1,500ページの説明書はもう不要です。
NASAが飛ばす宇宙船オリオンは、ロッキード・マーティン社が開発を行っています。そのエンジニアたちは、その組み立てに複合現実ゴーグル「HoloLens」を使用しているんですって。
MIT Technology Reviewによりますと、ロッキード・マーティン・スペース・システムズの生産操業部副社長、ブライアン・オコーネル氏は「大体いつも、我々は初めてのものを組み立てているんです」とコメントしています。たとえば工場で何千個も同じものを作っていたら、身体が作り方を覚えてしまうことでしょう。ですが1点モノの宇宙船はそうはいきませんし、しかも失敗が許されないのです。
伝統的には、1,000ページ以上の説明書を作業員たちと読むのですが……近年はボーイングもエアバスもARに移行しており、ロッキード・マーティンもそれにならうようになった、とのこと。
作業現場では
ジョリー・デッカー氏は、オリオン開発でHoloLensを毎日使う宇宙船技術士のひとり。ロケット開発はしょっちゅう遅延が生じることもあるため、スケジューリングがとても重要。毎朝HoloLensで午前中にすることを予習します。
ゴーグル越しにMR(複合現実)で見るオリオンは、「Scope AR」というソフトで作られた段階別のCGモデルが現物の上に重なって見えるようになっています。
自分たちが担当する場所の、ネジの締めかた、部品をどのように回転させて組むのか、などの指示が見えます。別のチームの担当箇所と区別するために、パーツの色を変えるなど違う工夫が凝らされており、間違いが起こりにくい環境ができあがっているのです。
このおかげで、1500ページの説明書に頭を悩ませながら作業することがなくなりました。マークされた場所を迷わず穴開けすればいいんですもん。作業効率も劇的に上がったそうです。
将来は
NASAはいつか宇宙空間でも、飛行士たちが船の修理などをするときにHoloLensを使えるようにしたいと考えているそうです。ブ厚いマニュアルすべてがゴーグルひとつにおさまれば、荷物の軽量化になりますし、ゴーグル越しに指示通りに作業すれば間違いも減ることでしょう。
アメ車のフォードもプロトタイプ制作にはHoloLensを使いますし、エンタメ以外での活躍の場も広がっているHoloLens。おそらくあと数年で、世界中ほとんどの大企業がこれを使ってモノ作りをするようになるかもしれません。
Source: MIT Technology Review