次世代の三輪スポーツバイク・ヤマハ「NIKEN」のデザイナーに直撃インタビュー

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  • author 野間恒毅
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次世代の三輪スポーツバイク・ヤマハ「NIKEN」のデザイナーに直撃インタビュー
Photo: 野間恒毅

ナニコレーーー!

ヤマハが新しい乗り物を出してきましたよ。その名はリーニングマルチホイール(LMW)の「NIKEN(ナイケン)」です。その特徴は、スポーツバイクなのに前輪が二輪ある三輪の乗り物。 世の中にある三輪の乗り物と違い、傾いて(リーン)曲がるオートバイなのです。見た感じ、かなりいかついデザインです。

「リーンして走る」ってどういう意味?という方はまず動画でどうぞ。まるで前輪が生き物のようにウネウネ動いてるのがわかると思います。

Video: ヤマハ発動機公式チャンネル

今回はこの斬新な走りをみせるLMW「ナイケン」の デザイン担当、安田将啓さんに直撃インタビューを敢行。これまでにない乗り物は、一体何を参考にしてデザインされたのでしょうか?




── 「ナイケン」はこれまでにない乗り物ですが、どのようにデザインしたのでしょうか?

新しい乗り物ですが、あくまでも乗り物のセオリーにのっとって作りました。未来的なデザインをあえて作ろうとしたかというと、そこまでではありません。LMWのメカ(リンクなどの機構部分、構造物)の部分をデザインにどう活かすかが命題でした。


── スポーツバイクタイプのLMWは過去にないものですよね?

はい。スクータータイプのLMW「トリシティ」はありましたが、スポーツバイクタイプは存在しませんでした。なので、「ナイケンは、新しい乗り物感、デザインの広がりを感じられるように作りました。

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ヤマハ・トリシティ
写真:ヤマハ発動機

── メカメカしいのはあえて見せるように残したのでしょうか?

最近はツルンとして、クリーンにまとまっているのが乗り物のトレンドですが、「ナイケン」はメカをあえて見せることにしました。この機構に興味を持っている人にとってはその方が嬉しいのではないか、と考えたからです。乗るのが楽しいのはもちろん、「自分のモノにした」という所有欲を満たし、眺めることすら楽しい乗り物にしたかったんです。

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Photo: 野間恒毅
内部リンク機構(フロントカウルなし)

── 分かります。走らずとも駐車場に停めて眺めて、コーヒーを飲みながら友人と話したりするあの時間ですね

四輪もそういう文化はありますが、二輪車のほうがその傾向は強いと思います。ちょっとマナー的にはよろしくないですが、地べたに座ってバイクを眺めることがありますよね。下から眺めてメカがチラ見えするところに、よろこびを感じるという声もあるので、「ナイケン」もそのように見られることを意識しています。

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Photo: 野間恒毅

── サイズは大きいですが、ヘッドライトやメーターはコンパクトにしていますね

軽い方が運動性能が高まるので、グラム単位で設計者とともに作りこみました。

スポーツタイプのLMWは世の中にないので、デザインに正解がありません。だから自分たちで正解を作るしかないんです。社内でもネット上でも賛否両論がありました。でも、またがる乗りものは、軽さが正義です。必要な機能をコンパクトに、軽くして今のデザインにしました。

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Photo: 野間恒毅

── 参考にしたデザインはありますか?

これまでにない乗り物なので特にありません。メカの見え方、走りの魅力をどう引き出すか、開発メンバーと一緒に考えながらやってきました。獲物につかみかかるようなフロントのボリューム感と、お尻の切り上がった感じが結果的にサソリっぽくなりました。サソリのもつ俊敏さ、獰猛さが一部「ナイケン」に通じるところがあるのではないでしょうか(笑)。

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Photo: 野間恒毅

── カラーは1色(ダークグレーメタリック)でスタートしています。今後、カラーバリエーションの展開はありますか?

今回はスポーツタイプのLMWをアピールするために、レースで使っているブルーをワンポイントにしました。ターゲットユーザーである45歳の大人のツーリングライダーに合わせて、上質な印象のダークグレーメタリックで仕上げています。もちろん1年で終わるモデルではないので、今後カラーバリエーションの追加は有り得ますよ。


── 苦労した点やアピールポイントはありますか?

メカとデザインの融合は苦労しました。実際に見てもらえれば、中まで綺麗にデザインしているところは感じて貰えるはずです。

個人的に好きなビューは斜め後ろの上から。サソリの爪の部分が広がっているところがインパクトがあり、前に広がるボリューム感がすごくあるところを見てほしいですね。

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Photo: 野間恒毅

メカのところはメカメカしいですが、ライダーが座っているところやカウルで薄皮をかぶっているところは上質なラインでまとめてコントラストを出しています。

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Photo: 野間恒毅

これがうしろから迫ってくると、ナニコレという感じになるんじゃないでしょうか。世の中にない乗りものを作って来たので「ギョッ」とする感じはあって欲しいですね。街中で見て最初「ナニコレ」って驚いてもらって、その驚きが「面白い」といって貰える日が来て欲しいです。


── 前二輪の三輪はより安心、安全な乗りものになっているので、これまでオートバイに乗ったことがない人にもいいですよね

(通常の)二輪車は二輪車の楽しみがあります。LMWは三輪なので、コーナーを曲がっているときの遠心力を支える力が強く、安心感をもってコーナーリングを楽しめるのがポイントです。興味をもってもらえたら、ぜひ乗っていただきたいです!

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Photo: 野間恒毅



インタビューしたあと、実際に「ナイケン」に試乗してみました。土砂降りの雨の中、水たまりや川のように流れる水を跳ね上げて走りましたけど、その安心感は絶大。特にブレーキしたとき二輪車は不安定になりがちですが、前二輪でガッチリ路面をつかんで放さない感覚はまさにサソリが獲物をとらえたかのよう。

気になるお値段は178万2000円(税込)。大人のツーリングライダーはもちろん、これから二輪を目指す人にも憧れのマシンとなるのではないでしょうか。まずは三輪の安心感を試したい方にはスクーターのトリシティもあるので、そちらでまずは乗り味を確認するのもいい手ですよ。

Source: NIKEN