ハードウェア

Appleは修理代金を高額にする一方でユーザーの「修理する権利」を奪おうとしている

by Morten Skogly

Apple製品の不具合でApple Storeなどの窓口に修理を依頼すると、原因はちょっとしたハードウェアの不良と思われるにもかかわらず、「主要部品の交換が必要」として驚くほどに高額な修理代金を請求されることがあります。そんなAppleは正規の修理窓口で高額な修理代金を請求する一方で、ユーザーが自身の手で購入した製品の修理を行う「修理する権利」を奪おうとしていると指摘されています。

'Complete control': Apple accused of overpricing, restricting device repairs | CBC News
https://www.cbc.ca/news/thenational/complete-control-apple-accused-of-overpricing-restricting-device-repairs-1.4859099

Appleは「Apple StoreまたはApple認定修理業者に持ち込まれたApple製品のみが保証対象になる」としており、無認可の修理業者に対しては商標侵害を理由に訴訟を起こすなど厳しい立場を取っています。IT系メディアのMotherboardで編集長を務めるジェイソン・コーブラー氏は、以前にMacBookのスクリーンを壊してしまった際にApple Storeへ修理を依頼したところ、スクリーンの修理に700ドル(約7万7000円)もの修理代金を請求されたとのこと。

「結局私は自分でMacBookを修理することにして、たったの50ドル(約5500円)で修理できてしまいました。Apple製品の修理に関しては、そんなことが頻繁にあります」とコーブラー氏は述べています。Appleが個人でも修理可能な不具合について、サードパーティーの修理業者に比べて高額な料金を請求する理由として、コーブラー氏は「修理というスケールではAppleにとって大きな利益が得られないからでしょう」と語りました。

by https://toolstotal.com/

Appleはこの件についてのコメントを拒否しましたが、「修理依頼で製品を持ち込んだユーザーに対し、必要以上の修理代金を請求しているという事実はない」と事実関係を否定しています。そこで、CBCニュースは「ディスプレイがうまく表示されない」という単純な問題を抱えたMacBook ProをトロントのApple Storeに持ち込み、実際にどれほどの料金が請求されるのかを試してみたとのこと。

スクリーン表示の不具合は、実際のところ簡単な修理で不具合を修正することができるそうです。ところが、Apple Storeの従業員は「ダメージを受けた部品を全て取り替えなくてはならない」と主張して、工賃も含めて1200ドル(約13万2000円)もの修理代金を請求してきました。

「ダメージを受けた部品を修正するもっと安価な方法はないのでしょうか?」と尋ねてみても、Apple Storeの従業員はそのような方法はないと突っぱねました。「修理代金が新しい端末を購入する代金とほぼ同じだ」という点は従業員も認めたものの、店内で修理するとなるとこの修理価格になってしまうと従業員は語ったそうです。

by Niels Epting

マンハッタンでAppleの認証を受けることなくApple製品修理業を行っているルイス・ロスマン氏は、大学生のころに趣味としてコンピューターの修理を始めたとのこと。ロスマン氏はApple製品の修理方法についての解説などを行うYouTubeチャンネルを運営しており、63万人を超えるチャンネル登録者数を誇っています。

CBCニュースはトロントのApple Storeへ修理に持ち込み、「1200ドル」という修理代金を請求されたMacBook Proをロスマン氏の修理工場へ持ち込んでみたそうです。すると、ロスマン氏はすぐにノートPCのバックライトに接続されているはずのピンが、うまく接続されていないことを発見。不具合のあったピンを調整すると、問題であったスクリーンがうまく映らないという現象は解決しました。

「修理代金は1200ドルもしません。もしもピンを曲げるだけという依頼ならば、私の場合は修理代金すら請求しないでしょう。ピンをまるごと交換して欲しいという場合は、75ドル(約8400円)から150ドル(約1万7000円)の間で代金を請求します」と、ロスマン氏は語ったとのこと。

by Yutaka Tsutano

Apple製品を購入したユーザーが自身で製品の修理ができる「修理する権利」を訴えるiFixitでは、Apple製品に限らずさまざまな製品を分解し、さまざまな不具合を修理する方法について発信しています。iFixitには125人のスタッフが勤務しており、修理法のオンラインマニュアルの販売などで年間2000万ドル(約22億6000万円)もの売り上げを得ているとのこと。

iFixitの創設者であるカイル・ウィーンズ氏は、まだ10代の大学生であった2003年に友人とiFixitを立ち上げました。修理する権利を訴える活動にも積極的に参加しているウィーンズ氏は、法律を改正して無認可の修理業者がビジネスを続けられるように働きかけています。「修理する権利とは、ユーザーが購入した製品を自身で修理したり、地元の修理店に持ち込んで修理してもらう権利です。かつて、自分で購入したものはユーザー自身の手で修理するのが一般的でした。ところが、長年の間に私たちは自分で製品を修理するスキルを失い、企業は修理に役立つ情報にユーザーや修理業者がアクセスできないようにしています」とウィーンズ氏は述べました。

長年にわたってAppleとの戦いを続けているウィーンズ氏は、「Appleは修理する権利を認めたがっていません。Appleは自社の製品について、ユーザーが購入した段階から修理、廃棄の段階までの全てにわたって支配することを望んでいます」と語ります。修理する権利を認めることは、Appleによる「完全な支配」の一部をユーザーに渡してしまうとのこと。Appleは複数回にわたってiFixitに対する法的措置をとると脅してきているそうですが、ウィーンズ氏はそれに屈するつもりはないようです。

by Andrew Mager

ウィーンズ氏はAppleがバッテリーを所定の箇所に接着して外せなくしたり、独自のネジを使用することで簡単に分解できないようにしたりといった方法で、物理的にもユーザーや無認可の修理業者がApple製品を修理できないように工夫していると語ります。また、オンラインで修理マニュアルを公開した業者に対して訴訟を起こしたり、中国などから出荷されるサードパーティーの修理用パーツを、政府機関に働きかけて押収させるといった活動も行っているとのこと。

Appleが必死に製品への完全な支配を実現しようとする一方で、修理する権利を認める動きは広まりつつあるそうです。アメリカのいくつかの州では、購入した個人やサードパーティーの修理業者が修理を行えるように、Appleなどの企業に対しマニュアルを配布するように求める法案が検討されています。ウィーンズ氏はどこかの州で法案が通過すれば、ダムが決壊したように一気に多くの州で法案が通過すると予測しています。

ロスマン氏は修理する権利について、Appleは自社が積極的にやりたがらない修理などのビジネスについて、サードパーティーの業者や個人が自分でやることを認めるべきだと考えています。また、ロスマン氏自身は多くのことを望まないとしており、「Appleには民間の修理業者をつぶさないことだけを願う」と述べました。

by David Stillman

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in モバイル,   ハードウェア, Posted by log1h_ik

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