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AIの進化は開発途上国の経済に最も大きな打撃を加える可能性がある

By Meetin' the world

2000年代に入って著しい進化を遂げてきたAI(人工知能)は、今後の社会のあり方や経済の状況を大きく変えるとも言われています。最先端の技術だけに、その影響を受けるのは先進国だと考えてしまうことが多そうですが、実際に最も大きな打撃を受けるのは、これから経済が成長する段階にある開発途上国であるという見方をBloombergが示しています。

Artificial Intelligence Threatens Jobs in Developing World - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/view/articles/2018-09-17/artificial-intelligence-threatens-jobs-in-developing-world

過去数十年にわたって経済が発展してきた中国とインドは、それぞれ別の成長モデルに基づいて成長を続けてきました。中国は、膨大な人口による安価な労働力を活用することでブルーカラー層を経済発展の基盤としてきました。その後、中国は電子製品などより技術集約的な商品を生産することによって、国の富を大きくしてきました。一方のインドでは、優秀な頭脳を持つ技術者や英語力を生かすことで、コールセンター業務などビジネスアウトソーシングの受け皿としての役割や、ソフトウェアテストなどの頭脳系のホワイトカラーが国の経済を底上げしてきました。

両国はそれぞれの強みを生かすことで経済成長を続けてきましたが、AIがそれに待ったをかけてしまうと考えられています。AIは工場の自動化を劇的に加速させると同時に、顧客サービスやテレマーケティングなどの業務を人の手から奪ってしまう可能性があります。また、AIはデータの蓄積と学習が進むことでさらにサービスの品質を素早く向上させることが可能です。さらに、AIは自ら賃上げを要求せず、ホリデーシーズンに休暇を取ることもなく、体調不良で休んでしまうようなこともありません。


開発途上国が先進国に対してアピールできる最大のメリットは「コストの低さ」ですが、AIがそのメリットを吸収してしまうことになると、先進国の多くの企業はアウトソーシングしていた業務を本国へと引き揚げてしまうことになりかねません。そうなれば開発途上国では仕事がなくなり、国内経済が減速し、失業率が上がるというネガティブな状況が引き起こされてしまいます。

この結果、AI技術により恩恵を被るのは一部の先進国だけということになります。AIの品質はデータの多さに左右されるといっても過言ではありませんが、より高い品質を持つAIにはより多くのデータが集まり、それによってさらに品質を向上させたAIがより多くのユーザーを獲得してデータを集める、という正のスパイラルが生じます。世界で最もAI技術が進んでいるのはアメリカと中国であると見られていますが、コンサルティング企業のPwCは2030年までに世界全体でAIが生み出す15.7兆ドル(約1800兆円)の富のうち、アメリカと中国がその70%を独占すると予測しています。

その状況において、新興経済国が生き残るために必要なことは、中国やインド、さらには戦後の日本がたどったような従来の成長モデルから脱却することにあります。このままAIの発展が進むと、工業製品を生産して貧困から脱却した国は中国が最後になるとみられており、世界はいま新しい成長モデルを早急に見いだす必要があります。


その大きな手段となるとみられているのが、「人」でなければ実現できないソフト面でのサービスの拡大です。いくらAIやロボットが進化したとしても、日本の旅館やイギリスのB&B(ベッド・アンド・ブレクファスト)のような「おもてなし」や心地よさを提供するサービスは、人間がもっとも得意とする仕事であるとみられています。観光や文化ツーリズム、ホットラインコールセンター、高齢者ケアなどの産業は、AI時代においても根強く生き残る分野であると考えられています。

また、開発途上国はAI世界の中でそれぞれの居場所を見いだす必要があります。工場のラインで稼働するロボットは世界のどこに行っても同じ作業を行うことができますが、それぞれの国にはそれぞれ特有の状況があります。たとえば、アメリカにおける消費者の信用調査レポートをベースにした消費者金融アルゴリズムが開発されたとしても、それをそのままエチオピアに持ち込んでもうまく機能することは期待できません。この「ギャップ」の存在こそが、開発途上国が自分たちの居場所を見つけるための大きな足掛かりになるというわけです。

By IFPRI -IMAGES

このギャップを克服するために、開発途上にある各国の政府は「AIを活用する自国企業を育成する」という目標のもとに優秀な学生のAI教育に予算を充てる必要があります。数学と工学で秀でた若い学生をいち早く見いだし、高度な教育を提供し、世界最高の学術機関での教育を受けさせる必要があります。

これらの取り組みはいずれも簡単ではありません。小規模企業を100万社育てることは、巨大工場を100個建設することよりはるかに難しく、トップクラスの学生に資金を提供することは、栄養失調状態にある国の経済を考えると難しい決断となります。しかし、開発途上国がそのバランスをうまくとることができれば、AIは搾取的なブラック企業や環境悪化に悩まされることなく経済を改善し、成長させるチャンスを手にすることができる可能性が生まれます。

そして米国や中国などの強大国は、それらの開発途上国に助けの手を差し伸べることが可能です。教育と訓練の手段を提供することは、財政的支援よりも多くの価値を与えます。もしAIが世界的な負担ではなく、富をもたらすとするのならば、その利益は共有される必要があるとBloombergは締めくくっています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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