マーシャル諸島が独自の仮想通貨を導入する計画が白紙に。国際レベルで警鐘

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マーシャル諸島が独自の仮想通貨を導入する計画が白紙に。国際レベルで警鐘
Image: Eva Seelye/Shutterstock.com

野菜も肉もブロックチェーンでお買い物。

そんな時代の到来の前ぶれかもしれません。太平洋上に浮かぶ日本と同じく小さな島国のミニ国家。Wikipediaによれば「真珠の首飾り」などとも呼ばれている聞きなれない国、マーシャル諸島共和国。サンゴ礁に囲まれ、どうも想像するに楽園のような印象。ちょっとバカンスに行ってみたくなりますね。いけないけど。

この楽園マーシャル諸島共和国が打ち出したびっくりの仮想通貨計画、どうも国際通貨基金のよこやりでこのせっかくの計画がおじゃんになりそうとのこと。

マーシャル諸島のこの仮想通貨計画、一体どんなものだったのか、米GizmodoのRhett Jones記者がまとめてくれました。


賢者の進言か余計なお世話か。

あの国際通貨基金(IMF)が、マーシャル諸島の法定通貨を仮想通貨にする計画を白紙に戻すべく静かに圧力をかけているようです。

人口わずか5万人のマーシャル諸島は、島国です。そのため、あらゆる側面で海外の国々に依存しなくてはなりません。特に、アメリカ。アメリカ軍は1989年に軍事保護に同意しており、マーシャル諸島の法定通貨は米ドルとなっています。現状、どっぷり依存した状態から脱却すべく、導入を計画したのが「ソヴェリン」と名づけられた仮想通貨でした。

IMFの静かな警告

マーシャル諸島の大統領ヒルダ・ハイネは、金融情報のオンラインハブとなるサイト『Finance Magnates』に対し、仮想通貨の導入が「国家の自由に歩み出すひとつのステップ」だと語っています。もちろん、米ドルを廃止することはないでしょう。米ドルと併用する新通貨としての存在が期待されているわけです。

第二次大戦中の核実験に関するアメリカからの賠償も、あと数年で終わりを迎えるマーシャル諸島としては、自立への第一歩を目指したかったのでしょう。イニシャルコインオファリングは資金不足を補填する目的でもあったようです。ところが、IMFからリスクが大きすぎるのでやめるよう、ダメ出しが入ったのです。

仮想通貨とブロックチェーンのニュースサイト『CoinDesk』は、このIMFの報告をいち早くレポートしていました。いくら影響力のあるIMFといえど、仮想通貨の中止を強制することはできませんが、その内容は深刻にとらえる必要があるでしょう。自由連合協定の補助金の打ち切りの不透明さと、あい続く悪天候による災害の発生を引き合いに、IMFは「マクロ経済と経済的な安定性を慎重に考慮するように」と警鐘を鳴らしています。

レポートでは、 アメリカの銀行とドルの中継銀行であるコルレス銀行の取引関係を失う可能性を示唆しています。マーシャル諸島国家が持つ商業銀行はひとつだけ。仮想通貨がマネーロンダリングなどに使用されないように対策をとらなければ、結果的にアメリカの銀行に見捨てられるだろうと懸念を表明しています。さらに、このレポートでは真剣に考慮する必要があるとの警告まで。

マーシャル諸島の今後は?

IMFの結論が間違っているか否かは別としても、楽園みたいなこの島を案じていることは明らか。そして、IMFが経済界に力を持っていることも確かです。仮想通貨はまだまだ大手を広げて経済界には迎え入れられるとは言えません。IMFの専務理事クリスティーヌ・ラガルドは中央銀行に「火をもって火を制す」ために、今すぐブロックチェーンをなんとかするようにとしています。これは、どうもまだまだ世界の金融システムは影の組織によって操られているという一部の考えを支持するもののようでありますが、それでもIMFのアドバイスは貴重であることには違いありません。

マーシャル諸島がこのレポートにどう反応するかはまだ不透明ですが、残念ながらまだまだ実現までは複雑な道をたどりそうです。9月12日に米Gizmodoが入手した情報によれば、マーシャル諸島のデビッド・ポール大統領・環境大臣補佐官は以下のように述べています。

世界初のデジタル法定通貨であるSOVが発行されれば、マーシャル諸島とその住民はデジタル経済に溶け込むこととなります。これにより、居住者は銀行の介入なしに安全にほぼ瞬時に資金を受け取れることになります。このような銀行は長年マーシャル諸島のような小さな島国とは取引を中止するようなことをたびたび口にしてきており、わが国を不安に陥れてきました。これにより、海外の国々への強依存を脱却できるとにらんでいます。
これは大変な努力を強いられるものであり、SOVがマーシャル諸島住民、世界経済にポジティブな影響をもたらすことを確実なものとするためにわたしたちは一丸となって審議に取りかかっているのです。
私たちは、通貨にマネーロンダリング防止のメカニズムがしっかりと組み込まれるよう、あらゆる方法論的アプローチをもって取り組んでいます。IMFをはじめ、​​その他の国際的なステークホルダーとの関わりをさらに深めつつ、今後数カ月間にわたり議定書を審議していく予定です

はたして、世界初の仮想通貨導入国は誕生するのでしょうか?

Source: Wikipedia