プロが教える”必撮”写真術

スマホのカメラでOK! フリマアプリで“売れる”商品写真のコツ教えます

今さらな話で恐縮ですが、メルカリ、ヤフオクなど、WEBに出品するときに重要なポイントとなるのが、その「商品写真の出来栄え」です。

何も考えずにスマホでカシャッと撮れば、いともカンタンに出品できますが、はたしてそれでいいのでしょうか?(いいっちゃ、いいのですが……売れにくいかも……)

そこで、商品の魅力をよりよく伝え、閲覧者が思わず入札してしまう写真を撮る秘訣(ひけつ)をお教えしていきたいと思います!

題して「ド素人女子のブツ撮り修行!

せんえつながら、プロカメラマンであるワタクシ中居中也が、このシリーズの師範を務めさせていただきます。

女性編集部員がスマホでキレイに撮ってみる


今回は照明機材を使わず「日中の窓の光」のみを使ったブツ撮り修行

このとき、直射日光は避けてください(直射日光が入る場合は、トレーシングペーパーなどで光を拡散させる必要があります)。また、夕方などは光がオレンジ色になるので避けたほうがいいです(意外にも曇天の日が、光が安定していて1日中撮影がしやすいです……)。


今回使用するカメラは、iPhone X。デュアルカメラ付のiPhoneでは×2レンズにすると、ブツ撮りに適した望遠(換算56mm)に(iPhone Plusシリーズにも×2が搭載されています)。望遠を使うことにより被写体のゆがみが少ない写真に仕上げることができます。


そして修行に参加してくれる生徒さんは、特命女子編集部員のしえるさま。
仕事柄デジカメも使いますが、普段の写真はもっぱらスマホとのこと。そんな彼女にお願いをして、家にあって出品したい(してもいい)私物をいろいろ持ってきてもらいました〜。

これがしえるさまの私物。いろんなものがありますよね。彼女の趣味が垣間見えるものもあったりします

これがしえるさまの私物。いろんなものがありますよね。彼女の趣味が垣間見えるものもあったりします

ところでここにあるモノ、実は2つのグループに分かれるんです……わかりますかね???(いきなりむちゃな質問ですわな……)

撮り方は、大きく分けて2つある


実際に、分けてみました。これらの違いは被写体に“高さ”があるかどうかで、「ふかん系アングル」のグループと、「水平系アングル」のグループに分かれるのです!

【ふかん系アングル】


高さのない被写体は、カメラを上から下に構えるので、背景紙をテーブル(天板)に敷くだけの平面で撮ることができます(水平に対して、45〜90度の撮影)。
※高い位置から被写体を見下ろして撮ることを「ふかん撮影」という。また、正確に真下に向けて撮ることを「真ふかん撮影」という。

【水平系アングル】


高さのある被写体は、カメラを低い位置から構えるので、背景紙に“立ち上げ”を作る必要があります(水平に対して、0〜30度の撮影)。


さてさて、ここからはいよいよ実践修行を始めたいと思います。心して聞いてくださいね。

ブツ撮りをするときには、窓の光を使ったライティングでも、天井の蛍光灯などが点灯していると少なからず影響が出ます。ライティングをしているメイン光(窓からの光)と室内灯の光の色が異なるため、色かぶり(実際の印象と写真の色みが異なること)が発生します。また、不要な写り込みなどが出る可能性もあります。照明機材を使った場合は、室内灯の光はさらに悪影響が多くなるので、撮影時には必ず消灯することを習慣づけるようにしたいものです。

ブツ撮りに最適な「背景」って?


まずは手はじめに、ふかん系アングル(平面背景で撮れるもの)を撮ってみましょう。
会議室のテーブルにヘアアイロンをそのまま置いて、しえるさまに撮ってもらいました。

さて、どんな写真が撮れたのかな?


ありゃ〜、むちゃ重い印象……。平成がもうすぐ終わろうとしているのに、昭和臭が漂うなんて……。
そのまま撮るとこうなりがちですよね。背景として色は悪いし、木目調プリントの柄がよくありません。ご家庭の机やテーブルの上で撮ると、同じような重い仕上がりになることが考えられます。

対策として、大きな紙を敷いてみましょう。


白・黒・橙(だいだい)・柄(ラッピングペーパー)の色紙を用意してみました。
ブツ撮りに最適な背景紙は何か!? それを探っていきたいと思います。


まずは、派手な柄紙です。ラッピングペーパーなので、ほかの紙より小さめですが、さて写りはどうか?


うーん……。目がチカチカして、肝心の被写体に目がいきません! 思ったよりひどい……。柄(ラッピングペーパー)は背景紙にはならないことが、はっきりわかりました。


橙・黒・白の背景で撮った写真を続けてどうぞ!

【橙(オレンジ)背景】


一見よさそうに見えますが、合う被写体と合わない被写体があり、ド素人には、少々ハードルが高そうです。それに派手な背景が商品(被写体)の白や金属部に写り込み、正しい表現ができないことがあります。

【黒背景】


金属部や黒いコードが背景に溶け込み、被写体のアウトライン(輪郭)がわからなくなっています。つまり、モノの形が伝わりません。もちろん黒背景が合う被写体もありますが、やはりド素人には判別が難しいと考えます。

【白背景】


誰が見てもスッキリし、被写体に自然と目がいく白背景。モノのアウトラインも正しく判別でき、金属部の写り込みも自然です。あまり知られていないことですが、白背景はそれだけでレフ板となっており被写体照射をサポートしています
(下が白だとそれだけで照り返しがある。雪山や砂浜で撮る写真に近いともいえます)。


ブツ撮りするのに適した「白」の大きさは?

無背景にすることがブツ撮りの基本であるうえに、レフ効果もあるため白背景は今も昔も重宝されます。撮影スタジオのホリゾントが白であることがそれを証明しています。
ここまでで、白背景がいいのは理解していただけたと思います。
それではブツ撮りするには、どのくらいの大きさのが必要なのでしょうか?

正解はズバリ、四六判です。

つまり、四六判の白ケント紙を入手することが、ブツ撮りを制する第一歩になります。

しかし、残念ながら四六判のケント紙は100円ショップでは手に入りません。100円ショップで売っている大きな紙はせいぜいA3くらいまでです。A3では撮影用背景紙としては話にならないくらい小さいのです。少なくともA1(おおよそ60×80cm)の大きさくらいから、やっと背景紙で使えるサイズになります。


あなたの住んでいる街に画材屋さんがあれば、四六判の白ケント紙が入手できます。
ですが、小さな町には画材屋さんはないことが多いでしょう。

ちなみに首都圏では、世界堂、ウエマツ、ITOYA、東急ハンズなどで、四六判紙が入手可能です。

似たような白くて大きな紙に「模造紙」がありますが、模造紙はあまりおすすめできません。模造紙は薄くてシワができやすく、紙の立ち上がりを作ってもうまくいかない(アールがうまく作れない)のです。その点ケント紙は、厚みのあるコシの強い紙なので、シワになりにくく背景紙としては適しているというわけです。


かんたんに自作できる「秘伝のレフ板」

小物ブツ撮りでも、レフ板はなくてはならないアイテム。
小さなレフ板は、自分の撮影案件に応じて、自分で作るのがプロでは当たり前です。


【レフ板とは?】
光を反射(銀や白など)させて、影などでできる明暗差を軽減する板状の道具。人物撮影では、1mを超えるような大型のものを使うことが一般的。小物ブツ撮りでは、白の小さいサイズのレフ板を使うことが多い。

師範中居が長年のプロカメラマンの仕事で導き出した、小物ブツ撮りに最適な大きさの秘伝のレフ板を特別にお教えしたいと思います。これが2セットあれば、ほぼほぼの小物ブツ撮りに使える、必殺サイズなのであります。


(1)用意するもの
 ・B4スチレンボード(3〜5mm厚)
 ・製本テープ(25mm幅/白)

(2)B4スチレンボードは1組(=2枚)使います。製本テープを切るハサミを用意してください。

(3)B4スチレンボードの短辺側を合わせて、製本テープで貼り留め「ヒンジ」を作ります(ぴったり合わせるのが理想です。縦一枚にしたときに逆に折れなくて使い勝手がよい)。

(4)屏風(びょうぶ)のように折れ曲げることにより、横でも縦でも自立できるので、とても便利です。
※大きさが同じであれば、同じような白い板があればOKです。


どこからの光が、一番キレイに撮れる?

ふかん系アングル(水平に対して45〜90度)で、しえるさまに長さ20cmほどの長財布を撮ってもらうことにしました。このとき、しえるさまは「明るく撮るには順光(撮影者の背中に光を背負う方向)に決まってる!」と主張されます。

というわけで今回窓からの光で、順光・サイド光・逆光の3方向から撮ってもらうことにしました。
※今回は、高さのある窓なので逆光とはいえトップ方向からの光もあります。


正確にいうと逆トップライトといえます。
では、iPhoneで撮影した写真を見てみましょう!


順光で撮ると明るく写ると思われている方って多いことでしょう。自撮りでは、順光をいっぱい受けて肌を白くするというのが、女子の定説ですからね……。

しかしながら、ふかん系アングルのブツ撮りにおいては、それは通用しないのが一般的です。

プロがふかん系アングルのブツ撮りをする場合、逆光ベースで光を組み立てることが多いです。
※今回は正確にいうと逆トップ光か半逆光です。



最後に、師範の中居が手直しをした写真(被写体の角度を調整)がこちら。


ネットで出品する商品写真の場合、少ない枚数でモノの特徴を伝える必要があります。被写体の角度と撮影の角度の微調整で、さらなる情報が伝えられるのであればそれに越したことはありません。今回の場合、側面の襠(マチ)を見せることにより、その形状と厚みを伝えるようにしました。

水平系アングルで撮ってみる

最後に、水平系アングル(0〜30度)で、高さのある被写体のブツ撮りをします。


しえるさまの宝物のフィギュアを撮ってもらいましょう。


高さのある被写体を撮るには背景の立ち上がりが必要です。


壁にテープで張れればいいのですが、今回の撮影場所の場合は窓の端より奥まったところに壁があったため、窓の端に立ち上がりを合わせる必要がありました(背景が壁の陰で暗くなる)。このため、現場にあったコートハンガーを利用し、セロハンテープを駆使して、写真のように背景の立ち上がりを作りました。

窓光利用の撮影では、背景の立ち上がりを作った場合、サイド光しか使えないことが多いです。高さのある被写体なので、ちょうどいいんですけどね。


秘伝のレフ板を光の逆側において、レフありと、レフなしの結果を見てみることにしましょう。

秘伝のレフ板の効果はてき面! 影の部分までよく見えるキレイな仕上がりとなりました。

しかし、この場合レフなしで陰影が付いた写真もドラマチックな感じがして悪くはありません。最終的には好みということになります(フィギュアの場合、ドラマチックな方が好きな人もいらっしゃるでしょうし……)。


今回のまとめ

いかがでしたか? 以下、今回のキーポイントをまとめてみましたのでぜひともご活用いただき、売りたいものをバンバン売っちゃってください!

・今回の照明は「日中の窓の光」(会社会議室)
・使うカメラはデュアルカメラの「iPhone X(×2カメラ)」(56mm相当レンズ使用)
・被写体を「ふかん系アングル」「水平系アングル」に分類する
→ 撮る被写体の高さでアングルを使い分け、必要な背景を選ぶ



有限会社パンプロダクト代表 
中居中也(なかい・なかや)のショップとブログ

「使える機材のセレクトショップ」
「使える機材Blog!」

中居中也
Writer
中居中也
銀塩カメラマンとして広告や雑誌でキャリア開始。2010年より「唯一無二の撮影機材通販」にも参入し、現在は「映像作家」としても活動中。写真が上手になると定評があるブログを参考にするカメラマン続出中!
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芝崎 瞬(編集部)
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芝崎 瞬(編集部)
平均80台中盤のスコアをどうにか減らしたい編集部員。ゴルフ専門メディアから価格.comマガジンへ移籍。得意クラブは強いて言えばミドルアイアン。
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