サイエンス

超絶粘性の高い液体をも極小サイズで出力できる「音響印刷」技術をハーバード大が開発


ハチミツのように粘度の高い液体をごく少量だけ出力することは粘性の高さゆえに困難でしたが、ハーバード大学の研究者が、音波を使うことでどんな粘性の液体であっても量を自在に調整して出力できる技術「Acoustophoretic Printing(音響泳動印刷)」を開発しています。

Printing with sound | Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences
https://www.seas.harvard.edu/news/2018/08/printing-with-sound

「Acoustophoretic Printing」がどのような技術なのかは、以下のムービーで解説されています。

Acoustophoretic Printing Summary - YouTube


液滴を作り出す技術は、インクジェットプリンターからドラッグデリバリー用のマイクロカプセルの製造に至るまで、幅広い分野で活用されています。


しかし、バイオポリマーの中には水の2万5000倍の粘度を持つ物質があり、粘性の高い液体をごく少量だけ出力することは困難でした。また、粘性の高い液体は温度によって粘度が変化することも、一定の量を出力することを難しくしていました。


ハーバード大学のジェニファー・ルイス博士の研究チームは、音波を使って液体の粘性や外気温に依存せずに滴下量をコントロールできる技術「Acoustophoretic Printing」を開発しました。


高周波サウンドによってまるで重力をキャンセルするかのように液滴を浮かせられるように、音波で物理的な力を加えることが可能です。


Acoustophoretic Printingでは、ノズル内で音波の振幅を変化させることで、粘性の極めて高い液体であっても、ノズル先端から切り離して出力することを実現しました。


音波の振幅が大きいほど、液滴のサイズを小さくすることが可能。振幅を制御することで、液滴のサイズを高精度にコントロールすることも可能です。


Acoustophoretic Printingによって、光学レンズや……


細胞を含んだ液体を出力可能。これは音波が液体内を通過しない特性から実現したもので、、Acoustophoretic Printingは生体細胞やたんぱく質などの繊細な物質でも安全に利用できます。


さらに、Acoustophoretic Printingは温度に依存せずに液体の出力を調整できるため、金属材料を精細に3Dプリントすることすら可能にします。


ハーバード大学はAcoustophoretic Printing技術の特許を取得済み。今後は、インクジェットプリンターだけでなく、医薬品を中心とするバイオテクノロジー分野や光学分野、食品など幅広い分野での活用が期待されています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
世界最長の実験「ピッチドロップ」の責任者が決定的瞬間を目撃することなく死去、これまでの流れのまとめ - GIGAZINE

10万円クラスの安価な3Dプリンターで人工心臓のパーツを自重で崩壊させずに出力する手法 - GIGAZINE

立体構造を次々と変化させられる3Dパズルとでも言うべき変形デザイン構造「reconfigurable materials」をハーバード大の研究者が開発 - GIGAZINE

音波でガン細胞を血中から安全に分離する新技術が登場 - GIGAZINE

磁場を変化させることで瞬時に形状を変化させられる折り紙構造ロボットを3Dプリンターで出力 - GIGAZINE

世界最小、注射針に収まるほど超極小のマイクロレンズが3Dプリンターで出力可能に - GIGAZINE

グラフェンを使って海水を淡水化する薄膜が安価かつ大量に生産できる可能性 - GIGAZINE

ターミネーター2のT-1000のような液体金属が3Dプリンターで出力可能に - GIGAZINE

超音波と磁力を組み合わせて細胞内を自由に動き回れる微小ナノモーターの製作に成功 - GIGAZINE

in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.