人生や仕事がうまくいかないとき、その原因は次の3つに集約されていくのではないでしょうか?

「行動できない」「続かない」「自信がない」。それぞれ別の問題に見えますが、共通している要因があり、「今ここ思考」の習慣が定着すると、モチベーションがつくりだされ、解決できることがあります。

ここでは、「今ここ思考」の習慣を身につけるためのヒントを3つご紹介します。

古川武士(ふるかわ たけし)/習慣化コンサルタント

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関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。約3万人のビジネスパーソンの育成と約500人の個人コンサルティングの現場から「続ける習慣」が最も重要なテーマと考え、オリジナルの習慣化理論・技術をもとに個人向けコンサルティング、習慣化講座、企業への行動定着支援を行っている。主な著書に「続ける習慣」「やめる習慣」「早起きの技術」などがあり、全16冊、計70万部を超え、中国・韓国・台湾など海外でも広く翻訳され読まれている。公式サイト

小さな行動、ベビーステップではじめる

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Image: Arak Rattanawijittakorn/Shutterstock.com

私は社会人になったばかりのころ、社内でも一番厳しい人として有名なN課長の下に配属され、情報システムの営業をやっていました。営業をはじめて1カ月が経ったある日、情報システムの提案依頼を顧客から貰いました。

N課長から「古川、提案書を書いてみろ」と指示されたのです。

私はどうやってつくればいいのかを聞いたのですが、「自分で考えろ」と厳しく突き放されました。1週間後の納期に向けて、私は何をどう進めたらいいのか見当もつかず、ただ時間が過ぎていきます。

結果的に4営業日が過ぎても何も進められず、意を決して怒鳴られることを覚悟しながら「実は、何も進んでいません」と報告をしました。

その時にN課長から言われたのは、「お前は、表紙と目次案ぐらいつくれないのか?」という一言でした。

「なんで、完璧にできないとなったら何も行動しないんだ。はじめから100%できないことぐらいわかっている問題は自分にできることを何もしないことだ」と手厳しく自分の姿勢を指摘されたのです。

確かにシステムの提案書の完成版をイメージし、途方に暮れていた私は今できること、自分にできる小さな行動を見ていなかったのです。

そこで、自席に戻り、表紙・目次案をつくりました。

過去の先輩たちがつくってきた提案書を集めたところ、なんと目次構成はほとんど似ているものだと気づきました。提案書の構成にはパターンがあり、そのまま踏襲できるものがあること、流用できる資料がたくさんがあることがわかったのです。

それらを参考につくると6割ぐらいの情報が埋まりました。それを元に上司に報告に行くと「はじめからこれぐらいやってから持ってこい」と言われたのです。

私はこの経験から、「100%の完成状態だけを見ていると一歩も踏み出せなくなる」「小さな行動(ベビーステップ)を積み重ねれば、解決策やヒントは見えてくる」という教訓を得ました。

今ここから、自分が成長していく未来をイメージする

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私は12年前、起業したてのころ、知り合いからコーチングのコラムを書く依頼をもらいました。執筆料は雀の涙程度ですが、私は初めての執筆の依頼に心がウキウキ。必死に書きました。しかし、私が書いた記事は自分で見ていても実におもしろみがなく、平凡な内容になっていたのです。そこで、自分のコーチングの師匠に見てもらい、「率直にフィードバックをください」と依頼。

次のように言われたのです。

「良いところは、わかりやすくコーチングが解説されていること。ただ、教科書的なコーチングの解説に留まっている印象かな」

私は思っていたことをズバリと突かれた感覚でした。

「そうですよね。おもしろみがないですよね」と肩を落としながら答えると、それに対して師匠が言った一言が今でも強く心に残っています。

「古川さん。でも、そこからはじめるのでは、ダメなんですか?

この言葉にハッとさせれました。私は普段読んでいるコーチングの本と比較して、「こんな記事しか書けない」と肩を落としていたのです。比較対象はこの道10年、20年のベテランコーチや専門家が書いた内容だったのです。

コーチング1年目の私が、いきなりベテランの人と比較して肩を落としているのだと気づいた瞬間でした。同時に、みんな1年目からスタートして20年目を迎えているという事実を無視していたのです。

「そこからはじめるのでは、ダメですか?」という言葉には、未来へ続く成長のビジョンが含まれています。今、ここからはじめて前に進んでいけば良い。足元を見て一歩ずつ進んでいこうというメッセージです。

あれから12年、私も20冊の本を出し、毎月5本の連載を書いていますが、あのころよりは少しマシな記事が書けるようになりました。

自分の史上最高を更新すること

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海外の日系企業でマネージャーを務める女性は、英語に対するコンプレックスがありました。それを克服すべく毎日2時間の勉強を半年ほど続けていましたが、突然続けることができなくなったそうです。

私が理由を聞くと、「現地の人と商談中に、何度も聞き返さないと会話が成り立たない状況になると、激しい自己嫌悪感が湧いてくる」「こんなに勉強しても話せない、聞けていないのは、私に英語のセンスがないからだ」というのです。

私は、この女性の自己嫌悪から解放するために、自分が何と比較しているのかを明確にしてもらいました。

「誰と比較して話せないと思っているのですか?」と聞くと、同じ事務所の男性と答えます。その男性は駐在20年目のベテラン。彼女は駐在3年目です。隣で男性がスラスラと英語を話す姿を見ていると、「私はできない」という想いが強くなり、自信が喪失され、やる気がなくなるのです。

こんなとき、大切なことは比較対象を変えることです。彼女には、過去の自分と比較してもらいました。

私は、「駐在1年目の時と比較して英語力はどのように変わりましたか?」と聞きました。そして、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングのすべてで、どれぐらい上達しているかを数値化してもらいました。すると、英語の勉強の成果が出ていたことを彼女は実感ができました。

大切なことは、「自分史上最高を更新する」こと。

過去の自分よりほんの少しでも成長する。そして自分史上最高になっているという実感がモチベーションになり、継続する勇気になります。

いろいろとお話ししてきましたが、思考の焦点は「今ここにいる自分」で、他人との比較、理想・完璧との比較をしないことです。行動できないとき、続かないとき、誰かと比較して自信がなくなるときは、「今ここ思考」で発想する習慣を身につけてください。


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