ホラー映画がいかに「電話」という不都合を避けてきたか

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ホラー映画がいかに「電話」という不都合を避けてきたか
Image: Gettyimages

ホラー映画における携帯電話は非常に厄介なアイテムです。

というのも、ホラー映画において最も重要なことは「恐怖」と「孤立」にも関わらず、携帯電話があればいつでもどこでも誰かとつながってしまうので「孤立」な状況に成り立ちにくい。それに、Googleマップ、Find Your Phone、Uberといったお役立ちアプリや機能のお陰で「すぐに助けがきてくれる」という安心感を与えてしまいます。『暗闇にベルが鳴る』や『スクリーム』『フォーンブース』『ザ・コール』といった作品では電話があるからこその怖さが描かれていましたが、多くのホラー映画で携帯電話は忌々しい存在なのです。

では、ホラー映画はそんな忌むべき文明の利器・携帯電話とどう付き合っているのでしょうか?

電波がない

ホラー映画の強い味方「電波がない!」です。今の世の中、どこだって電波くらい拾えるだろうと思われがちですが、実際はそうではありません。

映画でも『10 クローバーフィールド・レーン』のミシェルは気を失ってしまった後、何者かに監禁されます。目を覚まして携帯電話で助けを呼ぼうとすると安定の「圏外」。助けを呼べない絶望と、自分の居場所がどこなのかもわからない不安が緊張感を高めます。

エクスマキナ』では、天才発明者のニーサンがプロジェクトの存在を外界から完全シャットアウトするために意図的に圏外の場所に住んでいました。

ジュラシック・ワールド』では、ハムスターボール(ジャイロスフィア)の中に入ってしまうと電波が届きにくいようでした。

ヒューマン・キャッチャー(ジーパーズ・クリーパーズ2)』では太陽黒点が悪事を働いていましたし、その他にも霊的な作用だとかで強引に「電波が届かない場所においやられる」状況を作り出す作品が多いです。

充電がない

もっともリアリティのあるケースです。地図を確認したり写真を撮ったりといったことが一切できなくなる上に、電波が入る場所に来たとしても連絡できないわけなので、ある意味「圏外」より効果的と言えるでしょう。

ゲット・アウト』は「充電中に誰かがケーブルを抜く」ことで、何者かが阻害している、というミステリアスな要素も強調し、観客の恐怖心を煽ることに成功しています。

ちなみに、よほど古い携帯電話でない限り、バッテリーはフル充電で9時間ほどもつはずですが、ホラー映画の世界では45分程度しかもたない様子。たとえば、『クローバーフィールド』ではロブがベスに話そうとしたタイミングでバッテリー切れになり家電ショップに走りに行かなければいけないというシーンがあります。

珍しいものだと、『スペル』の悪魔がクリスティンの携帯電話を霊的力で充電切れにしていました。悪魔にとっても携帯電話は不都合な存在なのでしょう。

電話がない

これもよくあるパターンです。携帯電話が発明される前は家の電話や公衆電話が何者かによって破壊されていて外界からシャットアウトされている、というのはお決まりでした。

今なら携帯電話が隠されている、もしくは盗まれているという方法で物理的になくしてしまうことができるでしょう。『ホステル』ではちびっこギャングが携帯をかっさらっていましたし、『30デイズ・ナイト』ではバンパイアが携帯電話を盗んでいました。

そんなものなかったことに

携帯電話なんてなかったことにする、という手もあります。例えば、Netflixオリジナルの『ストレンジャー・シングス』は80年代ノスタルジックホラーというテーマなので、固定電話とトランシーバーという設定縛りにしています。

むしろ電話やビデオ電話を恐怖アイテムに使ってしまう

携帯電話やソーシャルネットワークをお助けアイテムではなく、あえて恐怖アイテムにする方法があります。日本なら霊から着信があった人が死んでしまう『着信アリ』シリーズが有名です。

その他、死者からチャットメッセージがくる『アンフレンデッド』や、現在公開中のSNSミステリー『Search』がSkypeやSNSを主役とした恐怖映画で成功しています。


映画における携帯電話の扱いはさまざまです。そこに注目して鑑賞してみると別の面白さを感じることができるかもしれません。ちなみに私は『ザ・コール』の「助けたいから掛け直したら、それが原因で居場所がわかって殺されてしまった」の流れが好きです。電話があるからこその、希望→どん底演出がイイですよ。