ツリーハウス? 巨匠フランク・ゲーリーのFacebook新本社が想像以上にカオス

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ツリーハウス? 巨匠フランク・ゲーリーのFacebook新本社が想像以上にカオス
Image: Facebook
木に埋まってます…。フランク・ゲーリーとファシリティ部門VP

本社前を通るたびに木が増えてるなあ…とは思っていましたが…

米メンローパーク市にあるFacebook(フェイスブック)の新本社ビル「MPK21」が、9月5日(火)ついに一般公開されました。「うちはビルダーの会社なのでそんなイメージにしました」と、Janelle Gale人事部VPはプロモ動画の冒頭でキーコンセプトを語っています。ビルダーとは、コードをビルドする人と建築をビルドする人の両方に使われる言葉で、きったない家の壁をハンマーで叩き壊してすごい家をつくる人なんかを指します。まさにそんな感じがしますね。

設計はフランク・ゲーリーが担当

設計は、欧州本社ダブリンの設計も手掛けた巨匠フランク・ゲーリーが務めました。信号1個ほど離れた向かい側には、サンマイクロシステムズ本社跡地の旧本社Building 20があります。「そこで学んだことをすべて活かした」と巨匠。「Facebookの企業カルチャーを学び、その中で新たな建築をつくった」と動画で語ってます。

A first look inside Facebook's epic headquarters expansion that includes a redwood forest and a botanical garden from CNBC.

公式ブログに公開された写真からは、フランク・ゲーリーらしい斬新さが感じられます。ビルバオのグッゲンハイム美術館で世界にその名を轟かせ、建物そのものがアートといわれた巨匠も早89歳。LAのウォルトディズニー・コンサートホール開館のときには実物にもお目にかかりましたが、あれから15年…かくしゃくたるもんですなあ…。

シリコンバレーの海沿いに現れたカオス空間

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Image: Facebook
オープンエアのテラス

北カリフォルニアは樹齢数千年のレッドウッドの巨木がシンボルです。本社にはこの苗を植えまくりました。あんな湾岸の潮っけの多い土地に杉なんて育つんかなとハラハラしてしまいますけど、屋上にも中庭にも大小さまざまな木を植えてます。

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Image: Facebook
全面ガラス張りのロビー

Bloombergがさっそく中を取材していますので、写真はそちらでどうぞ。「巨匠だから何やっても許されると思ってる。なんだこれは。カオスの行き当たりばったりではないか」と、ゲーリーいじりが大好きな米Gizmodoは酷評してます。Apple本社ほど息が詰まらなくて自分は好きだけど。笑

壁に手あたり次第にアイディアを投げつけて、使えそうなものを脈絡なく採用している感じだ。クリーンなもの、インパクトのあるもの、さびれたもの、未完成なもの、あらゆるマテリアルが混然一体の寄せ集めになっていて、ラインはあちゃこちゃ飛んでいて意図がわからない。空から降ってきてただ着地しました、みたいな。例を挙げたらキリがないけど、一番よくわかるのがこれ

と、次の写真を貼ってますよ。

う、たしかにこれは…建設現場? ま、なんせビルダーなんで。ほかにもベニヤ板を打ち付けたようなところに社員の自転車が縦に吊るされてて「ビルの真ん中が通路になっている」と紹介されていたり。Bloomberg記者も心の底ではカオスだと思っていると、このキャプションを見て思ってしまいましたよ。

Facebookの現状を的確にとらえる

Facebookの企業風土からカオスを感じ取ったのだとすれば、さすが巨匠。その目に狂いはなかったとも言えます。この新社屋が一般公開された日と同じくしてBuzzFeedには、フィリピンのドゥテルテ大統領がFacebookをデマ拡散マシンに利用しているという長文記事が公開されました。デマで大統領にのぼりつめ、就任後も反対派の女性議員の顔を貼り付けたポルノ映像をFacebookで広めて徹底的にネガキャンを展開し、政治生命を終わらせた挙げ句に国際人権団体の抗議も無視して1年以上も投獄しているんだそうでして、ひどい話ですよ。

ミャンマーでも軍部がロヒンギャ族のネガキャンにFacebookを悪用し、デマを広めて虐殺とレイプを煽動し、少なくとも392の村が焼き払われ、1万人が虐殺されていますし、最近のFacebookはデマ撲滅が追い付かないカオスになってしまってますからね。せめて米議会の公聴会でつるしあげられるのが終わってから新本社を公開すれば、そんな連想は避けられた気もするんですが、そういうことを気にしないところもFacebookらしいと言えばらしい。

Apple新本社はスティーブ・ジョブズが設計からコミットしてコントロールフリークっぷりを発揮し、ガラスが透明過ぎて社員がぶつかりまくる完成度で「さすがApple」と言われました。今月のイベント招待状でも円形の意味をめぐってさまざまな推測が飛び交いましたが、「会場のApple本社じゃないの?」という説で一件落着で、誰が見てもわかるデザインです。あれをカオスなFacebook新社屋でやるとどうなるか、想像図を貼っておきますね。

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左:Apple新本社の12日の招待状
右:Facebook新本社モチーフの招待状
Image: Apple, Rhett Jones/Gizmodo US

Sources: Facebook, Bloomberg, Gizmodo US, CNBC, Twitter(1, 2), Los Angels Times, BuzzFeed, The Ringer