HTC U12+ レビュー:「速い」という言葉がこんなに似合うスマホはない

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HTC U12+ レビュー:「速い」という言葉がこんなに似合うスマホはない
Photo: 小暮ひさのり

愛され要素が詰まった優等生が来た。

フラッグシップはメーカーの哲学が詰まっています。今回「HTC U12+」を実生活のなかでしばらく利用してみたのですが、僕がこの端末から感じた哲学は「技術と最速への挑戦」。そこへ挑む姿は斬新で、かっこよくて、そしてちょっぴりドジで。

以前「HTC U11」を使ったときは、こいつ速いぞ!的なものを感じましたが、HTC U12+はただ1世代進化して、速度を上げただけじゃなかったのです。

HTC U12+

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Photo: 小暮ひさのり

これは何?:握って操作できる、FeliCa搭載のSIMフリースマホ

価格:10万2600円(税込)

好きなところ:さいっっっこう!にクールなデザインと、キビキビな動作速度、自然で美しいカメラ、大迫力な画面

好きじゃないところ:押し心地のないボタン。エッジ部のタップ操作が僕は好きになれなかった

半透明のバックパネル! 端末の仕上がりは最高だ!

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Photo: 小暮ひさのり

ワクワク感を感じさせるツルツルで半透明デザイン。3色のカラバリのなかでも「トランスルーセントブルー」これが一押しです。

他のカラーが霞んでしまうほど、メカメカしくてガジェッティーで最高にクールなスケルトン仕様。男子ってこういうのが好きなんでしょ?という意図がズッキュンズッキュン伝わってきます。

ああ、好きだよ! こういうのだよ!と、前のめりになるくらいデザインは好き。

カラバリの中にある「セラミックブラック」も「フレームレッド」もキレイな色だけど、透けてません。この基板が見え隠れするサイバーでブルーな攻めっ気の前では霞んでしまうでしょう。僕が選ぶならもちろんこれだし、ほかの人におすすめするなら、やっぱりコレ。そしてこの前衛的なデザインをケースで隠すなんて邪道の極みです。しっかりじっくり見せつけて幸せになってください。

…って思ってたんだけど最後まで読んでね。

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Photo: 小暮ひさのり

画面は6インチでQuad HD+(2,880×1,440px)、537ppi、HDR10もサポートしています。

Super LCDの液晶は発色も良く、大画面と高ppiと相まっては迫力も美しさも文句なし。ファブレットと言っても良いインチサイズなのですが、縦長だけど狭額縁のおかげで嫌なデカさを感じません。個人的にもスマホ大画面化はウェルカム。画面のデカさは使いやすさに直結すると思っているフシがあるため、このサイズは使いやすい部類です。

そして、画面の上部にノッチなし。ノッチがあったほうが「イマドキ感」があるのも確かですが、なんでもかんでも流行りにライドしてノッチノッチ×nする必要なんてありません。HTC U12+に関しては、フロントカメラもデュアルなのでそもそもノッチ化を想定していないのでしょうね。また、ノッチじゃなくても大画面化できてるから別にこれでいいじゃん? といった思いもあるのかも。

実際に手で持った感じですと、大画面ゆえに重さはそれなりにずっしり(188g)です。凝縮している感がすごい。お肌も必要以上にスベスベなので、落とさぬようにしっかりギュッと持ちましょう。でもギュッと持つと、とある革新的な機能が使いにくくなるのは後述します。評価すべきは6インチをこのサイズ感に収めたところです。にじゅうまる。

物理ボタンを廃止するのはまだ早かった…

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Photo: 小暮ひさのり

本体はぬかりないです。でもね、ボタン類は正直言うとイマイチです。

今回からボタンはすべてセンサーになり、物理的な押し心地がなくなりました。そう、ボタンは押しても凹まなくて、すべてのフィードバックはバーチャルな振動で返ってきます。そして思ったよりも強く押さないとダメで、ボタンを押したときの心地よさの再現度は道半ばであるのが現状です。

とくに連打が効かないのが個人的にいただけません。 素早く3レベル分音量を下げたい。なんていうときに柔軟に対応できないのです。慣れると違和感がなくなるのかもしれませんが…。

キュンキュンな性能。すべての操作にストレスを感じさえない、THEフラッグシップ

操作の快適さ、スペックに関しては何ひとつ不満はありませんね。それもそのはず、Snapdragon 845(8コア、最大2.8Ghz)プロセッサに、RAM6GBROM128GBで、OSがAndroid 8.0 Oreoといった構成。まさにフラッグシップといったキュンキュンな仕様。ベンチマークは「Snapdragon 845 ベンチマーク」とかでググって貰いたほうがいいと思うので割愛しますが、一言で表すなら現在最速級の構成。といったところでしょうか。

Google Chromeでのブラウジングも高速ですし、ちょっとした画像加工でもキビキビと。使用感はスペックから想像できるままの性能で、快適そのもの。そしてその速さは端末を「使い始めるとき」までも。なのです。

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Image: 小暮ひさのり

認証方式は、顔認証と指紋認証の両方が利用できます

顔認証は本当に爆速で、端末を見つめるだけでタイムラグをほとんど感じさせずにロック解除されてビビります。これまでいくつものスマホの顔認証を試してきましたが、僕が知るかぎり「HTC U12+」が最速。お前本当に見ているの?と疑いたくなるくらい。でも、ちゃんと僕以外では認証されないのです。やりおる。

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Photo: 小暮ひさのり

端末背面にある指紋認証も速い!ただしレビューではほとんど使うことはありませんでした。それだけ普段のスマホ利用シーンにおいて、顔認証でスムーズにロック解除できたのです。おそらく冬場になるとマスクを装着するため、こちらがメインのロック解除手段になってくると思われます。そういう意味では2種類の認証を併用できるのはありがたや。

イノベーティブに進化しなかったけど、(理論上)最速な「エッジセンス2」

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Photo: 小暮ひさのり

HTC Uシリーズの代名詞的な機能が、端末をぎゅっと握って操る「エッジセンス」です。カメラやGoogle アシスタントを起動する斬新な機能として前モデル「HTC U11」にて初搭載されました。その後、GoogleがHTCのスマホ事業を買収したこともあり、Active Edgeとして「Pixel 2」にも移植。

そしてU12+では、エッジ部のダブルタップ操作にも対応した「エッジセンス2」へと進化しました。今まで握って起動していたオプションをタブルタップで起動できるようになったので、使いこなせれば便利だと思います。ただ、その新しく独創的なアクションが、現状ではショートカットや、ランチャーとしか活用されていないのは役不足なように思えてなりません。

いや、別に「こうするとイノベーティブ!」といった良案があるわけじゃあないんですけど、せっかく新しい操作(ボタンの代用となるナニカ)が追加されたんだから、その動作から新しいスマホ体験への出会いがあっても良いんじゃないかな。って期待したわけです。HTC U11から世代が進んでも、できることは既存の操作の拡張まで。使いこなせれば便利の域を出なかったのが残念です。

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Photo: 小暮ひさのり

上で言ったように、今回からの新機能として「エッジ部のダブルタップ」という動作パターンが増えました。「握る」じゃなくて「タップ」です。これもまた、特定の機能を割り振ったり、ランチャーを起動させたりできます。ショートカットのコマンドが1つ増えたというわけですね。ただ、このタップ場所が個人的に納得できません。「握る」を感知するエリアと同じなのです。

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Photo: 小暮ひさのり
こうしてホールド性が高い持ち方をすると、親指ではタップできず、人差し指・中指もほとんど動かせません

スマホって落としたくないから、ガッツリと手のひらのでしっかりと持つじゃないですか?

HTC U12+は重みありますし、長さもあるし、ツルスベお肌。ゆえにしっかりとホールドします。そうなると親指がセンサー範囲から出てしまって、タップするためには持ち直さないといけないのです。ならば!と人差し指などでタップしようとしても、端末の幅があるので、ピコピコ動かせるだけでタップ操作はできません。

あああああああ、惜しい。コンセプトは確かに伝わるんだけど、このドジっ子っぷりはひたすらに惜しい。もう1段階、なにか閃きが走れば、これらのアクションって、すごくワクワクする体験が得られそうな気もするんですけどね。

…いや、でもエッジセンスがダメってわけじゃないんですよ。

使いこなせれば確かに便利でスマートなんです。カメラ起動なんて、理論上最速です。エッジセンスのショートカットにカメラを割り振れば、ポケットの中の端末を握った段階で、すでにカメラが起動します。これは、シーンによっては威力を実感できます。

たとえば、外出先。すばやくワンシーンを収めたいというときには、「ポケットから出す→カメラを起動する→カメラで撮る」。という一連の動作の中で無駄な動きが生じません。エッジセンスは一分一秒を争って、スマホの利用シーンを効率化したい!といった願いを満たす可能性のかけらです。

使いこなせれば最速、どれだけ効率化できるかが腕の見せどころ。ギークでカスタマイズ好きな方は、オレ流にカスタマイズして、HTC最速伝説を築き上げてください。

U12+を使っていると「もう一眼カメラは持ち歩かなくてもいいよね」って思わせてくれる

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Photo: 小暮ひさのり

カメラは、最近のトレンドに習って二眼式。メインカメラは12MP+16MPで、片方は2倍のズームカメラ。デジタルと合わせて10倍までズームできます。フロントカメラも二眼で8MP+8MPという構成。

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Photo: 小暮ひさのり

このカメラが今回のコダワリポイントだと思うのですが、僕の中の評価もすごく高いです。

細部のディティールまで潰れることなく、しっかりと表現されていて、明暗差のあるシーンでもオートHDRが自然に世界を再現してくれます。最近のスマホにありがちなソフトウェアによる強調は比較的控えめで、自然光下においては、見た目に近い世界を収められる印象です。

設定しだいではRAWでも撮影できますし、こりゃあ風景撮りが捗りそうなカメラなこと。また、フォーカスを合わせたときの「ピピピッ」というサウンドもGood。カメラを構える心地よさが伝わってきます。

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Photo: 小暮ひさのり

10倍ズームでこちら。いや、アリでしょう! これだけ寄れればアリのアリアリでしょう! 周囲の明るささえ確保されていれば10倍でも手ブレる悲劇は少なめですし、十分に実用的。

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Photo: 小暮ひさのり

また、とくに気に入ったのが薄暗い室内などでの暗所撮影。HTC U11でも暗所は強かったのですが、そのイズムは引き続き継承されていて、このカメラもまた暗所への強さが際立っています。

光量が少なくて周囲が見辛いような場所でも、手ブレせずにしっかりと撮れます。1ショット目は「いや、このくらい最近のカメラなら撮れるでしょ?」とか思ったんですけど、2ショット、3ショットと重ねるうちに、あれ。これはキレイだぞ…と。そして、拡大してみたらこれがまた、ディティールの再現度にびっくらこいたわけです。

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Photo: 小暮ひさのり

夜間撮影でも明るさは際立ちます。見た目以上に明るさが強調されるので好き嫌いは分かれるところ。個人的には若干明るすぎない? とも思えますけど、じゃあ、逆に暗い夜景写真はキレイなのか?って言われるとう〜ん…。ってなっちゃうところ。

多重露光を使わず、カジュアルに構えて撮るだけで、夜景を明るめに捉えられる。と考えれば、この特徴はアドバンテージでもあり、夜間スマホ写真下手くそ選手権へのエントリーも減ると思うのです。ま、人間の見た目通りに世界を収めたいっていうならば、プロモードでISOやシャッタースピードを調整できるので、そちらをどうぞ!

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Photo: 小暮ひさのり

ポートレートのボケ味は、すごく自然に仕上がります

今までいろいろなスマホのポートレートモードの作例を見てきましたが、仕上がりの自然さは一二を争うくらいよく出来ていて、正直びっくり。人物と背景の境界なんて自然すぎて、本当に一眼カメラで撮ったかのような風合いに。

インカメラでもポートレートが効くのも特徴的ですね。ビューティーモードも併用できて、お肌もつやつやになります。ガジェッティーなスタイルなスマホなので、どちらかというと男性の方に好まれそうな端末ですが、男子だって盛りたいしキレイに撮りたいですし。インカメラでもポートレートは、アリアリです。

これまで、お出かけの際は子供の写真をキレイに残すのだ! 風景をキレイに残すのだ!という使命感に駆られてミラーレス一眼を常備していたのですが、U12+を使っていると、もう本当にスマホだけでいいんじゃないかなぁって気になってきます。そうすれば、荷物が800gくらい軽くなって、バッグのスペースに余裕ができて、僕の腰への負担が減るのです。カメラ性能の高いスマホに投資するというのは、きっとそういうことなのです

そして、残念なのは、この素晴らしいカメラが試用機でやがて手放してしまうということです…。本当にずっと手元に置いておきたいし、日々持ち歩きたい。

選ぶ理由の一つ。FeliCa対応の日本独自仕様

今の時代ハイエンド機を日本市場で売ると考えると、FeliCa対応は欠かせないところ。ちゃんと日本のニーズに沿ってくれているのは好感が持てますね。

SIMフリーでこのデザイン、この機能、このスペック、このカメラで端末の価格は10万2600円!と言われると「性能良いけど高いなぁ…」って思っちゃう。でも、日本向けにFeliCa積みました!という+αが加わることで、急に利用シーンが想像できて、「性能がいいスマホを、こういうシーンで使いたい!」といった体験ベースのワクワクへと差し替わって、値段の高さを吹っ飛ばしてくれている気がするのです。

高いが、古くならないスマホ

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Photo: 小暮ひさのり

性能も、できることも、操作系も、1ランク上を目指しました!といった、技術面への挑戦心を感じます

それに加えて、日本向けのモデルはFeliCa対応で市場ニーズもバッチリフォローしているあたりが、なんというか、ハンサムで頭も良くて人当たりも良い学年の優等生チックなヤツなのです。ちょっと空回り気味な特技もありますけど、それもまたチャームポイント。

スマートフォンのなかでは10万2600円は高いと思いますけど、機能を考えれば妥当なんです。

それどころか、これだけの性能を積んだハイエンド機で、FelicaやIP68の防滴でロケーションを選ばず使えて、日々のスマホを中心とした生活の快適さが1ランク上がる。そしてキャリアの縛りを受けないSIMフリーで買える。ということを考えると、HTC U12+には値段以上の価値があると思うのです。

性能としては向こう2年は乗り換えなしに戦い続けられるでしょう。そして2年使い続けると考えると、1日あたりたったの140円。その後も端末としての価値が残ると思えば、実質タダみたいなもんですよ。

ごめん、盛りすぎた。でも、端末の魅力は本当に高いと思います。あとはおサイフとの相談です。


と、ここまで書いてフィニッシュ!のつもりだったんですが、原稿が仕上がるまさにその数分前。座った時に、ズボンの前ポケットから滑り落ちるというショッキングな出来事があって、精神的に大きなダメージを受けました。辛い…。

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Photo: 小暮ひさのり

幸い画面は無事だったけど、角がちょっぴり削れました。男子諸君に警告です。この端末はズボンの前ポケットに入れたまま足を組んではいけません。スベスベ過ぎるのも困りものですね…。

せっかく最高でクールな基板アピールができる端末だというのに、そのスーパードヤスケルトンアピールを捨て、邪道へと堕ち、ケースをつけるべきなのだろうか? といった宿題が残されたわけです…。辛い。

あと、頑張って端末を手配してくれた編集部の山本くん、ごめん、スマホが勝手に落ちた。

えっ、これ読者プレゼントになるの?(編注:はい、なります)。

読者のみなさま、本当に申し訳ございません。海よりも深く反省しております…(ライター小暮)。

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Source: HTC