ハードウェア

虫の動きをマネて急旋回や急加速が可能になった高い敏捷性を誇る飛行ロボット「DelFly Nimble」


デルフト工科大学の小型飛行ロボットを開発する研究所・Mavlabに所属する研究者が、昆虫の機敏な動きを模倣することで、従来の飛行ロボットでは実現できなかった細かな動作が可能な小型飛行ロボット「DelFly Nimble」を開発し、科学誌のScience上で発表しました。

A tailless aerial robotic flapper reveals that flies use torque coupling in rapid banked turns | Science
http://science.sciencemag.org/content/361/6407/1089

Novel flying robot mimics rapid insect flight
https://www.tudelft.nl/en/2018/tu-delft/novel-flying-robot-mimics-rapid-insect-flight/

Mavlabが開発した「DelFly Nimble」は、空を飛ぶ自律型ロボット。これはMavlabとヴァーヘニンゲン大学の研究者たちが協力し、ミバエのような敏捷性の高い昆虫の動きを観察し、機敏な動作を再現することで作り上げたロボットです。昆虫の飛行能力を研究することで、無人の飛行ロボットの飛行能力を飛躍的に高めようというのが研究チームの狙いとのこと。


Mavlabの研究者らが開発したDelFly Nimbleは、従来の飛行ロボットと比較して「比類ないパフォーマンス」を実現しているそうで、それでいて簡単に設計できるようなシンプルさを持ち合わせているというのがポイント。DelFly Nimbleは1秒間に17回羽ばたくことで空中に留まるために必要な揚力を生み出し、翼の動きを前後左右に細かく微調整することで、まるでミバエのような空中での飛行制御を実現しています。ミバエの動作を参考に構築されたというDelFly Nimbleの制御機構は、非常に効率的なものであることが証明されており、これによりあらゆる方向に機敏に飛び回ることが可能です。

DelFly Nimbleの開発でメインロボットデザイナーを務めたMatějKarásek氏は、「このロボットは最高で時速25kmでの飛行が可能で、360度の方向転換や、バレルロールなどを行うこともできます」と語っています。DelFly Nimbleの翼幅は33cmありますが、重量はわずか29グラムと軽く、それでいて優れた電力効率を誇ります。完全に充電された状態ならば、5分間のホバリングフライトが可能で、飛行可能距離は1kmほどになるそうです。


DelFly Nimbleが実際に空中を飛び回る様子は以下のムービーで見ることができます。

DelFly Nimble - an agile insect-inspired robot - YouTube


虫のように急旋回をものともせずに飛行しているのがDelFly Nimbleです。


DelFly Nimbleはミバエが空を飛ぶ際の動きを参考に作られた全く新しい飛行ロボット。


翼は前後左右あらゆる方向に動かすことが可能。


さらに、翼は左右別々に動作させることもできます。


DelFly Nimbleは前方もしくは横方向に急加速することが可能。


優れた機動性により急停止や急旋回も可能なため、高速な直角ターンも披露してくれます。


こういった従来の飛行ロボットでは考えられないような機敏な動きは、ミバエの動作に限りなく似せることで実現可能となったそうです。


角加速度は5000deg/s2。


最高飛行速度は時速25km。


旋回率は500deg/s。


研究に携わったヴァーヘニンゲン大学のFlorian Muijres教授は、「DelFly Nimbleが飛んでいるのを初めて見たとき、その動作が昆虫のものにどれだけ似ているかに驚きました」と語っており、DelFly Nimbleはロボットとしてだけでなく、昆虫の研究にも有意義なものであると述べました。

MavlabのGuido de Croon教授は「DelFly Nimbleのような虫にインスパイアされたロボットは、軽量なため人にとって無害で、より小型で効率的に飛行可能なドローンを作り出すことにつながります」と語っています。DelFly Nimble以前にも多くの昆虫型ロボットが開発されてきましたが、その多くはDelFly Nimbleのような敏捷性を持ち合わせておらず、さらには過度に複雑な構造を有していたため、「より小型で効率的なドローン」を実現するための参考になるようなものではありませんでした。しかし、DelFly Nimbleは既存の製造方法と市販のパーツを基に作られたロボットであるため、今後のドローン分野に大きな可能性をもたらす発明になる可能性があります。

なお、DelFly Nimbleはオランダ応用科学研究機構(TNO)の資金援助を受けて開発を行っており、今後は「ハチのように機敏なロボット」の開発に取り組むとのことです。

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in ハードウェア,   生き物,   動画, Posted by logu_ii

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