病気でもないのに、原因不明の不調が長引いているーーそんな人は、もしかすると「自律神経失調症」かもしれない。

そう警鐘を鳴らすのは、『忙しいビジネスパーソンのための自律神経整え方BOOK』(原田 賢著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者です。

日本初の自律神経専門の整体である「元気になる整体院」代表。大学卒業後にサラリーマンとして販売やITエンジニア職などを経験するも、過酷な労働環境のなかで自律神経失調症、うつ病になり休職を余儀なくされたことから、同院を開院したという経緯があるのだそうです。

自律神経失調症とは、簡単にいうと、体の自動調節機能がおかしくなってしまう状態のこと。そして今現在、そんな自律神経の乱れで悩んでいる方が、大変増えている状況です。 自律神経失調症は、長引くとうつ病をはじめとする様々な疾患を引き起こすおそれがある、大変危険な状態なのです。(中略) 本書では、なんとなく体調が悪く、自律神経失調症ではないかと疑っているがどうしていいかわからないーーそんなビジネスパーソンのみなさんに、自律神経の整え方をご紹介していきます。(「はじめに」より)

「自律神経を改善させる」という観点から、なおすべき生活習慣を「姿勢の習慣」「運動の習慣」「食事の習慣」「睡眠の習慣」「考え方の習慣」の5カテゴリーに分け、それぞれ役立つストレッチや生活改善のメソッドを紹介した内容。きょうはPART 2「自律神経を整える5つの習慣」のなかから、4「自律神経を整える睡眠の習慣」に焦点を当ててみたいと思います。

決まった時間に起き、太陽の光を浴びる

生活リズムを整えるためには、質のよい睡眠が不可欠。それは、自律神経を整えるためにも、よい睡眠をとって体を回復させることが大切だということ。そして、そのためには、体内時計(サーカディアンリズム)を調整することが欠かせないといいます。

質のよい睡眠をとるためには、睡眠を促進するホルモンであるメラトニンの分泌を活性化させることが必要。そしてメラトニンの分泌を活性化させるのは、「幸せホルモン」と呼ばれる、脳内の神経伝達物質のセロトニン。

ちなみにメラトニンは、セロトニンが午後になると変化するホルモンであるともいわれているのだとか。そのため、メラトニンの分泌を活性化するためには、セロトニンがしっかり分泌されている必要があるということ。セロトニンが十分に分泌されていれば副交感神経の働きがよくなり、幸福感を得やすくなるといわれているそうなのです。

ただしセロトニンは体内で貯蔵できないため、毎日体のなかでつくらなければならないということになります。具体的には「トリプトファン」「ビタミンB6」「炭水化物」という3つの栄養素が不足しているとつくりだすことができないため、これらの栄養素を食べものから摂取することが必要。

トリプトファンは、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品や大豆製品に含まれています。ビタミンB6が豊富なのは、さつまいも。また、イワシからはトリプトファンとビタミンB6の両方を摂取できます。炭水化物の代表選手は白米です。 これら3つの栄養素をすべて含んでいるのがバナナです、1日1本のバナナを食べるだけでセロトニンが分泌されます。(148ページより)

また、セロトニンには太陽の光を目に入れることで分泌量が増加する特性があるので、太陽の光を浴びることも重要だといいます。毎日決まった時間に寝て、決まった時間に起きれば、生活リズムが整うというわけです。(146ページより)

朝日を浴びながらウォーキングを行う

太陽の光を意識的に浴びるために有効なのが、出勤時にウォーキングを行うという習慣。ウォーキングは、一定のリズムで動くリズム運動。そして注目すべきは、セロトニンには一定のリズムで筋肉の緊張と弛緩を繰り返すと生成されやすくなる特性があること。つまりウォーキングは、日光浴とリズム運動という両面からセロトニン生成に役立つ運動だといえるそうなのです。

朝の通勤時にウォーキングを行えば、有酸素運動と日光浴ができ、おまけにリズム運動でセロトニンを生成しやすくなる体をつくることができるという、自律神経に大変効果的な習慣となるのです。(151ページより)

分泌されたセロトニンは、午後以降にメラトニンに変化することに。そこでメラトニンをたくさんつくり、睡眠の質をよくすることが大切だと著者は記しています。

また、朝の通勤時に日光浴を行うと、サーカディアンリズムをリセットすることも可能。朝6時半から8時半くらいの朝日にはリセットするための光の効果があるといわれているため、毎日体内時計を一定に保つためには、朝日を浴びることが効果的であるという考え方です。

つまり、通勤時に日光浴とウォーキングを同時に行えば、手軽に上質な生活習慣を手に入れられるということ。(150ページより)

「就寝前の1時間」をつくる

睡眠の質を上げるための方法として、寝る1時間前にお風呂から上がれるように入浴することを著者は勧めています。その際、シャワーだけで済まさず、しっかりと湯船に浸かって温まることが大切。

ポイントは、お風呂から上がった状態から1時間くらいの間、だんだん体温が下がっていく時間こそが入眠にもっとも適しているということ。

また、よくいわれているように、入浴後の1時間、すなわち眠るまでの間はスマートフォンを使わないようにするべき。なぜならスマホ画面のバックライトに使われているLEDから出るブルーライトという強い光が、脳を刺激してしまうから。

布団に入ったら、深く大きな深呼吸を行うと同時に、おでこに手を当てましょう。深く大きな呼吸を3~5分の間続けていると、脳は、「今リラックスする時だ」と勘違いを起こして、副交感神経のスイッチを入れてくれます。こうすることで、よりリラックスして睡眠をとることができます。(156ページより)

ちなみに、おでこに手を当てることは、前頭葉と関係しているそうです。人間は物事を考えるときに、前頭葉を働かせているもの。そして、おでこに手を当てると血流がよくなって前頭葉の働きが活性化し、理性が働きやすくなるためリラックスできるというのです。(154ページより)

休みの日に寝だめをしない

サーカディアンリズム(体内時計)を整えるためには、毎日同じ時間に起きることが重要。いつも起きている時間に1時間プラスするだけなら、大きく体内時計が乱れることはないものの、それ以上は体内時計の悪化を招くというのです。また、休みの日に寝だめをしたとしても、それで疲れがとれるわけではありません。

意外と知られていないのが、毎日の睡眠時間の目安を7時間前後に整えると、体内時計が乱れづらくなり、疲労が抜けやすくなるということです。(159ページより)

良質な睡眠ができているかどうかは、「入眠にかかる時間が短い」「中途覚醒も早朝覚醒もない」「朝起きたときに“寝た感じ”がちゃんとある」「疲れも取れている」などで判断することが可能。

質のよい睡眠がとれるときは、副交感神経の働きがよいときなので、体の回復力が上がり、しっかり疲れがとれているということ。自律神経を整えるためには、質のよい睡眠をとり、体の回復力を上げ、さまざまな症状に抵抗し、対応できるだけの自然治癒力を持っておく必要があるというわけです。(158ページより)




自律神経の乱れをなおすにあたり、「これだけやればいい」という万能のメソッドはないそうです。本書で紹介されているような方法で生活習慣を見なおすことにより、徐々に改善していくものだということ。

コツコツと、自分の力で克服していく意思が重要なのです。だからこそ、著者が実際に積み上げて来た実績に基づいている本書を、ぜひとも参考にしたいところです。


Photo: 印南敦史