ハードウェアがソフトウェアに追いつきつつ。
Pixel 3、日本では11月1日発売。アメリカでは一足早く今月18日発売。それよりもう一足早く米Gizmodoが端末レビューしています。ファーストインプレッションを担当したのと同じ、Sam記者によるレビュー。じっくり使ってみての感想は?
スマートフォンの進化といえば、よりスピーディーに、よりパワフルに、というのが定番です。しかし、今回のPixel 3は、その定番には該当せず。より明るいディスプレイとか、RAMアップとか、背面カメラが〇〇個とかではなく、PIxel 3が何よりも軸に置いているのが「ソフトウェア最優先」の考え方。
ソフトウェアによる、よりスマートでより直感的なスマホ体験。これが、熾烈なスマートフォン市場で、ハード重視の競合他社からGoogle(グーグル)が抜き出るための鍵となっています。Googleがソフト重視戦略をとったのは、これが初ではないものの、Pixel 3ではかつてないほど非常にうまく働いていると思います。
Pixel 3 とは?
これは何?:Googleの最新フラッグシップスマートフォン
価格:Pixel 3は9万5000円から、Pixel 3XLは11万5000円から
好きなところ:構造がよくなった、ワイヤレス充電、カメラすごい、ソフトウェア機能が素晴らしい
好きじゃないところ:価格のわりにスペックがいまひとつ、品質管理に不安、デザインがつまんない
なんといってもカメラ! ソフトとハードのハーモニーで作り出す美写真!
GoogleのモバイルOSであるAndroid(アンドロイド)は、すべてをまとめる存在です。最新版はAndroid 9 Pie。ハード各社のあれこれアドオンがないPixel 3のAndroidは、今まで以上にスピーディーでサクサク。ソフトの面では、Google Assistantがスパム電話をプロックするCall Screen機能はとにかく秀逸。相手の電話番号表示機能以来の大進化と言っても過言じゃないでしょう。
それでも、ソフトウェアで何より1番注目したいのは、やっぱりカメラ。スマホカメラの最近のトレンド「どれだけセンサーのせられるか、リアカメラに何個レンズのせられるか」を完全にぶち破って覆すのがPixel 3です。とっても洗練されたコンピューテーショナル・フォトグラフィー技術で対抗しています。
リアカメラは12MP、iPhoneにもSamsung Galaxyにもひけをとらない色とシャープさ。露光の異なる複数枚から1枚の写真を作り出すGoogleのHDR+モードなら、明るいところも暗いところも色鮮やかです。正直、スマートフォンのカメラでここまでの写真が撮れるのかと驚くレベル。
マシンラーニングによる新機能Top Shotを使えば、目をつぶっているなどのミスショットを自動ではじいて、より良いショットを提案してくれます。これに加えて、Motionフォト、バースト撮影、フォトブースモード、ARを使ったPlaygroundモードなど、写真を撮っている瞬間から撮影後まで楽しめる機能がたくさん。
フロントカメラはデュアル8MP。HDR+と8MPの組み合わせで撮影する写真は、まさにソフトとハードの良ハーモニー。1000ドル台のスマホで撮影したセルフィーが引け目を感じるほど、Pixel 3のフロントカメラ写真はシャープです。さらに、グループセルフィーようの広角レンズがあるので、セルフィー撮るには最高の端末。
正確性ではNote 9、でも色・露出・ディテールではPixel 3が勝っていますね。
iPhone XSの写し方も魅力的ですが、Pixel 3のHDR+はそれを上回る出来。
Note 9の色のほうが好みですが、Pixel 3はディテール(特に木の部分)をよく捉えています。
これは僅差でしたが、Pixel 3はカモメを白飛びさせていないのでベター。
Pixel 3が余裕でこなせるショットだと思ったんですが、Note 9のほうが良いですね。HDR+はまだ完璧じゃないみたい。
ズームするとPixel 3が苦戦している様子がわかります。HDR+はまだ良いハードウェアを置き換えるほどの性能はないですね。
ズームの比較はPixelがズーム率を出してくれないので詳しい比較は難しいですが、Pixelの超解像ズームは建物を水彩画っぽく写しています。
これは五分五分ですね。Pixel 3は地平線のディテールをよく捉えていますが、Note 9はざらざらさを抑えながら色彩をよく捉えています。
細部にこだわったデザイン
次にPixel 3のハードデザインに触れましょう。さんざん言われているので、Pixel 3 XLのでっかいノッチはもうスルー。まずPixel 3が5.5インチディスプレイ(端末縦横145.6mmx68.2mm)で、Pixel 3 XLが6.3インチディスプレイ(端末縦横158mmx76.7mm)。サイズ変更はほんのちょっとですね(Googleの新公式ケースは去年モデルでも使えるほどちょっとの違い)。
では、ハードにおける注目アップグレードは何かと言えば、IP68防水、ボリュームボタンを右に移動させたことで左サイドがすっきりしたこと、そして背面の1枚ガラスデザイン。
前モデルのメタル&ガラスの作りから、1枚ガラスになったことで耐久性アップ。下方のエッチング加工は美しく、ケースつけるのを躊躇するほどです。また、USB-Cポートの内側は黒く塗られ、クリアリー・ホワイトとノット・ピンクモデルの電源のボタンはアクセントカラーが施されていたりなど、細部へのこだわりも◯。
ちょっと不満の残る中身
Pixel 3のパワーの源となるのは、他社のハイエンドAndroid端末でも使われているクアルコムのSnapdragon 845チップセット。容量は64GB/128GB。一部ユーザーから不満の声があがっているのは、RAM4GBというスペックですね。800ドル台(9万円台)からの端末で、これは物足りないような。
これ以上のスペックが必要かと言われればいらないかもだけど、値段から考えるとRAMもう一声にmicroSDカードのオプションとかあってもよかったのではと思います。デュアルフロントスピーカーは以前より音が大きく、ワイヤレス充電機のPixel Standと一緒に使うとPixel 3がミニスマートスピーカー兼ホームハブ的な役目になって良し。
スペックで注目したいのはPixel 3のバッテリー。2915mAhの馬力で10時間50分の長持ち。前モデルのPixel 2が9時間弱だったことを思えば大きなステップアップです。Pixel 3をレビューしたのはたったの1週間弱でしたが、「よく保つなぁ」という強い印象が残りました。一方で、Pixel 3XLは3430mAhで、Pixel 2 XLよりダウン。バッテリーもち自体は長くなるものの、それもたかだか10分ほどで期待にはかなわず。
ソフトの力で他社を追い越す
1週間に満たないレビュー期間といえども、何より感じたのはGoogleのソフトウェアへのこだわりがついに実を結んだなということです。シンプルで使いやすくて詰め込みすぎていないという点でいえば、iPhoneを超えたと思います。Pixel 3は、ユーザーが必要なツール&情報を提供してくれて、ややこしいことなくすっと使える非常によく考えられた端末です。
残念なところ
ガッカリ点として最初に挙げたいのはTop Shot機能。この機能がオンになっているかどうかがわかりにくい! カメラのMotion設定がオンになっていないと、実はTop Shot使えないのですが、これに気づかない人いると思います。
さらに、HDR+などのメイン機能がデフォルトで表示されないのもマイナス点。HDR+強化モードなどいい機能はあるのにカメラの細かい設定まではいらないとオン・オンできないのは難点。Pixel 3のHDR+が素晴らしいだけになおさら残念。
ソフトウェア重視の考えの端末に感動する一方で、なのになぜ?と思わざるをえない点も。たとえば、Pixel 3にはGoogleの人工知能による電話予約のDuplex機能がまだありません(Duplexは多分しばらくアメリカ限定)。ほかにも、暗所撮影で活躍するべきNight Sightモードもまだ。そのうち使えるようにはなりますが、それがいつになるかは不明なんです。
ソフト先行でそれが個性&成功の鍵となるPixel 3ですが、もう少しハードにも気を配ってくれたらとも思います。ベゼルが大きい! Galaxy S8と比べても無駄なベゼルが野暮ったく感じます。あと、XLのあのデカノッチもなんとかならなかったのかとね(ノッチで言えば、フロントにデュアルカメラシステム持ってきているのに、なぜリアには…)・
PixelのSuper Res Zoom機能は素晴らしいけれど、リアルの光学2倍レンズの方が上だし。細かいことを言えば、品質管理にも不安があります。レビュー端末で受け取ったPixel 3とPixel 3 XLのスクリーンの色温度が若干違って気になりました。
ディスプレイ差は生産段階ではよくあることだとGoogleは言ってますし、実際そうなのですが、それでも去年のPixelでも同じことあったのになぁと。AppleやSamsungのフラッグシップ端末で、ここまでスクリーン差を感じたことはないけどなぁと。
まとめ
ちょっと気になる点はあるものの、GoogleがPixel 3という端末に詰め込んだもののすばらしさは否定できません。任天堂的ともいえる哲学で作られたPixel 3。スペックじゃない、ハードじゃない、1番大事なのは全体的なユーザーエクスペリエンスなんだということが伝わる端末です。
メモ
・Pixel 3とはソフトウェア先行・重視のスマートフォンで、ちょいちょい残念な点はあっても概ね成功と言える端末。
・ソフト重視作戦のマイナス点を挙げるとすれば、常にソフトアップデートが待ち遠しいところ。〇〇機能はいつ使えるようになるのかと、生き急いじゃう。
・背面ガラスのエッチング加工やUSB-Cポートの内部を黒く塗るというこだわりの一方で、全体的な端末デザインはいまひとつ感が否めない。
・背面カメラ1つで撮影するPixel 3の写真は素晴らしい。ゆえに、もしデュアルだったらと思わずにはいられず、ハードに不満を持ってしまう。