空港で不思議な動画を見かけたら、それはあなたの命を救う錯視動画かも

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  • author 傭兵ペンギン
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空港で不思議な動画を見かけたら、それはあなたの命を救う錯視動画かも
Image: Anthony Boigné

インターネットではおもしろ動画の一種として広く親しまれている、視覚の錯覚を使った錯視動画。実は思わぬ方向で活用する研究が進められているのだとか。

米GizmodoのGeorge Dvorskyの記事によると、フランスのレンヌ大学の研究者チームが、飛行機などに鳥が衝突することで大きな事故にもつながる「バードストライク」を防ぐため、鳥の目の錯覚を活かした実験が、空港で行なわれたとのこと。

バードストライクはかなり深刻な問題で、1990年から2016年までの間に世界中で累計250人を越える死者が出ているというデータもあり、長らく対策が試みられてきているのですが、完全に防ぐ手段はまだ確立されていません。

そんな中、今回の実験を行った研修者たちは猛禽類の良すぎる視力に着目。

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Image: Anthony Boigné

実は猛禽類はそのイメージの通り遠くからでも小さなネズミなどを見つける驚くべき視力を持っているのですが、その一方でジェット機のように早く動いたり、窓ガラスのように反射するものを見つけるのが苦手。なので、ジェット機や窓ガラスに近づきすぎてしまいバードストライクの原因となっているのです。

そこでそんな猛禽類の視力の性質を踏まえた上で、猛禽類が嫌がる画像・動画を研究、テストを200回ほど繰り返して一番効果があったのが、「目がゆっくりと大きくなり迫ってくる動画」だったのだとか。その動画自体は公開されていませんが、研究された画像・動画の一覧にある静止画(右下)を見る限り、ちょっと可愛くって、全然怖くはない感じ。

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Image: M. Hausberger et al., 2018/PLoS One

ですが、その動画を流すモニターを、フランスの猛禽類やその他の鳥がよく集るというタルブ・ルルド・ピレネー空港に設置したところ、8800匹以上いた鳥たちの数が、モニターの見える範囲ではその数を大きく減らし、さらには5週間経った後も、鳥たちはその動画に慣れることがなく効果を発揮し続けたのだとか。

モニターが見えないところでは、猛禽類たちの数は変わらなかったということで、やはり目の動画は効果があった様子。ちなみに、何故かカラス科の鳥類にも同様の効果を発揮した一方で、スズメ目には効果が出なかったのだとか。後者は目の構造が違うからなのかも?

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Image: M. Hausberger et al., 2018/PLoS One

というわけで実際に効果があったわけですが、具体的に迫ってくる目が効果的なのかどうかはまだ不明で、これからさらなる研究が必要とのこと。すべての鳥に効果があるわけじゃないあたり、大きい目が何かの動物に見えて怖いからとか単純な理由ではない可能性もありそうです。

バードストライクは空港だけでなく、高層ビルや風力発電のタービンなどでも起こっている問題なので、これから研究が更に進んで近い将来、この空港や街中で見かける日が来るも来るかもしれませんね。

Source: PLoS One via Gizmodo USUnited States Department of Transportation