サイエンス

鼻呼吸によって記憶力が強化されることが判明


呼吸が脳の活動、特に記憶に対してどのような影響を与えるかという研究を行っていたスウェーデンのカロリンスカ研究所の研究者が「鼻呼吸を行うことで匂いの記憶は強化された」という実験結果を発表しています。

Respiration modulates olfactory memory consolidation in humans | Journal of Neuroscience
http://www.jneurosci.org/content/early/2018/10/22/JNEUROSCI.3360-17.2018


Breathing through the nose aids memory storage -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/10/181022141509.htm


何かの匂いをかいだ時、匂いの元となる分子が鼻の奥にある嗅覚受容体に結合し、受容体の電気信号が嗅覚受容神経を通じて「嗅球」と呼ばれる脳組織に到達します。そして、嗅球が信号を元に処理した嗅覚情報を大脳へ送ることで、嗅覚が認識されていると考えられています。

この嗅球は、記憶に関わる脳組織である海馬との間にも回路を持ち、嗅覚と記憶が密接に関係していることは、これまでの研究からも明らかとなっていました。このことから、カロリンスカ研究所で臨床神経科学を研究するArtin Arshamian氏は「口呼吸ではなく鼻呼吸によって匂いに関する記憶が強化されるのではないか」という仮説を唱え、比較実験を行いました。

Arshamian氏率いる研究チームは、被験者に12種類の異なる匂いをかがせました。その後、1時間にわたって口呼吸あるいは鼻呼吸を行わせたあと、「最初に嗅がせた12種類の匂い」と「全く別の12種類の匂い」を嗅がせて、以前に嗅いだことのある匂いかどうかを調査。その結果、1時間鼻呼吸を行っていたグループの方が、口呼吸を行っていたグループよりも匂いを強く記憶していたことがわかりました。

記憶の過程は「符号化」「固定化」「想起」の3段階に大きく分けられます。Arshamian氏は、今回の実験結果から「呼吸が記憶の固定化に影響を及ぼす」ことが示されたと論じています。

by affen ajlfe

ただし、鼻呼吸が具体的にどのように記憶の固定化に影響を与えているのかというメカニズムは解明されていないとのこと。Arshamian氏によると、以前までは電極を脳に直接挿入しなければ嗅球の活動を測定することができませんでしたが、2018年現在は電極を挿入しなくても測定できる方法が確立されているそうです。Arshamian氏は「次の目標は、呼吸中に脳内で実際に何が起こっているのか、そしてそれが記憶の形成にどう関わっているのかを調べることです」と答えています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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