どうかお気をつけて。
地球温暖化で海面が上昇したら、真っ先に危機を迎えるイメージなのが……イタリアにある“水の都”ヴェネツィア。迷路のように入り組んだ小道と、街中をグルっと通る大きな運河、それに細かく枝分かれした細い運河では、代名詞ともいえるゴンドラが観光客を乗せてドンブラコと舵を切ります。
そんな情緒あふれる街が、10月28日の嵐による大雨と高潮の影響で3/4が水没。サンマルコ広場など海に近いエリアでは、海水が成人男性の股下くらいまでの水位まで上昇してしまいました。
歴史的な洪水
今回の氾濫は、何世紀にも渡るヴェネツィア史上10番以内に入るほどの規模。なので観光客は足を踏み入れられず、土産屋もレストランも店仕舞いを余儀なくされることに……。
そして元々開催予定だったマラソン大会にも影響が生じ、ランナーたちは膝の下くらいまでの水位の中、ザブザブと走るハメになりました。
その原因は?
嵐の原因は、イタリア北西部を中心とする低気圧が南から北へと暴風雨を巻き起こしたこと。BBCによりますと、この日イタリアの西海岸では風速が時速約177kmまで達し、カテゴリー2のハリケーン並の猛威を奮ったのだそうです。これはこの地域では、非常に稀な気象条件だったのだとか。
NBCコネチカットの気象学者ライアン・ハンランさんが、この日のイタリアは通常から比べて5標準偏差だったとツイートしています。
Massive windstorm yesterday in Italy was the result of a strengthening 980hpa low off Sardinia. That's -5 standard deviations form normal! pic.twitter.com/iCN5mIsHA8
— Ryan Hanrahan (@ryanhanrahan) 2018年10月30日
風が低気圧の中心に向かって吹きすさんだせいで、アドリア海の海水を集めて街へと運ぶことになりました。加えて日曜日の高潮と重なり、マラソンのゴール手前数キロは泳ぐように走ることになったといいます。
次いで月曜日に近づくに連れ、大洪水が発生。潮汐が海抜1.5mを上回り、歴史的な高潮のひとつとなりました。なので水位が上がった時に活躍する板張りの歩道も、さすがにこの日は用をなさなかったそうです。
1966年から続く街の記録を見ても、ここまでの高潮は2008年以来なのだそう。これから最高水位より目減りしていくものの、数日間はこの氾濫が続くだろうと考えられています。
そんな中、観光客たちは長靴を履いて街を巡っています。
One heck of an "Acqua Alta" in Venice. A powerful storm in on the west coast of Italy sent a big storm surge up the Adriatic. Tourists apparently took it in stride. Video Courtesy: Igor Petricevic pic.twitter.com/nM53lwsHIv
— Ryan Hanrahan (@ryanhanrahan) 2018年10月30日
昔と比べると
何百年もの間、海と共存してきたヴェネツィア。大気汚染による気候変動は世界の海面水温を急上昇させ、1872年以来、この地方の海水面は30cm以上も上昇しています。2010年代には、1870年以来10年単位で見て120cm以上の高潮が散見するようになり、水位が通常より50cm下がる低潮は皆無となりました。
このままでは水没?
この調子でヴェネツイアはどんどん水の中に埋もれ、いずれは現代のアトランティスになってしまう危険性も。しかしこれは、世界中にある海沿いの都市で起こり得るのです。国連は気候変動による災害を抑えるには、あと12年しかないと報告しています。
12年どころか一刻も早く二酸化炭素を減らさないと、島国ニッポンも明日は我が身となるのでしょうね。
Source: BBC, Twitter, City of Venice