正社員や契約社員、バイトやパート———どんな雇用形態であれ、みなさん仕事を辞めた経験はあると思います。
会社に退職を告げてくれる代行サービスがある
問題なく辞められるならいいのですが、辞めると言い出しにくい状況もあります。
NPRの記事で、日本に退職代行サービスがあるのを知りました。同記事によると、設立1年という退職代行サービス「EXIT」の利用者は20〜30代が多く、需要はあるとのこと。
このサービスが日本的だということでアメリカのメディアに取り上げられていました。
たしかに、日本的なしがらみや職場環境によっては辞めにくいこともあるのはわかりつつも、日本でもアメリカでも仕事を辞めてきた私は、退職手続きをアウトソースするという考えにちょっと驚かされました。
人事側の意見は? 日米でどう違う?
では、このような代行サービスを通して退職を告げられる側の意見はどうなのでしょうか。
日本のある大企業に勤めるAさんにお話を伺いました。
Aさんは人事畑30年のベテランですが、このような退職代行サービスを通じて退職届を受けとったことがあるそうです。最近の例では、介護を理由に辞めたがっていたのに上司の引き留めにあっていた社員とのこと。
私が思っていたよりも、退職代行サービスはすでに浸透しつつあるのかもしれません。
日本では雇用形態にかかわらず、ハラスメントなどがあって、辞めにくい状況で利用する人が多いのではと話してくれました。
アメリカなら「面倒くさいから」退職代行を利用する
では、アメリカ人はこのサービスについてどう思うのでしょうか。まわりの人に聞いてみました。
「アメリカでもそういうサービスがあればいい。面倒くさいと思う人が使うだろう」
「アプリがあれば、若い世代は使うんじゃないかな」
「状況によっては自分も利用するかも」
近年よく耳にするようになったのは、「ghosting(ゴースティング)」。
これは、採用されても初日になんの連絡もせず出勤してこない、つまり退職するというケース。雇用側にはその理由はわかりません。ただ日本ではこんな荒技をする人は少なそうです。
まわりのアメリカ人に聞いたところでは、代行サービスを使うとしたら自分でやるのが面倒くさいからという理由がメインでした。
辞めるのにもスキルが必要?
長年人事を担当してきたAさんが近年痛感しているのは、はっきり断るなどマイナスに思われることをうまく交渉できないという、とくに若い世代のコミュニケーション力の低下なのだそう。
アメリカでは「面倒くさいから」、日本では「はっきり言えない」「抵抗にあう」などいろいろ理由はあるようですが、コミュニケーション力低下の傾向はどちらの国にもあるという印象を持ちました。
いまや、スキルのひとつとして「辞める能力」も問われる時代になっているのでしょうか。いえ、従業員側だけではなく、雇用主側も変化しつつあります。
Aさんが、「労働基準法や就業規則の上には職業選択の自由を認める日本憲法があるので、双方がそれを理解していれば、それほど揉めることも少なくなるのでは」とおっしゃっていたのが印象に残りました。
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