クロマグロや二ホンウナギが捕れなくなっている、穀物の収穫量が減って手に入りづらくなる、 たんぱく源が少なくなるから代替食が必要になる、だったら昆虫を食べてみよう…。

日ごろ目にする食料資源の報道を見るたびにつのる、未来の食卓への漠然とした不安。

いまこんなに食べ物があるのに、本当に食べられなくなるの?どう変わってしまうの?何をしたらいいの?

いち消費者として、たとえば「10年後の食卓」のために何ができるのか。そんな疑問を食にかかわる仕事をしている人たちにぶつけてみました。

10年後に食が大きく変わることはないはず、ただし

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Image: KPG_Payless/Shutterstock

編集部が提示した「未来の食卓はどう変わっていると思いますか?」という問いに、ほとんどの人が「今とあまり変わらないと思う」「手に入らない・食べられない食材が増えていく」の両方を選択。

変わらない人も変わる人も、つまり住む場所や普段食べるものによってどちらの状況も起こりうると考えられます。

今の食事をそのまま続けていきたいなら、自分と食材との関係をこれまで以上に意識していく必要がありそうです。では、どのように気を付けていけばよいのでしょうか。

「10年後もおそらく先進国は「無いものがない」状態なのは変わらないはず。先進諸国が食糧難をリアルに実感しているかはやや疑問。

どちらかというと、うなぎや秋刀魚のように将来食べることが困難になってしまう食材を通じて、賢い消費を実践するようになるのでは。

自分たちの食事内容がどのような環境に負荷を与えていて、どのような消費形態が環境の負荷を減らすのかを学ぶことが重要なのではないでしょうか」

クックパッド株式会社 研究開発部 伊尾木将之さん

「東京はミシュランガイドで世界一に輝いた美食の都市ですが、一方で食材の作り手に思いを馳せる人は多くないと思います。

生産者のことを思いながら食事をするだけでもいつもより美味しく食べられ、食のことを考えるきっかけになります。

また、世界的に考えると、先進国、後進国との不均衡が問題。Table for Twoなど食の不均衡をなくすための仕組みを積極的に利用すると良いのでは」

オイシックス・ラ・大地株式会社 広報室 室長 大熊拓夢さん

課題は、フードロス。実は身近なことから解消できる

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Image: Mix3r/Shutterstock

先進国では、足りないのではなくて、ありあまる食材を正しく活用できていないこと。

見えてきたのはフードロス(食品ロス)というキーワード。いかにして食材を無駄にせず食べるか。作ったものを無駄なく売り切るか。食品を売る側はもちろん、それを使うレストランや家庭での食品廃棄を減らすことも課題だといいます。

フードロスと聞くと、自分とは遠い壮大な話と思ってしまうかもしれません。けれど、一人ひとりの意識で問題に取り組むことはできるのです。

まずは、買い物の仕方を変える

たとえば、まとめ買いをして使いきれず食材を無駄にしているなら、毎日食べられるものだけを買うようにする。すぐに食べるならスーパーでお得になっている消費期限が迫っていたり、余剰している見切り品を買うなど、日常のちょっとした意識で食料廃棄を減らす努力はできるもの。

また、手軽にお得にフードロス対策できるフードシェアリングの仕組みも増えてきています。

お店で余ってしまった食べ物と消費者をつなぐフードシェアリングアプリTABETEや、周辺の余剰食品を月額定額でテイクアウトできるアプリReduce GOを利用する。

余剰品を買って社会貢献活動ができるKURADASHI.jpで買い物をしてみるのもよさそう。

大手スーパーや小売店でも定期的に「ワケあり商品セール」が開催されていることも。

そういったものも、実は未来につながるフードロス対策なのだと知ると、遠い話に思えた問題がぐっと身近に自分事化できます。

まずは、買う場所や買い方を変えてみる。これならすぐにでもできそうです。

食べ方を変える

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Image: 7grwb/Shutterstock

食べ方についても、なるほど!と思う提案が。

「宴会などでの最初の30分終わりの10分は席を離れずに食事に集中する、3010(さんまるいちまる)運動を身近な会合からさらに広げる」

生活協同組合 広報 Aさん

たしかに! 大勢が集まる会合では、つい話に夢中になって気づけば全然食べていないということも。 いっそ食べきれないコースはやめて、アラカルトで食べられる分だけ頼むという選択をするのもよさそうです。

普段の食事でもたくさん作って余らせるのではなく、無駄なく使って適量を意識したいところ。

食に関わる人たちのフードロス対策

食に関わる人たちは、企業としても個人でも様々な取り組みをはじめています。

たとえば、クックパッドの横尾祐介さんは、社外メンバーと新たに実行委員会を立ち上げ、フードロスをテーマにしたクッキングバトルイベントをスタート。

「残り食材を使っていかにクリエイティブな料理を作れるかを勝負するクリエイティブクッキングバトルというフードロス解消イベントを実施しています。

味や見た目だけでなく、食品を無駄なく使いきれるか(生ごみの量)も審査の重要なポイントなんです。制限がある中で料理することで体感として食品ロスの気づきを得てもらうことも目的にしています」

クックパッド コーポレートブランディング部 部長 横尾祐介さん

じつはこのバトルに私も参加したのですが、食材をいかに使い切るか、さらに普段使いなれない食材の新しい食べ方を考え、調理するのに苦労しました。

同時に普段の食卓でこんなにフードロスを意識できるのかと驚き、その後は料理の度に生ごみの量を減らす意識するようになりました。

企業のフードロス対策も進んでいる

「各地の生協がフードバンクの団体に協力したり、フードドライブ(家庭の余剰食品を集めて寄付する活動)を実施したり、子ども食堂の食材提供などに関わっています。流通上の賞味期間ルール改善についても、関係各所と連携しながら進めています」

生活協同組合 広報 Aさん

食品宅配のオイシックス・ラ・大地では、注文を受けてから産地へ発注するため、無駄なストックを持たず食品ロス率がとても低いのだとか。

「産地で出るフードロス解消のため、規格外とされる野菜(ふぞろい野菜)などの販売も積極的に行っています。また、ミールキットの『Kit Oisix』は必要量の食材とレシピがセットになっているため、食材を余らせる心配がありません」

オイシックス・ラ・大地 広報室長 大熊さん

クックパッドでは、江戸時代のレシピを展開しているそう。その理由は食文化を伝えるだけでなく、食品を使い切る知恵の提案でもあると同社の伊尾木さんはいいます。

「研究開発部では江戸時代のレシピを掲載しています。江戸時代の料理の特徴のとして、一つの材料に様々な工夫を施してバラエティ豊かな料理に仕上げるというものがあります。

たとえば江戸時代の人気のレシピ集「豆腐百珍」。これは豆腐を使った100個のレシピを集めたものです。こういう江戸時代の知恵や工夫を伝えていくことも重要な役割ではと思っています」

クックパッド 研究開発部 伊尾木さん

そのほかにも、農業にAIを取り入れて、低コストで安定受給できる野菜や果物の栽培を行うスマート農業やテクノロジーと掛け合わせて食材を守るだけでなく増やす、新しく作るといった研究も広がっています。

未来の食卓に希望はある!

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Image: Daxiao Productions/Shutterstock

フードロスや、食糧難…そんな言葉を聞くたびに、未来の食卓はさみしく、暗く、より機械的なもの(栄養さえ摂れればよい)になってしまうイメージを持っていました。

けれど、フードロスや食料対策を講ずる企業や活動団体の視点を知り、応援し、消費者ひとりひとりの食への向き合い方が変わっていけば、決して未来は暗くはない。

「絶滅などによる特定の食物摂取が禁止になるのは悲しいこと。肉類も海産物もバランスよく食べ続けたい」

生活協同組合 広報 Aさん

今と全く同じとはいかなくても、その時あるものでもっと食事を楽しめるようになるのではないでしょうか。

未来の食卓のための3つの質問

□ この先10年、20年後も食べ続けたいものは?

□ どんな食卓を囲みたいか?

□ そのためには何をしたらいいのか?

まずは、この質問に答えてみてください。きっと自分なりの食との向き合い方が見えてくるはずです。

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