敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ子育て術「HOW I PARENT」シリーズ。今回はアメリカの幼児・子ども向け通信教材で一番有名なKiwicoを創設してCEOを務めるサンドラ・オー・リンさんの子育て術です。
サンドラ・オー・リンさんって何をしている人?
子どもは生まれながらのイノベーターです。子どもがレストランに置いてあるポーションミルクを使ってピラミッドを立てるところを目撃したことがある親ならみんなそう思っています。
KiwiCoは、STEAM (Science Technology, Engineering, Arts and Math・サイエンステクノロジー、エンジニアリング、アーツ・数学)を意識したアクティビティができる教材を月間購読ボックスで提供することで、子どもが創造性を発揮する手助けをしています。
手を動かしながら遊んで学ぶ系の教材キットで、小さなクリエイターたちは、アーケードクロウを作ったり、オリジナルのピンボールゲームをデザインしたり、ペイント・ペンデュラムを作ったりします。
このKiwiCoの創設者兼CEOのサンドラ・オー・リーさんはカリフォルニアに住む3児の母でもあります。どんな子育てハックを駆使しているのでしょうか。
──最初に、家族とキャリアについて。ここまでの人生は概ね計画通り?それとも予想外のことが多かった?
大学で化学工学の学位を取得した後、最初の就職先はプロクター・アンド・ギャンブル社の製品開発部。その後、 夫がサンフランシスコのベイエリアで研修医をすることになったので、私も西海岸に引っ越して、スタートアップ数社でいろいろな仕事をしました。
大企業から小さなスタートアップに移るのはかなり大きな変化でしたね。
今度は、夫がギアチェンジして、東海岸で金融界で働くことに決めました。そこで私も夫と一緒に引っ越して、幸いにもそこで大学院に入学しました。
その時点で、私たちはアメリカを西から東へと横断する引っ越しも含めて、4年間に6回も引っ越しをしたことになります。自分がこんなに引っ越しがてきぱきできるようになるとは夢にも思いませんでした。
今度は私が次はどこに行くか考える番になりました。結局、ベイエリアに戻り、PayPalで数年働いた後、eBayでも働きました。
その間に、上の2人の子どもたちが生まれ、今は9歳と11歳になっています。
子どもたちがもっと小さい頃、私は子どもたちの創造力を育てるために、手を動かして遊ぶプロジェクトを作ってあげていました。私の中のエンジニアが、我が子に手作業で遊ぶオープンエンドのプロジェクトで楽しむことを奨励したのです。あと、なつかしさもあったかもしれません。
私は母親と一緒に素敵なプロジェクトをした良い思い出がたくさんありました。母自身がクリエイターでした(私が大好きだったのは、発泡スチレンでできたテイクアウト用の容器でハンドバッグを作ることでした。80年代だったからでしょうね)。
その思い出が、KiwiCoの創設につながりました。2、3年前、3番目の子どもを授かりました。最近、夫はバイオテックのスタートアップの共同設立者兼CEOになっています。
ですから、我が家は夫婦そろってスタートアップで働く家族です。仕事と3人の元気な子どもたちがいる生活は、ちょっとドタバタしていますが、それも含めて受け入れています。
──朝のルーティンは? 子どもにスムーズに外出の準備をさせる裏ワザは?
2歳の息子が我が家の目覚まし時計で、みんな彼と一緒に起きます。
彼は温かいミルクをもらい本を読んでもらうと、布団から滑り出して、走り回ります。私は上の2人の子どもたちの朝食とランチを作ることに専念します。ランチは前の晩に完全に作っておくと言いたいところですが、残念ながら必ずしもそうはなりません。
2歳の息子に「お兄ちゃんやお姉ちゃんと一緒に学校に行く」という期待感を抱かせることがコツ。それがうまくできると、夫も私も遅くとも上の子たちの登校時間までには出かけられます。
──パートナー以外に、誰からどの程度育児を手伝ってもらっている?
幸いずいぶんと助けてもらっています。
まず、優秀なナニーがいて、主に一番下の子の面倒をみてくれます。私の両親も近所に住んでいるので、ほとんど毎日手伝いにきてくれます。上の2人の子どもたちがいろいろな習い事や行事に参加するとき車で送ってくれています。
── 「これがないと生きられない」というガジェット・アプリ・チャート・ツールは?
カレンダーとテキストと基本的なアプリ以外に、TeamSnapをかなり使っています。子どもたちのスポーツチームに関する情報がすべてわかるアプリです。
それから、いかにもローテクな感じですが、我が家には大きなカレンダーがあり、子どもごとに色分けしてアクティビティを記入しています。
とても忙しい日は、パントリーのドアに掛けてある黒板にイベントのスケジュールを細かく書き出します。こうすることで、みんながちゃんと準備して、遅れずに外出できています。
──子育てをするようになってから仕事のやり方は変わった?
私が今している仕事は完全に我が子からインスパイアされたものです。
この仕事は、製品を作るだけでなく、子どもたちの問題解決能力を向上させたり、家族団らんの時間を持つきっかけとなる体験を提供することでもあるので、とてもやりがいがあります。
それに、時間の使い方がはるかに効率的になりました。家族と過ごす時間を持ちたいので、仕事に使える時間は限られています。ですから、最大限に有効活用しようとしています。
──夜のルーティンは何をしている?
夕食後、2歳の息子は電車、ボール、ブロックを使って遊び、上の子2人は宿題をします。
2歳の息子は1時間早くベッドに行くのですが、この子のベッドタイムは、たくさん本を読んであげたり、ミルクを飲ませたり、歌を何曲か歌ったりと、手がかかります。
上の2人の子どもたちは、ありがたいことに自分でさっさと寝る準備をします。この子たちがもっと小さい頃は、いつまでたっても寝る準備が終わらない感じでベッドタイムはイライラの元でした。
子どもたちが寝た後、私は2、3時間仕事に戻ります。
──今のリラックス方法は?
エクササイズ。
今の私はサッカー選手というよりサッカーママになりましたが、できるときに自分もサッカーをするのが好きです。何年もプレーしてきましたが、ボールを追いかけてフィールドに立つといつもハッピーになります。私にとっては、禅道場みたいなものです。
──親として一番誇らしく思う瞬間はどんなとき?
子どもたちが自信に溢れ、優しくてクリエイティブな人間になっていくのを目にするとき。
──一番情けないと思う瞬間はどんなとき?
子どものせいではないのに、声を荒げたり短気になって子どもにフラストレーションをぶつけてしまう瞬間です。自分にとても失望します。
そんなときは、子どもを抱きしめて「ごめんね。ママは完璧ではないの」と言って仲直りします。
──子どもたちにはあなたのどんなところを見習って欲しい?
私が夫のような良きパートナーと共に生きているところと、女性や母親もリーダーシップを取るポジションに就けることです。
──お気に入りの変わった儀式はありますか?
ハンバーガーショップや遊園地で順番待ちをしているときなど、どこででも音楽を耳にすると、踊り出すこと。
最初は、眉を上げるとか肩をちょっとすぼめる、爪先で地面をトントンたたく、などの小さな動きから始め、家族の誰かがそれに気づくと仲間に入り、最後はみんなで一斉に踊り出します。家族で秘密の握手をして即興でダンスパーティをする取り決めをしているようなものです。とても楽しいですよ。
それから、感謝祭の日、「七面鳥ゲーム」に参加するという家族の伝統があります。
あらゆる年齢の親せきや友人まで参加して楽しいゲームをたくさんします。クランベリーチーム対ウィッシュボーンチームの白熱したTurkey Bowlingを想像してみてください。
──今までもらった子育てに関するアドバイスで心に残っているものはありますか?
アドバイスというわけではありませんが、最近行った大学院の同窓会で聞いたこと。
あるクラスメートが、有意義な人生の科学についてスピーチしていました。そこで触れられていた「有意義」の多くは奮闘や困難な状況から生じうるものでした。つまり、親でいるということは、間違いなく、喜びと有意義の源なのだと感じました。
──子育てで一番難しいことは何?
もっと子どもたちをコントロールできたらと思うときがあります。
こんなに散らかさず、もっとすぐにお返事をして、いつもポジティブでいてくれたらいいのに、と思うのですが、どうにもできません。
子どもに自尊心と自立心を持たせ、立派な人間にするには、仕方がないことなのかもしれません。本当にそうなってくれたら素晴らしいですが、ときどき頭にくることもあります。
── 1日のうちで一番好きな時間はいつ?
私が仕事から帰宅すると、子どもたちが競うように玄関に駆けてきてハグしてくれるとき。
── 子どもをSTEMに夢中にさせるコツは?
身の回りの世界に興味を持たせることです。
日々の生活の中には、科学や工学や数学がたくさんあります。親としては、専門用語や定義から始める必要はなく、実世界の実例と子どもの内なる好奇心(エンドレスな「なぜ」)から始めれば、自然に発見や学びになります。
子どもには、さまざまな実験をさせたり、古い時計を分解させたり、マシュマロをトーストさせてください。そして質問や観察をさせましょう。
──子育てとキャリアを両立させている親御さんたちに伝えたい一言
折り合いをつけるということに尽きます。
あなたは、良くやっていると思いますよ。私は限られた時間の中で優先すべきことをするという形で、家族と仕事に時間を使えています。それだけでも、かなり大きなことです。
もっと家が片付いていたらいいのに、とか、友人たちともっとディナーパーティをできたらいいのに、と思っても、結局は現状を受け入れています。
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Michelle Woo – Lifehacker US[原文]
Photo: Courtesy of Sandra Oh Lin