翁長雄志前知事の死去に伴う沖縄知事選が9月30日に投開票され、翁長氏の後継路線を打ち出している前衆院議員の玉城デニー氏が、自民党や公明党などが推薦する前宜野湾市長の佐喜真淳氏を破り、当選した。
米海兵隊普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画が、最大の争点だった今回の選挙戦。玉城氏は「反対」を主張してきた。
両候補が接戦が報じられていた中で鍵となったひとつの要素が、公明党支持層の「分裂」だ。
党本部は政府方針を認める立場として佐喜真氏支援を掲げていたが、朝日新聞などの出口調査では、公明支持層の2割以上が玉城氏に投票したという。
公明党沖縄県本部は、辺野古移設に反対していた。こうした背景から、組織戦がうまく機能しなかったのが敗因のひとつになっているとみられる。
実際、玉城氏の支持者が集まる那覇市内の会場では、公明党の支持母体である創価学会のシンボルマーク「三色旗」を持った人の姿があった。
BuzzFeed Newsは、旗を持っていた男性に取材をした。野原善正さん(58)=浦添市=。34年来の創価学会員だという。
「文字通り、組織に反旗を翻して、ひとりで頑張ってきました」
なぜ、組織の意向に反対したのか。
「実質、政府方針に賛成していると言える佐喜真氏を推薦するのは、筋が通っていない。おかしな話です」
「それに佐喜真氏は、(復古的な思想で知られる)日本会議との関係が指摘されていました。池田大作先生の基本理念である平和思想とは相入れない。絶対におかしいと思ったのです」
9月13日の告示日以降、遊説先にできるだけ足を運び、ひとり三色旗を掲げてきた、という。
「少ないが、良心を持った学会員がいるはず。組織に従順になることが、信仰ではない」
創価学会の池田大作名誉会長は、著書『新・人間革命』でも核兵器や基地を沖縄に負担させるべきではない、ということを記している。これは、沖縄創価学会のホームページにも掲載されている言葉だ。
核も、基地もない、平和で豊かな沖縄になってこそ本土復帰である---それが、沖縄の人々の思いであり、また、伸一の信念であった。(『新・人間革命』第13巻 楽土)
伸一とは、池田名誉会長自身のことを指す。
両親が宮古島出身の「うちなーんちゅ」である野原さんは、そうした池田名誉会長の考えに共鳴してきたという。
「辺野古に新基地をつくることは、こうした考え方に反すること。信濃町の本部が勝手に決めた今回の方針には、憤りを覚えます。沖縄の気持ちを、無視しているとしか考えられない」
当選確実が報じられた際は、会場の後ろでずっと三色旗をはためかせていた。他の支持者から、「ありがとう」と声をかけられる場面もあった。
野原さんはこう、言葉に力を込めた。
「宗教を信じるということは、自分の頭で考えないということではありません。公明支持層の票が流れたと聞いて、ひとりで頑張ってきてよかった、と感じました。組織とは違う票を入れようとした人たちに、勇気を送ることができたかもしれない」