DJIのMavic 2 Pro/Zoomレビュー:ドローンカメラの新たな王者

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  • author Adam Clark Estes and Raul Alexander Marrero - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
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DJIのMavic 2 Pro/Zoomレビュー:ドローンカメラの新たな王者
Photo: Gizmodo US

どちらがお好み?

DJIから新たな折りたたみドローン「Mavic 2 Pro」と「Mavic 2 Zoom」が発売されました。ギズモード・ジャパンによるハンズオンでもかなりの好感触でしたが、米Gizmodoでもいろいろ撮ってレビューしています。実際どんな映像が撮れるのか、ご覧ください!

Video: Gizmodo/YouTube

DJIのMavicシリーズは、どんな人でもコンパクトなドローンでプロ級の航空写真を撮れる、という夢を掲げてきました。初代Mavicが「Mavic Pro」って名前なのも、そういう理由だと思います。

ただMavic Proには、多少の欠点がありました。でも今回登場した「Mavic 2 Pro」「Mavic 2 Zoom」、このふたつのMavic 2シリーズの場合、それぞれのモデルを特徴づけるカメラを後々交換することも可能ってことで、より面白いことになっています。デザイン面でも、細かいながら有意義なアップグレードがあり、Mavic 2シリーズはDJIが思い描いている夢に見合った内容に仕上がっています。

「Pro」と「Zoom」、これまでとの違いは?

でも、Mavic 2シリーズのふたつのドローンを一見しただけでは、先代のMavic Proとそんなに違うようにはみえません。Mavic Proよりも若干大きくなっているんですが、それでも重量は2ポンドほど(907g)に収まっています。空気抵抗を減らす新たな構造が取り入れられ、フライトがよりスムーズになるとともに、飛行時間は31分間にまで延びました。

新型2機種には、すべての方向に小さなカメラが搭載され、それによってDJI初の全方位障害物検知システムを実現。さらに大きなアップグレードは、1,450ドル(日本価格18万9000円)の「Mavic 2 Pro」において顕著です。というのも、ハッセルブラッドと共同開発した1インチのCMOSセンサーが搭載されているんですよ。

いっぽう1,250ドル(日本価格16万2000円)の「Mavic 2 Zoom」では、名前の通り2倍光学ズームと4倍デジタルズームが可能になっています。

Mavic 2シリーズ

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Photo: Gizmodo US

Mavic 2とは?:折りたたみ式ドローンで、新しいカメラを搭載したシリーズ

価格:1250〜1450ドル(16万2000〜18万9000円)

好きなところ:映像の素晴らしいクオリティと、撮影のオプション

好きじゃないところ:初代Mavic Proに比べて価格が高いこと


お値段の高いProとギミック倒れかもしれないZoomのどっちを選ぶかは悩ましいところ。ですが、ボディはどっちでも同じです。有料(価格はまだ不明)ですが、DJIのお店でカメラ部分だけ後から交換することもできるそうなので、その分ちょっと敷居が下がりますね。

Mavic 2シリーズの新しいカメラは、折りたたみドローンでのより美しい映像を独自に実現しようというDJIの方向性を体現しています。そのため、このレビューはカメラのクオリティが中心になりますが、飛ばし心地も素晴らしいので、その点も触れますね。

Mavic 2 Pro:大きなセンサーでディテールもまずまず

Mavic 2 Proの目玉は、その1インチのセンサーです。Mavic 2 Zoomや初代Mavic Proの1/2.3インチセンサーと比べると、約2倍の大きさです。

センサーが大きいと何がいいかを超ざっくり言うと、センサーが大きければビジュアル情報をより多く取り込めて、暗い場所でもより上手に撮れます。これまでDJIのカメラドローンのなかでは、同じく1インチセンサーを搭載した「Phantom 4 Pro」がハイエンドモデルでした。

でも、Mavic 2 Proのハッセルブラッドのカメラは、単にセンサーが大きいだけじゃありません。ダイナミックレンジは14段、被写界深度もより深くなり、絞りが調節可能になりました。またMavic Proでの動画撮影の最大ビットレートが60Mbpsだったのに対し、Mavic 2 Proは100Mbpsと、より高画質を追求することが可能になっています。

ここまで書いたのはスペック上のことですが、実際のテストでもこのスペックの高さがほぼ確認できました。暗い環境とかやたら明るい環境で一番顕著にクオリティが感じられ、センサーの小さいカメラでは失われたであろう微妙なディテールもとらえていました。

そういう意味で、Mavic 2 Proのカメラは小さなドローンカメラというよりデジタル一眼レフカメラのようです。絞りをf/2.8〜f/11に調節できることで、工夫する余地が生まれたともいえそう。たとえばこの夕景写真の暗い部分を見てみると、暗くはあるのですが建物のディテールがかなりわかります。

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Photo: Gizmodo US

下の写真では逆に、水に反射する光を見てみてください。こういう光は、大したことないカメラだともっと飛んでしまうものです。ただ太陽の近くでは雲の質感が突然消えて露出しすぎになっていて、ハイライトロールオフにも限度があることがわかります。それでも地平線のディテールはまだ写っています。

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Photo: Gizmodo US

1インチの大きなセンサーと調整可能な絞りだけでも、Mavic 2 Proのカメラはデジタル一眼レフに近づいていますが、ここに秘伝のタレも加わっています。Mavic 2 ProのカメラにはHasselblad Natural Color Solution(HNCS)なる機能が搭載されており、独自のカラープロファイルによって色をより正確に表現できるんだそう。この機能はデジカメでアナログフィルムカメラに近い写真を撮るためのものらしく、DJI独自の方式。詳しい仕組みはわからないのですが、たしかに自然です。

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Photo: Gizmodo US

Mavic 2 Zoom:便利なのか、単なるギミックか

Mavic 2 Zoomに関しては、搭載されているカメラは初代Mavic Proととても似ています。同じ1/2.3インチセンサーですが、特徴的なのは光学2倍ズーム(24−48mm)とデジタルズーム(49−96mm)ができることです。ズームカメラは今まではもっと高価なドローンにはありましたが、折りたたみのコンシューマー向けドローンとしては初めて。ただ、同時に最大の疑問は、誰が使うのか?ってことです。

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でもヒッチコック映画ファンなら歓喜すると思います。Mavic 2 Zoomでは、ヒッチコックの『めまい』で有名になった撮影手法、いわゆる「ドリーズーム」が簡単にできます。カメラを前または後ろに動かしながらズームレンズを調節すると、こういう映像が撮れるんです。ハリウッド映画なら、こういう映像を撮るために何十万円もする機材を使ってるはずですが、Mavic 2 Zoomならクイックショットオプションを使うことで、5秒くらいでできてしまいますよ。

ドリーズームはギミックのように見えるかもしれませんが、単にズームイン/アウトできることでも面白い映像が撮れるし、そこにドローンの動きが加わればなおさらです。ドローンの動きにズームを組み合わせることの使い道はエンドレスに考えられるので、映像全体の仕上がりを高められると期待できそう。実際、Mavic 2 Zoomのズームは滑らかかつ自然で、ちょっと試しただけでも思わず「いいじゃん」とつぶやいてしまうこと必至です。

もうひとつ、ハイパーライトという撮影モードのことも書いておきます。Mavic 2 ProでもZoomでも使えて、小さいセンサーでもシャープなディテール、リッチな色を可能にする機能です。これは夕闇とか夜明けといった場面で活躍します。

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Photo: Gizmodo US

飛ばし心地も進化

Mavic 2の感触は、驚くほど良いです。本体は初代Mavic Proより少し大きいんですが、全体の空気抵抗を減らすための溝が入っています。さらにプロペラのデザインも刷新され、先端が微妙に曲がっていることで、より効率が良く、動作音も小さくなっているそうです。たしかに音に関しては、Mavic Proと比べてはっきりわかるくらい静かになっています。空気抵抗に関しても、実際操縦してみて違いがわかりました。

Mavic 2の飛び方についてすぐに気づいたのは、その滑らかさ、安定感です。ジョイスティックの動きをそれほど意識しなくても、高度を変えたり左右に動かしたりがスイスイできます。それに比べるとMavic Proは、動きが危なっかしいところがありました。

この安定感があることで、より良質なドローン映像が可能になります。でも自動飛行モードを使えば、撮影はますます簡単です。Mavic 2 Pro・Zoom両方で使えるハイパーラプスというモードでは、引き込まれるようなタイムラプス動画を簡単に作れます。

ただし風の強い日は、さすがに安定の良いドローンでも風にあおられてしまうので、ハイパーラプス動画をきれいに撮るのは難しいかもしれません。

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自動飛行関係でのもうひとつの大きなアップグレードは、被写体追尾機能のアクティブトラック2.0です。Mavic 2には機体の前後左右上下に計10個のセンサーが搭載されていて、DJIとしては初の全方位障害物検知が可能になっています。そのうち2方向のセンサーは、アクティブトラック2.0でしか使えません。

僕らはジョギングする人を追尾してみましたが、Mavic 2は途中にある街灯をうまく避けていきました。また被写体の人がわざとフレームから外れてみたりもしましたが、そのときもMavic 2は安全を保ちつつホバリングしていました。

いつか自分でレンズを交換できるようになるかも

DJIがMavic 2のようなドローンを作ったこと自体はほとんど驚きじゃありません。彼らはつねに、より賢くて便利なドローンを作り続けてきました。でもMavic 2に関して興味深いのは、大きなコンシューマードローン(PhantomシリーズやInspireシリーズ)と、より小さくポータブルなモデル(Mavic AirやSpark)、それぞれの良さを融合してきたことです。

このいいとこ取りの良さは、Mavic 2 ProとZoomのカメラが交換可能ってことでさらに倍増されます。といっても、カメラを交換するにはDJIのお店に行かなきゃいけないっていう煩雑さはありますし、かかる費用もまだ発表されていませんが、とにかくこんな小さなドローンのカメラでも入れ替えられるっていう考え方がすごく良いと思います。DJIは、いつかユーザーが自分でカメラを交換できるようになるかも、とまで言っています。

要検討のハイエンド価格

とはいえ、2016年発売で10万円を優に超えるMavic Proを持ってる人にとっては、Mavic 2の登場は悩ましいかもしれません。Mavic 2 Proは上にも書いたように1450ドル(日本価格18万9000円)、Mavic 2 Zoomは1250ドル(日本価格16万2000円)もします。なので今すでにMavic Proを持っている人には、それを売ってMavic 2を買い換えることは必ずしもおすすめしません。でも今ドローンを持っていない人とか、より古いPhantomを持っている人なら、Mavic 2を真剣に検討すべきだと思います。

ただし検討するためには、そもそも空飛ぶカメラに十数万円もかけていいのかどうか自問する必要があります。初心者の人なら800ドル(日本価格10万4000円)のMavic Airとか、400ドル(日本価格5万4800円)のSparkでも十分ハッピーになれるかもしれません。初心者で、かつ予算の制約がある人なら、Powered by DJIのTelloだって100ドル(日本価格1万2800円)ですごく良い選択肢になります。

って、なんかDJIだらけだなと思う人は、YuneecとかParrotのものをチェックしてみましょう。ただ僕らの経験的には、DJIが業界トップにいるのはやっぱり理由があります。彼らの(他よりちょっとだけ高い)ドローンは、競合よりもつねにパフォーマンスが高いんです。

今のところ、Mavic 2シリーズは今市場にあるどんなものとも違うと言ってよさそうです。もっと安いものとかもっと大きいものとかはありますが、これだけたくさんの賢い機能が小さな機体に載っているものはありません。5年前ならPhantomにも同じことが言えたんですが、今のDJIでは、Mavic 2シリーズこそが新たな王者なんです。

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Photo: Gizmodo US


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まとめ

・カメラのアップグレードが素晴らしくて、この価格帯のカメラドローンとしてはベストのひとつになりました。

・空中でも滑らかかつ安定してます。

・新たな自動飛行モードで、面白い可能性が開けました。

・Mavic 2 Proにズームがなかったのは、がっかりでした。