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オンキヨー、“和楽器に学んだ”約30万円の桐ヘッドフォン

 オンキヨー&パイオニアは、桐を使ったオンキヨーブランドのヘッドフォン「SN-1」を開発。クラウドファンディングサイトの未来ショッピングで、先行販売を実施する。募集期間は8月1日~9月30日。2つのプランで計30台を用意し、先着15台限定でオリジナルヘッドフォンスタンドが付属するセットが32万4,000円(税込)。桐ヘッドフォンのみが30万2,400円(同)。

桐ヘッドフォン「SN-1」
2つのプランで計30台を用意

 オンキヨーの技術者が理想とする、音の表現を追求する過程で生まれたという密閉型ヘッドフォン。'16年に桐を活用したスピーカーと共に開発発表を行ない、その後、各種オーディオ関連のイベントでブラッシュアップを図りつつ参考出展してきた。今回、その製品化が決定した形だ。

製品パッケージ

 桐は筝や琵琶などの高級和楽器で用いられる素材で、多孔質で音の濁りが少なく、倍音まで綺麗に響かせる特性がある。響きすぎるという難点もあるが、楽器が箱鳴りを活かして音を出すことにヒントを得てハウジングに採用したという。

 SN-1のハウジングは、福島・会津地方の厳しい冬を超え、「年輪が詰まって、粘り強く、美しく育つ」という会津桐を使っている。老舗の斉藤桐材店がオンキヨーに協力し、伐採後に年月をかけて熟成させた材料を提供した。

斉藤桐材店の会津桐を採用

 さらに楽器メーカーに依頼し、筝内部に施される伝統技法「綾杉彫り」をハウジング内部のドライバ背面に施した。これによって定在波を防ぎ、音の響きが均一になって濁りも消えるという。

綾杉彫りを施したハウジング内部

 セルロースナノファイバーを100%使った振動板を採用した、50mm径のユニットを搭載。セルロースナノファイバーは鋼鉄の1/5の軽さながら、5倍以上の強度を誇る自然素材で、この素材のみで振動板を作るのは世界初の試みだという。「剛性が高く軽量なため、高音が伸びやすく、雑音が生じにくい理想に近い特性がある」としている。

50mm径ユニットを搭載
セルロースナノファイバーの振動板

 ベースはマグネシウム合金を採用して不要な共振を抑制。ドライバを背面から抱え込んでベースに強固に固定するフルバスケット方式と、ハウジングとハンガーの連結部にゴム部材を挟んで左右の音の干渉を抑えるフローティング構造も採用している。再生周波数帯域は10Hz~80kHzで、ハイレゾ再生に対応。出力音圧レベルは99dB、インピーダンスは40Ω。

 ケーブルは両出しで長さは3m、プラグは3.5mmステレオミニ。標準ステレオの変換プラグを同梱する。ケーブルの着脱も可能で、ヘッドフォン側の端子は3.5mmミニ。付属の2.5mm 4極バランスケーブル(長さ1.6m)に付け替えて、対応ヘッドフォンアンプと組み合わせることでバランス駆動も楽しめる。

リケーブル対応で、ヘッドフォン側の端子は3.5mmミニ
2.5mm 4極バランスケーブルが付属

 ヘッドバンドは軽量・高剛性の超ジュラルミンで、シリアルナンバーを刻印。イヤーパッドとヘッドバンドの外装にはアルカンターラを採用し、滑らかな装着感や高い耐久性を実現した。重量は400g。

超ジュラルミンのヘッドバンドにシリアルナンバー刻印

 SN-1の開発にあたり、同社は太鼓芸能集団・鼓童のメンバーである住吉佑太氏と、指揮者の佐渡裕氏にヘッドフォンの試聴を依頼。その結果「今まで聴いた太鼓の中で、いちばん、太鼓の音がしている」(住吉氏)、「演奏の風景が、ビデオを観ているみたいに想像できる」(佐渡氏)というコメントが寄せられたという。

太鼓芸能集団・鼓童のメンバーである住吉佑太氏(左)と、指揮者の佐渡裕氏(右)の試聴コメント

 実際に音を聴いてみると、密閉型でありながら開放型のような音場の広さが感じられ、それでいて音像は不明瞭にならずに気持ちよく広がる。アコースティックギターやオーケストラなど生楽器の演奏の響きが、桐という素材の響きの特性にマッチするようで、心地よく感じられた。

 東京・秋葉原のショールーム「ONKYO BASE」に、SN-1の試聴機を用意する。今後、試聴した人の反応や先行販売の様子を見ながら、一般販売も含めて検討するという。

SN-1(ヘッドフォンスタンドは先着特典とは異なる)

 なお、同社が’17年にクラウドファンディングを募った桐製スピーカーを、ONKYO BASEで8月1日~9月30日限定で3セット、一般販売する。価格は140万4,000円。

’17年にクラウドファンディングを募った桐製スピーカーを、ONKYO BASEで期間・数量限定販売
桐スピーカーの分解展示も行なっている