「たった35分で」「3454メートルの絶景」ヤバイ! ヨーロッパ最高地点の鉄道駅「ユングフラウヨッホ」へ行ってみた(1/2 ページ)
スイスの名物急勾配鉄道「ユングフラウ鉄道」、すごかったです!【絶景写真40枚】
標高3454メートル。ヨーロッパで最も標高が高い場所にある鉄道駅が「ユングフラウヨッホ駅」です。
その高さは、富士山に例えると頂上がもうすぐそこ(9合目手前)というところ。ユングフラウヨッホ駅のあるスイスの「ユングフラウ鉄道」はこんなに高いところまで、座ったままスイスイ〜ッと35分でお気軽に行けてしまうすごい鉄道です。アルプス山脈のオーバーラント三山と呼ばれる、ユングフラウ(4158メートル)、アイガー(3970メートル)、メンヒ(4107メートル)の頂上が間近にあります。超絶景なのですよ。
ユングフラウ鉄道は全線開業から100年を迎えた2012年に大きくリニューアルされ、さらにスイス観光の人気スポットになりました。観光施設が充実したことから、年間100万人を超える観光客が訪れるそうです。
ざっくりと表すと「勾配と絶景、標高の高さがまじやばい」。今回は、スイス旅行に行くならばぜひ訪れたい、「ユングフラウ鉄道」の見どころ、“乗りどころ”を紹介します。
名峰ユングフラウを目指して登るユングフラウ鉄道
ユングフラウ鉄道は1912年に全線開業したラック式(歯軌条)鉄道です。標高4158メートルのユングフラウは登攀訓練を積んだ登山家が挑む難易度の高い山。しかし、ユングフラウ鉄道のおかげで標高3454メートルまではスイスイっと行けます。
営業路線は、始発のクライネ・シャイデック駅から終点のユングフラウヨッホ駅まで、全長9.3キロ。え、それだけ? 短か! と思ったかもしれません。例えば、1927年開業と決して負けていない歴史を持つ日本最古の地下鉄路線「東京メトロ銀座線」は全長14.3キロです(2018年10月現在)。いえいえ、「縦方向」がガッツリと違います。両駅の標高差はなんと1393メートル。勾配は最大250パーミル(‰)です。
パーミルとは1000分の1を1とする単位で、鉄道では勾配の程度を示すときに使われます。1パーミルは「水平距離1000メートルに対して1メートル登る(垂直距離)」となります。日本の急勾配鉄道では例えば、ラックレールやケーブルに頼らない普通鉄道で日本最急勾配とされる箱根登山鉄道の最大80パーミル、また、アプト式ラックレールで最大90パーミルの大井川鐵道井川線などが有名です。数字を比べると、ユングフラウ鉄道の急勾配っぷりが分かります。こんなに高いところまで鉄道でガンガン登り、しかも、座ったまま約35分で終点駅まで行けてしまいます。
なお、少し前までは約50分かかりました。近年導入された新型車両で高速化したこと、そして途中停車駅を1つ減らしたことで、約15分の短縮を実現しました。50分と35分では、鉄旅感覚ならばあまり変わらないのかもしれませんが、「すぐ着く」かどうか、受ける感覚はかなり違います。「うそ、こんなところまで、もう着いたの?」と驚けることでしょう。
ユングフラウ鉄道は急勾配を登るための設備を備えたラック式鉄道です。線路に見える、3本目のレール「歯形のレール(ラックレール)」は心地よいくらいにゴッツゴツです。この歯形と、車体に備えた歯車をかみ合わせて急勾配を登る仕組みです。「シュトループ式」のラックレールはユングフラウ鉄道のために開発されたそうです。
ユングフラウ鉄道は山をぶち抜くように作られました。ですから、路線のほとんどは山を貫くトンネルです。計画当時の19世紀はまだ蒸気機関車が走っていた時代でした。しかしトンネル内を走行するために、当時まだ新しかった電気機関車の採用を決めました。同時に電気機関車に電力を供給するために、水力発電所まで建設して事業化したのです。
電力といえばもう1つ、ユングフラウ鉄道は開業当初から「下り電車で自家発電」を行っています。現代のハイブリッドカーに備わる考え方と同じ「エネルギー回生システム」ということですね。最新車両は、下り列車3編成分の回生エネルギーで「上り1編成分の電力を補える」ほどに効率が高くなっているそうです。この仕組みを100年前から……。当時最新、現代にも通じる技術まで凝縮された電車だったことにも驚きです。
トンネルが大回りしているのは「人間の体を高地に慣らす」ため
1800年代(19世紀)後半、スイスの山岳地帯ではアルピニズムブームを背景に登山鉄道やケーブルカーなどの山岳交通が次々と敷設されていきました。もちろん名峰ユングフラウへの計画も同じです。
しかし、ユングフラウへの路線は計画が度々浮上するも、幾度も頓挫していました。多くがケーブルカーによる計画であり、当時の建築技術ではハードルが高すぎて無理だったのです。
1893年、クライネ・シャイデックまでヴェンゲルンアルプ鉄道が開通します。時を同じく、鉄道事業の資産家であるアドルフ・グイヤー・ツェラー氏が、「そうだ。山肌ではなく、クライネ・シャイデック駅を起点にして“山中”にトンネルをブッ通すように敷設すれば、ユングフラウ山まで“鉄道”で行けるのではないか」とハイキング中に思い付いたそうです。彼はこのひらめきをすぐさま書き留め、徹夜で原案を仕上げたそうです。
このアイデアは新しい(無理目ともいう)挑戦だらけでした。ダイナマイト発破でトンネルを掘削することも、電気機関車を使うことも、1800年代後半当時はまだ技術の黎明期。さらにこれほどの高地を通す鉄道もまだ世界にはなかったので、「高所なので、人間の健康に影響が及ばないか」なんてことから検証する必要があったそうです。
敷設計画は方々で議論され、練りに練られ、最終的には「人間の体をゆっくりと高地に慣らすことを軸に、周囲の氷河を避けながらアイガーとメンヒを回るようにトンネルを掘る計画」となります。そう、ツェラー氏がひらめいた原案とほぼ同じでした。トンネル内で途中停車する中間駅を2駅設け、異なる方向からの景観を楽しめるようになっていました。
これだけの難工事、全線開通を前に財政難にも直面しましたが、部分開業して得た利益を建設費に回しながら建設が進められました。ちなみに、先行して部分開業した区間の往復運賃は「当時の一般人の給料1カ月分」に相当するほど高額に設定したそうです。富裕層が氷河や雪山を優雅に楽しむためのプレミアムきっぷでした。そして、16年に渡る工事の末、1912年に全線開業したのでした。
ちなみに「ユングフラウ(Jungfrau)」は、英語で「young girl」、日本語では「乙女」を意味します。現地では「美しい山の例え」としても愛されています。
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どんどん進化していく……。
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