2018.09.01
# 裏社会

「高齢者専用風俗店」で働く女性たちの、本音と胸の内

高齢者の性を巡る旅④

前回は、日本でただ一つ、60歳以上の男性しか受け付けない「こころあわせ」というデリヘルの経営者に話を聞いた(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56593)。

本番をしないというのは、女性たちはどういう性サービスをするのか。本番をしなくて、客たちは満足するのか。客が女性の嫌がることを強いる、などというトラブルは起きないのか、などと具体的に問い、いくつもの興味深い、そして意外な発見があって、私はどんどん話に引き込まれていった。

そこで、今回は「こころあわせ」で勤務している女性たち(いわゆる、デリヘル嬢)に、どういうきっかけで「こころあわせ」の仕事をすることになったのか、本番のない性サービスとは具体的にどういうことをするのか、など女性に怒られるのではないかと心配しながら、聞きたいことのすべてを聞いた。私は、デリヘルの世界というものをまったく知らず、それでいて興味に溢れている世界だったからである。

「現代ビジネス」の編集者が用意してくれた会議室で待っていると、中肉中背で、美人ではあるが、およそ水商売のイメージとはほど遠い、固い企業で働いている感じの、いかにも真面目そうな20代の女性が現われた。

地味なワンピース姿で、「よろしくお願いします」と頭を下げた。私の方が言わなければならない言葉であった。

 

業界に入ったきっかけ

彼女が椅子に腰を下ろすのを待って、私は、いきなり問うた。

――こういう仕事を、お始めになった動機というか、きっかけは、どういうことだったのですか。

「単純に、こういった普通ではない仕事に興味があったといいますか……興味本位です。最初は」

――仕事として、男性に性的サービス、つまり本番以外の、いろんなセックス行為をすることに抵抗はなかったのですか。

「何でしょう。珍しい仕事をしてみたいというのもありまして、性的な仕事に興味を持っていました。だけど普通のお店は恐いということがあって、『こころあわせ』だったら、お客様も高齢の方ばかりですし、お店のほうもしっかりした感じで安心できるのかな、と思いまして……」

――その前は、別の仕事をされていたのですか。

「その前というより、今も昼の、普通の仕事をしているんです。かけもちしているのです」

――なるほど。それで「こころあわせ」はどうやってお知りになったのですか。

「インターネットで探しておりまして、いろいろ、お店がある中で一番安心して働けそうなお店を選びました。お客さんが60歳以上の方限定で、本番行為はしないという説明をスタッフの人たちから受けたのです」

――こういう仕事は、「こころあわせ」が初めてですよね。「こころあわせ」のスタッフは、お客さんに、具体的にどのような性サービスをするのか、教えてくれるのですか。

「プレイについての説明は一切ありません。普段、プライベートでするような感じでいいよ、と。初々しさが大事だ、と」

――そうか。いろんなテクニックよりも初々しさがいいんだ。そういうことですか。それで、店から、仕事のときは、どういうかたちで頼んでくるのですか。

「たとえば、お客様から何日の何時から、どこを利用したい、とお店に言ってくると、お店から契約している女性全員にメールが送られて『この仕事に行ける人は返信してください』と言ってくるのです」

――それで、女性の方はどう対応するのですか。

「たとえば、私の都合の合う時間でしたら、『行きます』と返信して、その中で、たぶんお客様が選ぶんだと思いますが、それで選ばれた人に『いつどこに行ってください』ということになるのです」

――お店からの仕事のメールは、どのくらい前ですか。2~3日前とか、1週間くらい前とか。

「それは、いろいろで、たまには1カ月ぐらい前の予約というのもあります」

――なるほど、そのときに、お店からは、お客さんについて、どの程度説明があるのですか。

「それが、あまり具体的な説明はなく、日時と場所とお名前ぐらいです」

――何歳ぐらいで、どういうキャラクターの人かはわからないわけですね。

「それはまったく、お会いしてみるまでわからないです」

――ちょっと不安ですね。

「そうですね。だけど高齢の方で、みなさんお優しい方々です」

――なるほど、だから「こころあわせ」は安心できるわけですね。ところで、どういう所でお会いになるのですか。

「お客様がラブホテルとか、ビジネスホテルに先に入って、後から入ることが多いですね。あるいは駅で待ち合わせすることもあります」

――だけど、駅だと、相手がわからないのではないですか。

「お店からお客様の携帯の電話番号を教えていただいていて、そこに電話をかけるのです」

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