「まだ子犬だから」っていうのは違くない?:ソニーaiboのハンズオン

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「まだ子犬だから」っていうのは違くない?:ソニーaiboのハンズオン
Image: Alex Cranz/Gizmodo US

小一時間のふれあいだけじゃ、伝わらないんですね。

子どものころ、ほしかったですよね、犬。でも親は絶対に許さない。そんな私をなぐさめてくれたのはおもちゃの犬でした。首にヒモつけて引っ張りまわしましたよ。懐かしい思い出です。アレルギーがある、虫や病気が心配、散歩が面倒…そんなご家庭にぴったりなのは、ロボット犬なのではないでしょうか。アレルギー、虫も病気もなし、散歩もいらない。まさに夢のようなペットです。

ソニーのaibo開発チームにインタビュー:「何ができるか」ではなく「何を実現するか」。愛されプロダクトに宿したAI技術を探る

「かわいい!」の内側にはいろんなものが詰まってます。AIとか愛とか。私たちを癒してやまなかったソニーのペットロボット「AIBO」は2006年、惜し...

https://www.gizmodo.jp/2018/03/aibo-team-interview-ai.html

ロボット犬の代名詞的存在である、あのソニーのaiboの新型が米国でお披露目されました。そこで遊んでみた米ギズモードのAlex Cranz記者によるめちゃ辛辣なハンズオンレポート、いってみましょう~。


あまりのかわいさに、時間を忘れて見入ることしばし。

後ろ脚で立つaiboが、しっぽを振るとOLEDの目がくりくりと動く…。ですが、ひとしきりデザインに感心すると、にわかに湧いてくるなんともいえない感情に気づきます。

一体このロボット犬は何をしてくれるのかな。

米国でのaiboのローンチイベントで遊んでみたんだけど、この新型aibo、特にこれといったすごい動きをするわけでもありません。すごい技を持っているわけでもありません。ソニーの担当者さんが、しきりになでてみろって勧めてくれるんでなでたところ、目を閉じて口が開き、うれしそうな表情。…うーん。それだけ? 触れられたことに反応してはいるんだけど、私自身を認識しているわけでもなさそう。

同じようなロボットトイ、Anki(アンキ)のCozmo(コズモ)と Vector(ベクター) で受けた楽しい体験とはくらべものになりません。ソニーの担当者さんは「自分の犬として設定すれば認識するんだけどね」となだめてくれました。あれれ、そうなの? かわいさは満載なんだけど、どうもaiboの動きや機能はどうもまだまだって感じですね。

担当者さんはaiboに「お手!」と命令。でもaiboはしっぽを振りながらうろうろするばかり、ぜんぜん言うことを聞いてくれない様子。「まだ子犬だから…」なんて言い訳してたけど、担当者さんの顔は引きつり笑い。

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Image: Alex Cranz/Gizmodo US

まだまだ子犬だから…

aiboが付属するおもちゃを見ているので「おもちゃで遊ぶことができるのかな」と聞いてみたけど、どうもそれもできなそう。「まだ子犬だから」とまたもや言い訳。

一緒に遊べば遊ぶほどフラストレーションがたまっていきます。aiboが米国以外で発売されてからかれこれ8カ月も経つのに、飼い主を見上げながらしっぽを振ることしかできないなんて、興ざめ。競合ロボAnki Vectorの10倍という値段を考えれば、なおのこと。

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Image: Alex Cranz/Gizmodo US

ソニーによれば、Ankiのロボットと同様、aiboは人の顔を記憶して、音声コマンドに反応、そして人の感情を理解するとふれこんでいます。机の上で飼える、手のりサイズのVectorと違ってaiboは家中を歩き回ることができ、一応、抱っこだってできちゃいます。まあ、私はたぶんまだロボットを抱っこするほど悲しい人にはなっていませんが。

寂しかったら抱っこしてみるのも悪くはないとは思います。でもaiboを抱っこした感触といったら、Netflixのシリーズの『ブラック・ミラー』に出てきそうな無感情な犬の抜け殻を抱っこしている感覚に近いんじゃないでしょうか。

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Image: Alex Cranz/Gizmodo US

それにしても、値段が高すぎる

遊んでいる最中、しきりにVectorと比べてしまっている自分がいました。かわいいし、音がするし、まあ遊べるんだけど、おもちゃに毛が生えた程度。なんか足りない。絶対的になにかが欠けているのです。値段だけはいっちょ前なaibo。Vectorは単なるコンパニオンとしてだけでなく、少なくともスマートホームとしての機能でユーザーの役に立とうとしてくれました。天気も教えてくれるし、照明も灯してくれます。 ロボットのソフトウェア開発キットであるSDKはオープンSDKなので外部デベロッパーがいろんな機能を開発できるようになっています。

それに対し「インスピレーションをかきたてる」というふれこみのaiboはSDKなし。知らない人を認識する機能や家の人に警告してくれるような機能もリリースされていません。また、リリースのめども立っていません。だから、面白いトリックをやらせるような開発もできません。ソニーは「創造性」を大切にしているなんてうたってはいるけど、所詮ソニーという壁の中だけのことなのです。

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Image: Alex Cranz/Gizmodo US
鼻がカメラになってます

そんなことを考えると、おもちゃと3年間保証しかないAIクラウドサービスつきでも、2,900ドル(日本価格19万8000円)も出してこの犬を家に連れて帰りたいと思うんでしょうか。ハードウェアはたしかにすごそうです。でもソニーが目指している「すごい」ロボットにはまだまだ程遠いとしか言えません。少なくとも、これはデモを見て私が感じたことでしかありませんが。一生懸命遊ばないと、あまり遊んだという実感すらわかないのです。だったら本物の犬を飼ったほうがよっぽどよいのでは? カーペットにおしっこのしみがつかないのが唯一の救いかもしれませんが。

Source: SONY