本日から発売開始の新型Apple Watch(アップルウォッチ)価格は45800円~。
ECGあるいはEKG(いずれも心電図を意味するelectrocardiogramの略)と呼ばれる、心臓の電気的な動きを検出する機能が話題になっています。
日本ではまだ使えませんが、今後のトレンドになる可能性も見据えてECG機能について考えてみたいと思います。
ウェアラブルECGで何ができるの?
ECG機能は、心房細動を検出できるとされています。
心房細動とは、心臓が通常のリズムでの拍動よりもずっと速く不規則に振動する現象のこと。心房細動になると血液が凝固しやすくなり、脳梗塞ひいては脳卒中につながります。
心房細動による脳卒中のリスクがある場合、医師は血液の凝固を防ぐ抗凝血剤を投与する場合があります。また、治療法はほかにも存在します。
Apple Watch以外でも心臓のモニターはできる
Apple WatchのECG機能はあたかも新しいかのようにもてはやされていますが、実はそうではありません。
たとえばこちらのECGデバイスは、100ドル以下で売られています。また、昨年からAliveCor社がApple Watch向けのECG検査リストバンドを発売しています。
つまり、新しいのはApple Watchに組み込まれているため特別なリストバンドが不要という点に尽きるのです。
心電図検査はクリニックでも受けられます。ウォッチとは違い10個の電極を付けて行うので、より詳細な検査が可能ですし、なにより医師に診断してもらえます。
つまり、家庭での心電図検査がクリニックでの検査を置き換えることはないでしょう。ただ、病院での検査は短時間なのに対し、Apple Watchの場合は常にデータを取得できる点が異なります。
専門家の意見は二分
心房細動で脳卒中になる可能性を早めにキャッチして詳細な検査と治療を受けられるのは、間違いなくいいことでしょう。だからといって、Apple Watchの利用者全員が、心臓病のモニターをすべきでしょうか。
このように、健康な人々を検査して問題を予兆するスクリーニングプログラムには、必ず負の側面が伴います。たとえば、マンモグラムによるがん検診。深刻な病気が疑われると追加の検診を言い渡され、さんざん心配した挙句、何でもなかったということがあります。
あるいは、検査結果だけで、リスクのある薬剤や何らかの治療に手を出してしまう人もいます。
このようなスクリーニングは、果たして必要なのでしょうか。
これは難しい質問であり、答えは目的によると思います。米国予防医学専門委員会は、心臓病のリスクが低い健康な成人に対するECGスクリーニングはすすめていません。心臓病リスクの高い成人に対しても、すすめるべきか否か十分な証拠がないとする見解を示しています(Apple WatchによるECGではなく、ECGスクリーニング全般に対する見解です)。
精度はどうなの?
STATの報告では、Apple WatchのECGアプリは2本の論文に基づいてFDAの認可を受けています。1つ目の論文では、「被験者の10%については正確な心拍数を読めなかったものの、90%については精度よく読めた」という結果でした。
また、心房細動がある人の98%、ない人の99.6%を特定できていました。2つ目の論文は、従来のモニター手法で心房細動と判定された人のうち、79%を検出できたという結果です。
結局のところ、アプリに心房細動と判定された場合、それが正しい確率はどの程度なのでしょうか。たとえ低い確率だとしても、Apple Watch利用者全員の人数をかけると、相当な数の偽陽性結果がでることになります。
医師であり科学者でもあるSekar Kathiresann氏がSTATに語った内容によると、アプリの警告が間違いである確率は、計算上45%になるそうです。
警告が出たとして、その後の専門医による検査にアクセスできない人や、お金が払えない人はどうすればいいのでしょうか。あるいは、急いで検査を受けたけど何でもなかったときはどうすればいいのでしょう。
心臓電気生理学者のJohn Mandrola氏は、Medscapeの記事にこう記しています。
私は、このテクノロジーが大げさな不安をあおり、過剰診断や日常生活の医療化、過度な治療を招くことを懸念しています。
結局メリットはあるの?
心臓専門医であり研究者でもあるEric Topol氏は言います。
そこに本当のメリットはあるのでしょうか? それを知るには、前向きな研究が必要です。
Topol氏にApple WatchのECG機能の良し悪しを尋ねたところ、「心臓のリズムが疑わしいと検出されても実際には問題ない人がどの程度いるかによる」という答えでした。
それは、まだ私たちにはわかりません。多くの偽陽性結果を出すかもしれませんが、心臓に本当の問題がある人の命を救うこともあるでしょう。
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Image: Anna Hoychuk/Shutterstock.com
Source: Mayo Clinic, Amazon, Alivecor, Cables and Sensors, US Preventive Services, STAT, MedScape, ZD Net
Beth Skwarecki - Lifehacker US[原文]