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フェンダー、3Dプリンタや独自BA活用の新イヤフォン「Pro IEM」

アユートは、FENDER(フェンダー)ブランドのユニバーサルイヤフォン新製品として、「Pro IEMシリーズ」5製品を11月から随時発売する。価格はオープンプライス。税込の店頭予想価格は、「THIRTEEN 6」が263,980円、「TEN 5」が164,980円、「TEN 3」が109,980円、「NINE 1」が36,280円、「NINE」が14,280円。下位モデルの「NINE 1」と「NINE」は別記事で紹介する。

「THIRTEEN 6」

なお、フェンダーのイヤフォンやBluetoothスピーカーなどのオーディオ製品はこれまで、完実電気が国内輸入代理業務を行なってきたが、11月1日からアユートへと業務移管される。移管に伴い、11月1日以降は、アユートが販売とユーザーサポートの全業務を担当。これまでの国内正規品の保証対応、ユーザーサポートも引き継ぐ形となる。

新製品「Pro IEMシリーズ」5機種の内、NINEを除く4機種は、ダイナミック型とバランスドアーマチュア(BA型)のハイブリッド。NINEはダイナミック型のシングルユニットを採用している。全モデル、テネシー州ナッシュビルの「FENDER AUDIO DESIGN LAB」で設計されており、生産も低価格な「NINE」以外はこのラボで行なわれている。

なお、製品名はドライバの種類や大きさ、数を示している。頭の英語の数字が、ダイナミック型ユニットのサイズ、それに続く数字がバランスドアーマチュアドライバの数となる。例えば「THIRTEEN 6」は、13mm(正確には13.6mm)のダイナミック型と、6基のBAを搭載している事を意味している。

THIRTEEN 6

最上位の「THIRTEEN 6」は、シェルの製作に3Dプリント・デジタル・ハイブリッド・テクノロジーを採用し、3層構造デザインのハウジングを採用。シェルの形状には、様々な人の耳型のデータを元に開発したという独自アルゴリズムを採用。「カスタムに近いフィッティングを実現」したという。カラーはFlat Black。

シェルの製作に3Dプリント・デジタル・ハイブリッド・テクノロジーを採用

13.6mm径のHDダイナミック型ドライバーと、HDBA(HYBRID DYNAMIC BALANCED ARMATURE)ドライバーを6基搭載。BAの構成は、超高域×2、高域×2、中域×2となる。

HDD(HIGH DENSITY DYNAMIC)ドライバーの振動板には、高密度マグネシウム-チタン合金を採用。HDBAドライバーとは、FENDERが独自設計したハウジングに最適化を施したBAドライバーの事。

APE(ATMOSPHERIC PRESSURE EQUALIZATION)ポートも搭載。最適化されたエアフローを生み出すもので、振動板の動きをよりスムーズにして、「ワイドなサウンドステージと、ディープでタイトな低音を実現」するという。

再生周波数帯域は8Hz~24kHz。インピーダンスは34Ω@1kHz。感度は112dB@1mW。

ケーブルは着脱可能で、2pinコネクターをベースとしながら、より強度の高い接続を可能にするという独自デザインの「Talon 2pinコネクター」を採用する。イヤーピースは、フォームタイプ3サイズ、TPEタイプを4サイズ同梱。標準プラグへの変換コネクタ、デラックスキャリングケースなどを同梱する。

独自デザインの「Talon 2pinコネクター」

TEN 5

上位モデルと同様に、3Dプリンターを使ったシェルを採用。形状にも独自アルゴリズムを採用している。カラーはFlat Black、Silver Burst。

「TEN 5」。左からFlat Black、Silver Burst

ユニットは、10mm径のHDダイナミック型ドライバーと、HDBAドライバーを5基搭載。BAの構成は、超高域×1、高域×2、中域×2。ダイナミック型の振動板は高密度マグネシウム-チタン合金。エアフローを最適化するAPEも導入している。

再生周波数帯域は9Hz~21kHz。インピーダンスは34Ω@1kHz。感度は111dB@1mW。ケーブル着脱可能で、Talon 2pinコネクターを採用。イヤーピースは、フォームタイプ3サイズ、TPEタイプを4サイズ同梱。標準プラグへの変換コネクタ、デラックスキャリングケースなどを同梱する。

「TEN 5」Flat Black
「TEN 5」Silver Burst

TEN 3

独自アルゴリズムを用いた形状のシェルを、3Dプリンターで作っている。カラーはFlat Black、Pewter。

「TEN 3」のFlat Black

ユニットは、10mm径のHDダイナミック型ドライバーと、HDBAドライバーを3基搭載。BAの構成は、超高域×1、高域×1、中域×1。ダイナミック型の振動板は高密度マグネシウム-チタン合金。エアフローを最適化するAPEも導入している。

再生周波数帯域は9Hz~20kHz。インピーダンスは33Ω@1kHz。感度は111dB@1mW。ケーブル着脱可能で、Talon 2pinコネクターを採用。イヤーピースは、フォームタイプ3サイズ、TPEタイプを4サイズ同梱。標準プラグへの変換コネクタ、デラックスキャリングケースなどを同梱する。

「TEN 3」のPewter

音を聴いてみる

発表会場で短時間ではあるが、音をチェックしたので傾向をお届けしたい。フェンダーのイヤフォンは、全体の傾向として低域がパワフルな点が挙げられるが、新シリーズではいずれも低域がよりタイトになり、分解能もアップしたと感じられる。

個々の特徴としては、最上位「THIRTEEN 6」(実売263,980円)は、豊富なユニット数を活かしたリッチかつゴージャスなサウンドが特徴。最上位らしくワイドレンジな再生が可能で、肉厚な中低域もポイントと言える。

「TEN 5」(同164,980円)と「TEN 3」(同109,980円)は、どちらもモニターライクで、非常にバランスのとれた再生音だ。TEN 5の方がより低域の沈み込みが深く、ワイドレンジ。どちらも低域が強く主張するバランスではなく、比較的ニュートラルで、音楽を選ばない基本的な再生能力の高さが光る。多くのユーザーにオススメできそうな2機種だ。

「イヤモニターの利用は今後も増えていく」

アジア・パシフィックのCEセールスを担当するチャーン・ウェイ・マー氏は、全モデルの設計と、「NINE」の生産を手がけるテネシー州ナッシュビルの「FENDER AUDIO DESIGN LAB」について、「専業エンジニアだけでなく、ミュージシャンとしても活躍していたり、サウンドエンジニアでもある人達が働いている。テクノロジーだけでなく、音楽を心から愛するメンバー達だ」と紹介。基本的な音作りは、従来モデルから今回の新モデルも含め、開発担当のデール・ロット氏が手がけている。

テネシー州ナッシュビルの「FENDER AUDIO DESIGN LAB」

新シリーズの上位モデルに共通する特徴は、シェルを3Dプリンターで作っている事。ラボには約12,000件の耳型データがあり、それを用いて形状を決定。「95%くらいの人に、完璧にマッチするような形状になっている」という。

アジア・パシフィックのCEセールスを担当するチャーン・ウェイ・マー氏

ケーブルは、カスタムイヤフォンなどで使われる2pinをベースとしつつ、接続信頼性などを高めた「Talon 2pin」を採用。「MMCXは外れやすく、信頼性がやや足りないと感じたため」だという。なお、バランスケーブルの発売は現時点で予定は無く、「ケーブルメーカーから、いいものが沢山でているのでそちらを使って欲しい」とした。

フェンダーのコンシューマ向けオーディオ機器のラインナップ

フェンダーミュージックの代表取締役社長でありアジア統括のエドワード・コール氏は、有料音楽配信サービスを楽しむ人が増加し、劇的に変化する音楽市場について、「音楽配信のトップ10においても、半数以上の音楽は、ギターが印象的な曲だ。市場は様変わりしているが、ギターはまだまだ愛される存在だと感じている」と語る。

代表取締役社長でありアジア統括のエドワード・コール氏

さらに、日本を含め、世界で音楽フェスが増加。観客も増加している事を紹介しながら、「近年のライブシーンでは、足元にモニタースピーカーを置かず、イヤモニターやヘッドフォンを使うのが当たり前になっている。今後も、イヤモニターの利用は増えていくだろう」と予測。

また、「ギタープレーヤー1人1人をサポートするというのがフェンダーのミッションだが、私達が考えるギタープレーヤーは、プロだけでなく、始めたばかりの人、いつかギターを演奏したいとあこがれている人、良い音で音楽を思い切り楽しみたい人も含まれている。そうした人達に向け、我々の製品からすばらしい音楽を聴いていただき、楽しんでいただき、いずれ演奏も始めて欲しいと思っている」とした。

さらに、新たなディストリビューターとしてパートナーを組むアユートについて、「オーディオだけでなく、ライフスタイル提案型の販路も持ち、新製品を販売拡大していけると期待と信頼を寄せている」と語った。

左からチャーン・ウェイ・マー氏、エドワード・コール氏、アユートの渡辺慎一代表取締役社長