Nvidia新世代「RTX 2080 Ti/RTX 2080」レビュー : 最先端のグラフィックカード、その真価がわかる瞬間を待て

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Nvidia新世代「RTX 2080 Ti/RTX 2080」レビュー : 最先端のグラフィックカード、その真価がわかる瞬間を待て
Image: Alex Cranz (Gizmodo US)

「ママ、新しいグラフィックカード買って」「えっ。今のじゃ足りないの?」

「うん、もっと速くないと今やってるプロジェクトがこなせなくて、やっぱGPUは最新じゃなくちゃ」

待ってください。何のプロジェクトなんだか。

こんな凄腕ゲーマーのお子さんにGPUをせがまれても、理詰めでダメと言えるような知識を仕入れておきましょう。米GizmodoのAlex Cranz記者が、Nvidia(エヌビディア)最新にして業界最高峰のGPU「RTX 2080 Ti/RTX 2080」の使い心地を教えてくれました。爆速を求めるあなた、気がはやるのはわかりますが、10月までは待つべし。


RTX 2080 Ti & RTX 2080

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これは何?:私たちが手に入れられる最先端のGPU

価格:「RTX 2080 Ti」1,000ドル〜/「RTX 2080」700ドル〜

好きなところ:とにかく速くて、レイトレーシングにもってこいなところ

好きじゃないところ:とても高価なのと、レイトレーシングがまだ使えないところ

うわっ高っ。思わず二度見する値段。

Nvidia(エヌビディア)から、最新かつ最先端のグラフィックカード「RTX 2080 Ti」と少し抑えめのモデル「RTX 2080」が登場しました。まずはじめに、RTX 2080 Tiの価格はなんと1,200ドル(約13万4900円)。コンピューターを購入できる金額なんですよ。まあまあなスペックのラップトップなら楽に購入できるし、デスクトップだって手の届く額です。PlayStation 4 ProやXbox Oneなら、2台まとめてゲットできますよ! iPhone XもSamsung Note 9だって手に入ります。

グラフィックカードはグラフィックカードの機能しか果たしませんが、1,200ドルのガジェットならさまざまな機能を楽しめます。1,200ドルの価値は人それぞれ違いますから、ガジェットを買う人もいれば、グラフィックカードを買うだっていると思いますが…では、RTX 2080シリーズはどんな人と相性いいんでしょうか?

前世代シリーズも十分満足できる

Nvidiaの先代GPU、10シリーズは2年前に発売されました。今日まで性能も健在で、ほとんどのゲームでまんべんなくその機能を発揮してくれる良いカードです。ただ、いま「ほとんどのゲーム」と言いましたが、仮想通貨のマイニングでもしない限り、このレベルが必要な人なんてプロゲーマーくらいなんじゃないでしょうか。

Photoshop(フォトショップ)で犬の写真を加工したり、動画ツールで猫の動画を編集するのに、ここまで高価なGPUは必要ありません。GPUがいるのは、なにより3Dグラフィックのレンダリングなんです。一般の人が3Dグラフィックをレンダリングをするシチュエーションといえば、激しいゲームプレイくらいしかありません。

「RTX 1080 Ti」と「RTX 1080」は、それはそれは堅牢なGPU。その性能は、AMDのRadeon RX Vega64や56に匹敵します。RTX 1080 Tiの値段は700ドル(約7万8700円)。今回発売された新しいRTX 2080とほぼ同じ価格です。それなら、果たして今回の新型上位モデルRTX 2080 Tiのために300ドル(約3万3700円)余計に支払うことに意味はあるのでしょうか(最低スペックのiPadが買えちゃうぞ)。

新しいGPUの性能を実際に使ってみる

実際に、1,200ドルのRTX 2080 Tiと、800ドル(約9万円)のRTX 2080の比較テストを行ないました。たとえば、4Kテレビの大画面や1440ピクセルのモニタで同じゲームをプレイしてみることに。

うーん、その結果は…ほとんど違いなし。RTX 2080 Tiは優れたハードウェアです。GPUの未来がそこにある、といってもおおげさではないでしょう。でも、あまりにも最先端すぎて、その性能ははっきりいって普通のコンピュータではわかりません

RTX 2080 Tiと弟分のRTX 2080は、Nvidia初の消費者向けグラフィックカード。そのアーキテクチャは新世代GPU「Turing」で構成されています。そして特筆すべきTuringの美点は、人工知能に対応するためのパワフルさなんです。

人工知能といっても、このGPUが動かすのは映画 『2001年宇宙の旅』のHal 9000や殺人ロボットではありません。AIは、ゲームプレイの動きを予測したりするために使われます。Turingアーキテクチャは、リアルタイムにレイトレーシングを行なうためのものなんです。

RTX 2080シリーズの鍵を握るレイトレーシング

レイトレーシングとは、コンピュータが生成した仮想光線の軌跡を追うことで、像のシュミレートを作り出していくレンダリング技術のひとつです。この光線を遮られると、たとえ透明な物体でも光線には歪みが生じます。ゲームなどの仮想世界においては、実世界よりも光の反射をうけやすいんだそう。

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Image: Alex Cranz (Gizmodo US)

最近のゲームでは、この技術によってめらめら燃える炎もかなりリアルに描かれます。でも、現段階の技術では、まだ完璧な現実にはなっていないのです。主人公の瞳や窓に映る炎のゆらぎなど、さらに細かい反射を再現するには、GPUのパワーを借りなくてはいけません。

今回の20シリーズでは、これをリアルタイムでできるようになりました。それ以前のシリーズではできなかった新技術なんです。

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上段、左から右へ: VR接続の新規格「VirtualLink」。 DisplayPort 1.4a、HDMI 2.0b、DisplayPort 1.4a、下段: DisplayPort 1.4a Image: Alex Cranz (Gizmodo US)

残念ながら、Nvidiaの20シリーズのGPUのレイトレーシング機能は、あとひと月くらいは使えそうにありません。Windows 10ではこのチップに対応するソフトウェアがないんです。Windows 10のレイトレーシングにはDirectX系の新しいコンポーネントAPI「DirectX Ray Tracing」とWindows MLが必要です。 10月18日にでるWindows 10のアップデートから使えるようになります。だから、今購入してもせっかくのGPUの機能をフルに楽しめません。アップデートされたとしても、現在このレイトレーシングに対応しているゲームはわずか。 Nvidiaによればたった11作品しかないとのことですが、もちろん将来的には増えていくんでしょう。

十二分なパワフル性能

いずれにせよ、RTX 2080 TiもRTX 2080も十分パワフルなGPUであることには違いありません。これでプレイすれば、ゲームのスピード感はさらに増します。特に4Kではその真価をフルに発揮できるでしょう。4K自体、最新テクノロジーが満載ですからね。

Turing以前のGPUの能力では、一秒のフレームレートが30fpsを超える4Kでのレンダリングに四苦八苦してしまいます。30fpsは映画やテレビで使用するレベルのフレームレートです。しかしゲームでは、ひとコマの間にアクションが凝縮するためより高いフレームレートが必要とされます。日曜ゲーマーなら30fpsでも満足できるでしょう。でも、アクション満載の激闘ゲームを本気でプレイしたいなら、最低でも60、120か、144fpsだってほしいところです。

Nvidiaが10シリーズで実現できなかったことが、20シリーズなら「ファークライ5」や「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」といったフレームレート60fpsの最新ゲームだってお茶の子さいさい。これはベンチマークを見れば明らかです。「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」などの古いゲームや「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」、「オーバーウォッチ」などそれほどレンダリングを必要としないゲームでも、性能は抜群。新シリーズのGPUは業界最速、まさに今もっともパワフルなGPUなのです。

上位Ti、下位2080どちらにするべき?

では、RTX 2080 Tiと RTX 2080のどちらがよいかと言われたら、回答に困りますね。特にコスパはどうかと聞かれたら…。この値段ですから。

たしかに業界最速、 4K対応のコンソールであるPS4 ProやXbox One Xですらかなわない性能です。Nvidiaの従来製品どころか、業界を見回しても匹敵するものはありません。たしかに2080 Tiは驚異の速さですが、果たして1,200ドルの価値があるかは別問題。800ドルからの2080のほうが、コスパ的には勝っているのではないでしょうか? 特に新しいGPUが入っているPCの購入を考えているなら、 580ドル(約6万5000円)のAMD Radeon RX Vega 64や500ドル(約5万6000円)のPS4 Proと比較したって性能的には満足できるレベルだと思います

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Image: Alex Cranz (Gizmodo US)

でも、この決断はレイトレーシング対応が追加されるWindowsのアップデートがリリースされるまで、おあずけで。最終判断にはまだ早い。RTX 2080とRTX 2080 Tiはパワフルかもしれませんが、その本当の威力はまだ誰も知りません。

まとめ

・Turingアーキテクチャに基づくNvidiaの新しい20シリーズGPU。業界最速

・熱い(文字通り熱くなります)。RTX 2080 TiはRTX 2080または1080 Tiよりも300ドル(約3万3700円)値段が高くなっています。

・スピードこそ命のグラフィックカードですが、10月まで待たなくては効果を確認できない。効果を発揮できるゲームの数も限られています。

・今すぐ最速になりたい人以外は、あと少し待つ価値あり。 実際のパフォーマンスを見届けてから買うのが吉

(2018/9/26 19:30 訂正)商品名を「GTX 2080 Ti/GTX 2080」としていましたが、「RTX 2080 Ti/RTX 2080」の誤りでした。謹んで訂正いたします。