーにとってはがっかりが続いてました。Appleのラップトップ群に搭載されたプロセッサは時代遅れになり、そのわりには値段も高すぎました。

でもmacOS Mojaveが発表されたあたりから、風向きが変わったような気がします。Mojaveはこの何年かのmacOSと比べて、格段に生産性が高まるアップデートだし、今回のMacBook Proもこのカテゴリではダントツの最速ラップトップに仕上がっています。

Touch Bar搭載13インチMacBook Pro(2018年モデル)

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Image: Alex Cranz/Gizmodo US

・これは何?:Touch Bar搭載13インチMacbook Proの、Coffee Lake対応アップデート。
・価格:1,800ドル(国内価格19万8800円)から。
・好きなところ:このカテゴリ最速のラップトップであること。
・好きじゃないところ:このカテゴリ最高値のラップトップであること。


今回レビューするモデル

CPU:第8世代 2.7GHz Intel Core i7-8559Uプロセッサ(Core i5からカスタム、仕様はこちら
RAM:16GB(8GBからカスタム)
SSD:256GB
価格:2300ドル(国内価格25万3800円)

ちなみにこのレビューでは、Touch Bar付きの13インチMacBook Proを使ってますが、スピードも価格とのバランスもすごく良いと思います。Touch Barなしの13インチMacBook Proはそもそもアップデートされてないので、ますます時代遅れのスペックのわりに、値段が高すぎです。それから、私はまだ15インチのTouch Bar付きMacBook Proも試せてません。こちらはスペックはともかく、発熱で動作が遅くなる問題があって修正アップデートが出ています。

そんなわけで以下のレビューでは、Touch Bar付き13インチMacBook Pro、16GBのRAM、256GBのSSD、第8世代 2.7GHz Intel Core i7-8559Uプロセッサを搭載したモデルを使ってます。ラップトップとしては一番高い価格帯ですが、まだ数少ないCoffee Lake搭載13インチラップトップのひとつである価値があります。

ちなみにIntelの第8世代CPUは、ちょっと複雑です。普通は世代ごとにマイクロアーキテクチャ(電子回路の設計)は1種類しかなく、たとえば第6世代はSkylake、第7世代はKaby Lakeという感じだったんですが、第8世代では、モバイル用のKaby Lake R(R=リフレッシュ)、デスクトップ用Coffee Lakeが登場。そして2018年4月に、今回のモバイル用のCoffee Lakeが発表された次第です(編注:そのほか第8世代は、10nmプロセスルールのCannon Lakeや、AMDとコラボして作ったKaby Lake Gなど、とにかくモデルが乱立している状態です)。

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Image: Alex Cranz/Gizmodo US

でもMacBook Proのように4コアのCoffee Lakeを取り入れたメーカーは、まだほとんどありません。他社はKaby Lake Rが出たときにそれをすぐに搭載したので、Coffee Lakeのために設計を変えるのは手間なんです。一方Appleはアップデートに時間がかかったせいか、最新ほやほやのCPUを採用できました。

Coffee Lakeの存在感は絶大です。まず価格に関して、他の13インチの競合ラップトップ(DellのXPS 13、LenovoのThinkPad X1やYoga 900シリーズ、HPのEnvy 13t)はみんなKaby Lake R搭載ということもあり、MacBook Proはそれらより500〜1,000ドル(約5.5〜11万円)高いです。ただその分、新MacBook Proは格段に速いです。ベンチマークツールのGeekbench 4で見ると、MacBook Proのマルチコアのスコアが18328だったのに対し、Dell XPS 13は15516でした。なので少なくとも理論上、マルチコアの処理ではMacBook Proが有利であるようです。具体的には、Adobe PremiereとかFinal Cut Proでレンダリングしたり、Blenderで3DCGファイルを処理したりといった作業がより高速になるんです。

もうひとつ、Photoshopを使ったテストでもMacBook Proの圧倒的な強さがわかりました。このベンチマークでは、一連のRAW画像ファイルを一気にリサイズしたときにかかる時間を測るんですが、この時間はCPUの性能だけじゃなく、むしろストレージ容量の影響を大きく受けます。今回のテストだと、Dell XPSでかかった時間は48.49秒でしたが、MacBook Proは26.37秒とほぼ倍速に迫る勢いでした。

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Image: Alex Cranz/Gizmodo US

さらにDell XPS 13は16:9の4Kディスプレイ(3,840×2,160px)なんですが、MacBook Proはそれより低解像度で、かつプロセッサは速いので、画像処理以外のビジュアルなタスクも素早くこなしています。MacBook Proのディスプレイはちょっと変わった16:10のアスペクト比で、解像度は2,560×1,600px、一般的なフルHDと4Kの中間くらいです。

そのためか新MacBook Proのバッテリー持続時間も、Dell XPS 13の4K版とフルHD版の真ん中あたりです。フルHDのDell XPS 13は、今でも過去最長のバッテリーを持つラップトップのひとつで、ディスプレイの明るさを200ニットにしてYouTube動画をストリーミングした場合、バッテリーがなくなるまでに13時間24分かかりました。4K版で同じことをした場合は、9時間28分でバッテリーがなくなりました。一方、新MacBook Proのバッテリーは、10時間35分保ちました。これならNetflixのドラマ『GLOW』を2シーズンまとめて見ても、まだちょっと残ってることでしょう。これで新MacBook Proは、米Gizmodoのテストでもまだ希少なバッテリー保ち10時間超えラップトップのひとつとなりました。

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Image: Alex Cranz/Gizmodo US
USB-AもHDMIもSDカードスロットさえもありませんが、USB-C/Thunderbolt 3ポートがかなり便利に。

新MacBook Proは、内蔵GPUもDell XPS 13よりちょっと速くなっています。ゲーム『Civilization VI』を使ったベンチマークで、1080pでフレームレートを高く設定した場合のフレームの平均表示時間を測ったんですが、Dellのマシンでは平均140.9ミリ秒だったのに対し、MacBook Proは128.5ミリ秒でした。これはゲーマー、とくにタイムラグを最小にしたいタイプのゲームにとっては理想的とまではいかずとも、先代MacBook Proよりはだいぶマシです。

この「だいぶマシ」と感じるような我々こそ、新MacBook Proがターゲットとしている層です。つまり、待ちくたびれたMacユーザー層です。Appleは最近ハンパなアップデートとか、性能のわりに高すぎるハードウェアとかを次々と繰り出してきました。でも今やっと、自分たちはラップトップメーカーとしても認められたいという事実に立ち返ったんです。だからこそ単なる新しいプロセッサじゃなく、可能な限り最速のプロセッサを採用したのでしょう。そういう意味では、今回は単なるアップデートというより、ひとつの決意表明といってもいいと思います。

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Image: Alex Cranz/Gizmodo US

その決意は15インチMacBook Proに関しては勇み足になってしまったみたいで、発熱&パフォーマンス低下で修正アップデートを行なう事態となりました。でもこの13インチの新MacBook Proは違います。最新CPUが入ってるのは話題作りのためだけじゃなかったのかも、とワクワクできます。Appleはユーザーのことをちゃんと考えてくれて、値段は高いかもしれないけど、コスパ的には恥ずかしくならない、良いラップトップを作ろうとしているんじゃないかと期待が高まります。

新MacBook Proの新しいキーボードは今までより柔らかく感じられ、細かいゴミが詰まりにくくなりました。動作は先代や競合より明らかに高速で、バッテリーライフも悪くありません。さらに改善されたOSも、もうすぐ使えます。値段は相変わらず他社のものよりずっと高いんですが、買うときに今までみたいに「高すぎるよね…」って後ろめたい気持ちにならなくて済みそうです。そう、新しいMacBook Proは、Apple価格でもまあいいかってほぼ思えそうなくらい、すごく良い出来栄えなんです。

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Image: Alex Cranz/Gizmodo US

まとめ

・バッテリーの持続時間は普通かそれ以上です。
・第8世代Coffee Lake CPUは、今ある13インチラップトップに搭載されてるものでは最速です。
・ストレージの反応の速さは信じられないほど。
・グラフィックスは忍耐の範囲内。
・値段は相変わらずひどいです。


Image: Alex Cranz/Gizmodo US

Alex Cranz - Gizmodo US[原文
(福田ミホ)