アメリカで人気の「コミュニティ運営のISP」とは？

アメリカのインターネットサービスプロバイダ(ISP)は「不当に値をつり上げる」などといった理由から、多くの人々から敬遠されている現状があります。この結果、多くの人は一般のISP事業者と契約せず、コミュニティ運営のISP事業者と契約しているとのこと。コミュニティ運営のISPとはどのようなものなのか、Motherboardが解説しています。

People Still Don't Like Their Cable Companies - Consumer Reports
https://www.consumerreports.org/phone-tv-internet-bundles/people-still-dont-like-their-cable-companies-telecom-survey/

A Community-Run ISP Is the Highest Rated Broadband Company in America - Motherboard
https://motherboard.vice.com/en_us/article/ne5k5m/consumer-reports-broadband-company-ratings

アメリカで非営利のメディアであるConsumer Reportsの調査によると、ISPシェアの第1位はコミュニティが運営するISP事業者のEPBとなっており、過去3年間で2度トップに輝いています。なお、Consumer Reportsは通信の品質や回線速度の観点だけでなく、市場価値も評価していることから、実質アメリカのトップISPの1つとして評価されています。

コミュニティ運営のISPが人気を集める理由は、企業が運営するISPの多くで、理由の不明瞭な「サービス利用料の値上げ」が横行していたことです。企業が運営するISPでは、加入者を集めるために初期のサービス利用料を安く抑えています。しかし、サービス加入から12カ月たつと急激に利用料が値上がりし、その価格は請求されるまでわからないというのが常態化しています。

これによって、多くの消費者はISPに対して不信感を持つようになり、企業が提供するISPを離れる人が続出します。さらに企業の運営するISPを信じられなくなった消費者たちが集まって、独自に格安の料金でインターネット接続を提供するコミュニティ運営のISPを立ち上げるまでに至りました。記事作成時点で、コミュニティ運営のISPがアメリカ国内に750以上あり、多くの人が企業のISPから乗り換えています。

Consumer Reportsで電子機器関連記事の編集を担当しているクリストファー・レイモンド氏は「多くのコミュニティ運営のISPは運営規模が小さく、ランキングに載ることが難しい現状があります。しかし、非常に適切な料金体系を設定しており、企業が運営するISPのような異常な値上げを行うことはありません」と語っており、健全な運営を続けていると説明しています。

消費者が自らISPを立ち上げて運営する前に、「アメリカの地方自治体がISPを運営するという選択肢はなかったのか？」という疑問の声をあげる人もいます。アメリカの21以上の州ではISPのロビー活動家によって制定された法律があり、地方自治体がISPを運営することを禁止しています。このことから、アメリカの多くの地方自治体が企業の代わりにISPを運営できない土壌が出来上がっているのが現状です。

しかし、2018年時点ではコロラド州でこの法律を撤廃して、州独自のISPを立ち上げようとする動きがあり、状況は徐々に変わりつつあります。また、EPBをはじめとした透明性の高いコミュニティ運営のISPの台頭により、高速かつ安価なインターネット接続がますます普及していくことが予想されています。Comcastをはじめとしたアメリカの企業が運営するISPは方向転換の時期を迎えているのかもしれません。