トルコとアメリカの貿易戦争、ヒートアップです。
トルコのエルドアン大統領は先日、Apple(アップル)のiPhoneを含むアメリカ製の電化製品をボイコットすると8100万人の国民に発表しました。大統領が「アメリカ製品をボイコットするよ」と宣言してしまうというのはかなりスケールの大きな話なわけですが、これはトルコとアメリカ間の貿易戦争が激化するのを受けて、トルコの貨幣であるリラの価値が暴落してしまったことに対する決断のようです。
首都アンカラで行われた熱のこもったスピーチの中で、エルドアン大統領はアメリカを「経済ヒットマン」と例えています。国の経済力を武器のように使っているという批判です。アメリカのあらゆるプロダクトに関して、トルコ内ではもっといいもの作ることができる、とも主張しています。当分の間はAppleではなく、サムスンの製品を利用するようです。
加熱するアメリカ人牧師拘束問題
トルコには国内産のスマートフォンブランドであるVenusとVestelも存在しており、彼らの製品も信頼できる、と加えています。トルコのスマートフォン・ユーザー数は4700万人ですが、iOSの利用率は16%程度であると推測されています。
大統領自身によるボイコット発表、ということで影響は大きそうですが、詳細に関してはこのスピーチでは語られていません。トルコで長期拘束されているキリスト教福音派のアメリカ人牧師の釈放を求めるアメリカとトルコの間での貿易戦争は特にこの1週間でエスカレートしてきました。キリスト教福音派はトランプ大統領にとって重要な支持層です。その教父であるAndrew Brunson牧師はテロ組織支援などの疑いでトルコで長期拘束されています。
これに対する制裁として、トランプ政権は先週金曜日に経済制裁を開始しており、鉄鋼への関税を2倍の50%に、アルミニウムへの関税を20%へと高めました。
アメリカの国家安全保障問題担当大統領補佐官であるJohn Bolton氏はその後、トルコのSerdar Kilic駐米大使とホワイトハウスで会談し、Brunson牧師の解放について語ったのですが、どちらも引き下がらずに会談が終わったようです。エルドアン大統領は、アフガニスタンにおけるアメリカの戦争にもトルコは支援をした、と過去の支援行為をアピールしています。また、アメリカはトルコに対して陰謀を展開しており、リラの暴落も論理的に説明がつかない、とも述べました。
「トルコのハイテク製品を世界に」
トルコを訪れる観光客たちはこのリラ暴落を利用して、シャネルやルイ・ヴィトンといった高級プロダクトを買い漁っているようです。米ドルを売り、リラを購入するように自国民に訴えるエルドアン大統領ですが、リラは継続して価値を下げています。今年だけでリラは40%下がり、この月曜日だけでなんと10%も価値を下げているんです。
「トルコはすぐに、ハイテクプロダクト、デザインプロダクトを世界に向けて売るようになる」と述べるエルドアン大統領。今回の対立がある前はトランプ大統領とエルドアン大統領は比較的良好な関係を保っていました。権力基盤を固めたトルコ当局に対してお祝いの言葉を送ったことすらあったんです。
国務省とトランプ大統領下のホワイトハウスはこの一連の動きの中でしっかりと連携を取れています。通常であれば国務省とホワイトハウスは連携をとって動くものですが、トランプ政権下では「この光景は久しぶり」と新鮮な気持ちを隠しきれません。なぜロシアによる選挙介入だと連携がすぐさま取れなくなるのか、不思議ですよね。
国務省のHeather Nauert氏は8月9日の段階で「我々が欲しい成果とは、Brunson教父が家に帰ることです、とだけ述べておきます」と発言しています。エルドアン大統領は貨幣価値の下落を指して、「この時点で、私達が払っている犠牲がある」と言った上で、「トルコに経済戦争を仕掛けてくる側が払うことになる犠牲もあるだろう」と警告しています。
source: Hurriyet Daily News and TRT World Livestream