Nikonのフルサイズミラーレスカメラ「Z7」「Z6」を触った印象:ソニーの苦手な分野を磨きまくってきた

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  • author 武者良太
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Nikonのフルサイズミラーレスカメラ「Z7」「Z6」を触った印象:ソニーの苦手な分野を磨きまくってきた
Image: Nikon

型番のZは、やはりαに対してのアンサーでしょうか?

ニコンユーザー、ニコンファンから待ち望まれてきたフルサイズミラーレスカメラ「Nikon Z7」「Z6」がついに発表されました。軽くてコンパクトボディにボディ内手ぶれ補正と、刷新された大口径の「Zマウント」を組み合わせた姿は、他メーカーのオーナーも気になる存在でしょう。

今回は発売に先立ち、Nikon Z7/Z6を触る機会を得ました。そのファーストインプレッションをお届けします。

【速報】Nikonがフルサイズミラーレスカメラ2機種「Z7」「Z6」を発表! 新しい「Zマウント」を採用

Nikonのフルサイズミラーレスカメラが2機種、発表されました。名前は「Nikon Z7」と「Nikon Z6」です。本日13時より行なわれている...

https://www.gizmodo.jp/2018/08/nikon-z7-z6-revealed-1.html

詳しいスペックなどは、こちらから。

43万円。Z7は強気の値付け

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Image: Nikon
左は「Z6」、右は「Z7」

まずお伝えしたいのが、「Z7」と「Z6」の違いです。Z7は4575万画素という、D850相当の解像度がある高画素モデル。Z6は2450万画素でD750相当の解像度ですが、秒間約12コマと連射力に優れ、高感度にも強いモデルとなります。

それにともない、お値段にも差があります。Z7は44万円前後、Z6は27万円前後のプライスとなります。Z7のライバルはソニーα7R IIIで、Z6はα7 IIIを見据えたオールラウンダーと見ましたが、Z7に関してはかなり強気の値付けですね。

というのもセンサー、AF、連射性能などが違うだけで、ボディそのものの形はZ7とZ6は同じですから。D850を中心とした上級機が売れているニコンだからこそのチャレンジなのでしょうか。それともZ6の戦略的リーズナブルさに注目すべきでしょうか。

小指が余らないグリップ

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Image: Nikon

外観上の最大の特徴はグリップ部。シャッターボタン部がオリンパスE-M1 MarkIIのように上に引き上げられており、中指~小指で握るグリップ面積も伸ばされています。

早速握ってきましたが、指の収まりのよさも握りやすさもいい。手袋はXLを選ぶ僕であっても小指が余りにくい。背面には親指の付け根部分に確固としたサムグリップがあり、手の中に収まるという安心感があります。

物理ボタンも右側に集中しており、右手でほとんどの操作ができるようになっていました。

握りにくさでα7シリーズを諦めてきた方でも、Z7/Z6は納得できるはず。さすがハンドリングにこだわり続けてきたニコンだと感じますね。

フランジバックはNikon 1より短く、マウントは大口径

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Image: Nikon

レンズマウント口径は大きければ大きいほど、そしてフランジバックは短ければ短いほどレンズ設計の自由度が上がります。ニコンは古くから46.5mmのフランジバックをもつFマウントを使ってきたおかげで、フィルム時代のAIレンズも自由に扱える反面、44mmとマウント径が細いために明るいレンズが作れないというジレンマに陥っていました。

今回、マウントは一新。Z7/Z6には、あらたに「Zマウント」という55mm径のレンズマウントが採用されました。ソニーEマウントの46mm、キヤノンEFマウントの54mmを超える存在ながら、適度な重さ(共に本体のみで約585g)・大きさのボディに収めたのは高く評価できます。

フランジバックは16mmで、ソニーEマウントの18mm未満。いや、1インチセンサーを使っていたNikon 1の17mmよりも短いところに驚き、あり。

35mmの単焦点、恐るべし…

マウントが変わるということは、レンズラインナップも変わるということ。Z7/Z6は上級機ということもあり、レンズもしっかりと作り込まれたものがリリースされます。

同時に発表されたレンズは3本。キットレンズとしてセット販売もされる「NIKKOR Z 24-70mm f/4S」、単焦点の「NIKKOR Z 35mm f/1.8S」、「NIKKOR Z 50mm f/1.8S」です。レンズ末尾のSの文字は、ナノクリスタルコートを用いるなど、ハイグレードなレンズを示すもの。キヤノンにおけるLレンズ、ソニーにおけるGレンズに位置するものとなるのでしょう。

・NIKKOR Z 24-70mm f/4S

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Image: Nikon

アタマのなかで比較したのがAF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR だからかもしれませんが、「NIKKOR Z 24-70mm f/4S」は細く、小さく、軽く、これまたハンドリングがしやすいレンズでした。ただ、動画撮影用のシネレンズほどではありませんが、ズームリングのトルクが強く、重いかな? 慣れの問題かもしれないんですけどね。

・NIKKOR Z 35mm f/1.8S

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Image: Nikon

「NIKKOR Z 35mm f/1.8S」は…ちょっと、僕の知る35mm前後の単焦点レンズのなかではNo.1かもしれません。撮影後の画像をパソコンのディスプレイで確認したわけではなく、あくまでEVFと「Z7」のディスプレイで見ただけなのですが、ピントが合った場所からの前後ボケのグラデーションが自然なんです。撮る気にさせるレンズなんです。

急激にボケることはなく、かといって1.8というF値を感じさせないくらいに前後を整理して、被写体を立体感たっぷりに浮き立たせてくれる。フィルムライクなところもある気がしてきた。ニコンF3とAI Nikkor 35mm f/1.4Sのように、Z7/Z6と「NIKKOR Z 35mm f/1.8S」は、マストな組み合わせとなるかもしれません。

・NIKKOR Z 50mm f/1.8S

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Image: Nikon

「NIKKOR Z 50mm f/1.8S」も、いい。個人的に50mmの画角が好きで、50mmや55mmのレンズを集めているくらい。ボケ味よし、ピントのシャープさよし。良質な標準レンズです。ですが、価格を考えると2万円台の「AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G」か、5万円台の「AF-S Nikkor 50mm f/1.4G」でいいかもと思えちゃう。

重さも気になるところ。「NIKKOR Z 50mm f/1.8S」は430gですが、「AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G」は約185gでAF-S Nikkor 50mm f/1.4Gは約280g。100gを超える重量差となると、軽いというミラーレスのメリットが感じられなくなります。もちろんナノクリスタルコートを使い、Z7の4575万画素を活かせるクオリティに仕上がっていることは間違いなく、パソコンで等倍表示したら差がでるのでしょうけど!

いずれにしても、もっとじっくりと使ってみないとわからない。ショールームで展示される日を一日千秋の思いで待ちましょう。

・NIKKOR Z 58mm f/0.95 noct

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Image: Nikon

そしてマウント径拡大のメリットを活かした、58mmで0.95という超絶明るいノクトニッコール「NIKKOR Z 58mm f/0.95 noct」も開発中と発表! 2019年発売予定。いやあ、いったいおいくらになるのでしょうか。

旧来のレンズも使える純正マウントアダプタ

古くからのレンズ資産がめっちゃくっちゃ多いニコンです。「マウントアダプターFTZ」もリリースされます。

AF対応レンズはAF-P、AF-S、AF-I。DXレンズはクロップ状態で使えます。Ai-AF、Ai-P、PC-Eはマニュアル操作となります。

Aiレンズも使えますよ。非AiはDf以外の一眼レフと同じく非対応。ニコンの場合、非対応であっても一部のレンズが使えるモデルがあったように、Z7/Z6+マウントアダプターFTZ環境でもイケるものがあるかも? ただし自己責任で!

…Micro-NIKKOR-P・C Auto 55mm f=3.5が使えたらいいなあ...。

EVFは見やすく違和感がない

一眼レフから乗り換えるユーザーにとって大事なのがEVF(電子ビューファインダー)ですが、これが見やすいんです。遅延も少なく、EVFをのぞきながらレンズを振っても描写はスピーディ。

スペックとしては0.5インチ有機EL(OLED)の369万ドットで、フレームレートも高めに感じましたね。

AFフォーカスポイントはZ7が493点、Z6が273点

センサーの解像度に合わせているかのように、フォーカスポイントにも差があります。共に新開発のハイブリッドAFが搭載されますが、「Z7」のAFは493点、「Z6」は273点。なおカバー率は90%です。

Z7を触ってみたところ、フォーカスはしっかりカッチリと合います。暗い部分だと迷うのは従来の一眼レフと同様ですが、ミラーレスのなかではイケるほう? D850と同じくらいという印象を受けました。

このあたりは複数のレンズで、いろいろなシチュエーションでテストしてみないと判断できないために、日常的なシーンであれば違和感ないし快適だった、と記しておきます。

手ぶれ補正はボディ内5軸+レンズ側同時駆動で最大5段

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Image: Nikon

ついに、ニコンボディも手ぶれ補正を載せる時代がやってきました。Z7/Z6はイメージセンサーシフト方式で5軸の手ぶれ補正機能が搭載されます。FTZを介して従来の手ぶれ補正つきのVRレンズを装着した場合、レンズ側の手ぶれ補正も効きます。

効果は最大5段。ボディ内手ぶれ補正が効く動画&スナップのシチュエーションも、レンズ側手ぶれ補正が効く望遠撮影も、共に効果を発揮してくれるでしょう。

「Z7」のISOは64-25600、「Z6」は100-51200

オールラウンダーである「Z6」は高感度にも強いモデルでISO51200が設定できますが、ベース感度の差は1段だけで「Z7」もISO25600が設定できます。そして低感度側も1段低いISO64が使えます。

拡張感度はZ7がISO102400、Z6がISO204800まで設定可能ですが、この状態でのノイズの出方はどうなのか気になりますね。

タッチパネル操作は残念なところがあり

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Image: Nikon

ディスプレイはタッチ操作によるフォーカスポイントの移動が可能になりました。デジカメの進化において、とても重要なポイントですよね。

ニコンはメニューのカテゴリも縦となっているため、上下にフリックしながらの項目選択がしやすくてGOOD。タッチパネルありきのUIを作り込んできたんじゃないかって思えるくらいです。

しかし! EVFをのぞきながらのタッチフォーカスができないのは残念極まれり! ジョイスティックがあるとはいえ、そして鼻で画面をタッチしてしまうというトラブルを起こさないためなのでしょうけど、本当に残念です。

他にもいろいろな意味で気になる性能が満載

4K撮影時はZ7のみDXクロップされる様子です。動画目的であれば高感度に強いZ6のほうがいいでしょう。解像度は4K/30fps、1080p/120fpsで、動画撮影時は電子手ぶれ補正機能も働きます。

またマニュアル時はフォーカスピーキング表示が可能です。EVFでもディスプレイでも見やすく扱いやすいので満足できます。

防滴防塵対策はD850相当ですって。ゴミ取り機構もDシリーズと同等のクオリティのようです。

お、Wi-FiはPCにもつながりますか! テザー撮影がしやすくなりますね。また、同梱のバッテリーはUSB充電が可能です。ただし電源OFF時のみとのこと。

メモリカードはZ7もZ6もXQDです。しかもシングルスロットです。Z6であってもSDカードは使えません。また、ディスプレイはチルト構造で、横位置撮影にこだわりがあるかのよう。

などなど。あ、瞳AFはありません。良きにしろ悪しにしろZ7/Z6は個性的なミラーレス。残念ながら、ゲームチェンジャーとなりつつあるα7シリーズの利点を上書きするようなモデルではありません。むしろα7シリーズが苦手な分野を磨きまくってきた印象を受けます。

Nikon 1というローエンド開拓をあきらめ、Zで意気込みも新たにハイエンド市場にチャレンジするニコン。Z7もZ6も、フルサイズミラーレス初のモデルとしては、いい作り込みがされている製品だと感じました。

Source: Nikon