「猫の世話は自分でしなさい!」エクアドルがウィキリークス創始者ジュリアン・アサンジを叱った

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「猫の世話は自分でしなさい!」エクアドルがウィキリークス創始者ジュリアン・アサンジを叱った
Image: Embassy Cat/Twitter

自分で世話するって約束でしょ!

良い知らせがあります。イギリスにあるエクアドル大使館でウィキリークス創始者のジュリアン・アサンジ氏のストレスを和らげていた猫はまだ元気にニャンニャンしているようです(ちなみに3万人のフォロワーをTwitterで抱えています)。しかし約2年前にアサンジ氏の子どもからプレゼントされたこの猫ですが、アサンジ氏はちゃんと自分で世話をしていなかったのか、エクアドル政府から「自分で世話をしないなら大使館では飼えない」と条件を突きつけられているんです。これは...まるで小学校のときの私たちじゃないですか。

エクアドルに帰化して駐英大使館に滞在中のアサンジ氏

アサンジ氏は6年間、イギリスのエクアドル大使館に滞在しています。エクアドルの新政権は彼がインターネット経由で他の国の政府とトラブルを起こすのを嫌い、3月には彼のインターネット接続を断ちました。そして先週末には、「Wi-Fi接続、訪問客の受け入れ、大使館の滞在」をキープするための条件を提示したのです。英Guardianはそのコピーを入手し、報じています。

公開された条件に「猫の世話」も入っていた

文書は最初、エクアドルのウェブサイトCódigo Vidrioでスペイン語で公開されました。翻訳によると、アサンジ氏は他の国の政府との政治的な干渉、もしくは他の国の内政に関する干渉とみられる活動をした場合は大使館にはとどまれないとのこと。また彼のペットの猫の「健康状態、栄養、清潔さ、そして適切な世話」の管理を彼がすること、大使館内でアサンジ氏が利用する「トイレやその他のスペースの清掃と清潔維持」をすることも条件として求めています。これ...これも小学校でお母さんに言われた記憶ありますね。

また、大使館のWi-Fiを通じた、彼個人のコンピューターもしくは電話でのみインターネットを使えるとされています。というのも、以前大使館のコミュニケーション・システムに”不正アクセス”していたと咎められているのです。今では許可を得ていない電子機器を大使館に持ち込むことが禁じられています。

このコミュニケーション関連の条件を破った場合、「直ちにインターネット接続は切断」され、猫の世話ができなかった場合は「ペットを別の人物に譲る」こと、と強く述べています。

評判を落とすアサンジ氏のイメージ改善に一役買った猫

エクアドル大使館にアサンジ氏が籠城し始めたのは、保釈金の不払いに関連してイギリスの警察から追われた2012年のこと。大使館の外に出て逮捕された場合、米国に身柄引き渡しをされることを恐れての軟禁状態となっています。当時のウィキリークスは種々の内部告発者や権力腐敗に抵抗する人々を守る存在として称賛されていましたが、その名声も時と共に衰えています。アサンジ氏自身も、その名声を落としています。そんな中で2016年に子猫が登場したときは、イメージ改善の良いチャンスだったわけです。特に猫はオーダーメイドのネクタイを付けていたわけですから、インターネットはいちころでした。

大使館に軟禁状態の父親に子どもが猫をプレゼント...まるで海外ドラマみたいな話だなとメディアが飛びついていたら、昨年子どもがプレゼントした、という部分は真っ赤なウソだということがNew Yorkerへの関係者告発で分かりました。当時は「キャッ(ト)ストロ」「ミチ」「大使館ネコ」といった名前で知られていたこの猫ですが、今だに名前も不明です。しかしアサンジ氏とエクアドル政府、そして新しい大統領Lenín Morenoとの関係はあまりよろしくなく、猫を大使館側で世話をする気分ではないようですね。

逆境は続く

9月にはアサンジ氏はウィキリークスの編集長としての職を辞め、アイスランドのジャーナリストであるKristinn Hrafnssonにその座を譲っています。現状ではオンライン・メディアの運営は非現実的になっていることは一因であるものの、政治的なポジションから退くことでインターネット接続を回復させることも狙いだと思われます。

アサンジ氏の弁護士であるCarlos Povedaさんは、アサンジ氏にまだインターネット接続は与えられておらず、条件が提示されたメモも公式には英語に翻訳されていないため読めていないとGuardianに語っています。「新政権は亡命者としての彼の人間としての基本的尊厳を無視している」と彼の状況に抗議しているようです。

アサンジ氏にとっては厳しい環境が続きますが、彼を支持している人とオフラインではコミュニケーションは取れているようです。おそらくこの状況で一番の同情を集めているのは、命令されないと猫の世話もできないようなエゴの塊中年男性に飼われてしまっている猫でしょう。

Source: The Guardian